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メルマガ小泉悠と読む軍事大国ロシアの世界戦略(定期購読版)

ウクライナ戦争の行方やロシアの軍事力について、毎週月曜日に配信します。単独の記事のみ購読したい方はこちらをどうぞ(https://note.com/cccp1917/m/m59a…
毎号買うのめんどいという声が割とあったので定額版を作ってみました。
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#核兵器

第270号(2024年6月24日) 核ドクトリン変更に関する二つの発言、先祖返りするロシアの軍管区 ほか

【今週のニュース】核兵器使用基準をめぐる二つの発言  6月20日、北朝鮮を出発してヴェトナムを訪れたプーチン大統領は核ドクトリンの変更の可能性(特に予防攻撃を認める可能性)についてマスコミから発言を求められた。この際のプーチンの返答は、以下のとおり。  以上のように、プーチンはさほど過激なことを言っているわけではない。特に予防攻撃をドクトリンに盛り込むことを明確に否定した点は注目に値しよう。ただ、予防攻撃(превентивный удар)というのは戦争が始まっていな

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第269号(2024年6月17日) ロシア軍が戦術核演習第二段階を開始

【今週のニュース】ウクライナ向け戦闘機をめぐる二題ウクライナ空軍航空部隊司令官へのインタビュー  6月9日、『ラジオ・リバティ』が、ウクライナ空軍航空部隊司令官であるセルヒー・ゴルブツォフ准将のインタビューを掲載した。  JDAMの実証試験に目処がついてGBU-39とGBU-62の運用が始まったこと、これらの攻撃手段を活用するためにはロシアの防空システム排除が重要だがこの点についてはまだ交渉が続いていること、F-16を活用するには複合的な支援能力が求められることなど、興

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第268号(2024年6月10日) 続・博士たちの異常な愛情 核抑止をめぐる米露のつばぜり合い

【インサイト】続・博士たちの異常な愛情 核抑止をめぐる米露のつばぜり合い この数週間、核兵器をめぐる話題が米露双方からしきりに聞かれるようになりました。ウクライナでの核エスカレーション、将来の米露軍備管理、そして中国の核戦力増強を踏まえた米国による核軍拡の可能性などについて考えてみたいと思います。 「ビビってるんじゃねえよ」 サンクトペテルブルグ経済フォーラムでのプーチン発言  まず取り上げたいのはロシアの動きです。  6月7日、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラム(

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第266号(2024年5月27日) ロシア軍の戦術核演習と北方領土のレーダーサイト

【今週のニュース】ロシア軍で大粛清が進行中 ほかロシア軍で大粛清が進行中  ロシア国防省・軍高官の逮捕や交代が相次いでいる。この戦争中、プーチンが軍の司令官クラスを交代させるという事例はかなり頻繁に起きており、最近では3月に海軍総司令官のニコライ・エフメノフ大将が罷免されていた。しかし、プーチンの5期目が始まる前後に起きているのは単なる交代ではなく汚職を理由とした逮捕である。  その手始めとなったのはティムール・イワノフ国防次官(厚生・インフラ担当)の逮捕で、これがかなり

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第262号(2024年4月15日) ウクライナ動員法改正、「核兵器禁止条約の登り方」ほか

【今週のニュース】ウクライナで改正動員法がついに可決 ほかロシア軍需産業に対する中国の支援 『フィナンシャル・タイムズ』によると、中国はロシアの戦争遂行能力を強化するための支援を強化している。同紙に対して米政府高官が語ったもので、主に巡航ミサイルやドローンのエンジン、弾道ミサイル用工作機械、半導体(戦車・ミサイル・航空機用半導体の輸入分中約9割)などが含まれるという。また、中露によるドローンの共同生産、中国からロシアへの衛星画像の提供も行われている。  その背景には、ロシ

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第257号(2024年3月11日) 2024年度版の「ミリバラ」と「ニュークリア・ノートブック」ロシア編を読み比べ

【今週のニュース】「ロシアが宇宙空間に核兵器配備」疑惑について ほかウクライナ向け砲弾80万発の購入資金集まる(?)  前号で紹介したように、チェコは欧州域外から80万発の砲弾を有償でかき集め、ウクライナへと送る計画を立てている。これまでのようにEU内で生産して戦略援助としてウクライナに送るのではなく、EUの外から買ってくるということだ。世界中に存在する榴弾砲の弾は80万発どころではないだろうが、少々外国に売っても大丈夫なくらい備蓄弾薬に余力があり、尚且つ政治的にウクライ

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第256号(2024年3月4日) 「核使用基準」とはなんなのか ロシア軍流出文書報道から考える

【今週のニュース】ウクライナへの砲弾80万発供与計画アウディーウカの陥落とその後  2月17日、ロシアのショイグ国防相は、ドネツク州のアウディーウカを完全に掌握したとプーチン大統領に報告した。アウディーウカは2014年に始まったロシアによる最初の侵略でも戦場となり、その後、要塞化されていたが、ついに陥落したことになる。  その3日後、国営TASS通信のインタビューに答えたショイグは、アウディーウカ攻略に関して詳しく語っている。ショイグによれば、昨年夏以降に行われたウクライ

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第252号(2024年1月29日) 衛星画像分析 ロシアの核実験場で怪しい動き

【インサイト】衛星画像分析 ロシアの核実験場で怪しい動きノーヴァヤ・ゼムリャー島概観  今回はウクライナの戦況を離れて、そのずっと北にあるノーヴァヤ・ゼムリャー島という聞き慣れない島を取り上げたいと思います。  ノーヴァヤ・ゼムリャーは北極海に浮かぶ島で、その西側がバレンツ海、東側がカラ海に別れています。元々はネネツ族という少数民族が住んでいたのですが、1950年代には彼らを追放して島全体が核実験場にされてしまいました。カザフスタンのセミパラチンスク核実験場に次ぐソ連で2

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第248号(2023年12月18日) ロシア戦略ロケット部隊の将来像と尽きる米国のウクライナ支援予算

【今週のニュース】米国のウクライナ支援予算、ついに尽きるブリヤートに新たな輸送機連隊  ブリヤート共和国のウラン・ウデにロシア航空宇宙軍の新たな輸送機部隊として軍事輸送飛行隊第600連隊が設立された。同連隊は元々ソ連時代の1963年に設立され、1981年にIl-76装備となったが、1999年に解散されていた。上級部隊は2017年に再建された軍事輸送飛行隊第18師団で、第600連隊はその隷下にある4つ目の連隊である。装備機種はIl-76MDだが、これは予備保管されていた機体

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第241号(2023年10月30日) 長引く戦争に備えたロシア・ウクライナ双方の動き

【NEW CLIPS】ロシア戦略核部隊演習 前回紹介したように、ロシアは10月に入ってから戦略核部隊演習に向けた動きを見せていた。結局、演習は25日に事前の予想通りに実施された。内訳は以下の通りである。  演習の模様は以下で公開されている。  他方、予想されていたオホーツク海からのSLBM発射は行われなかった。 【今週のニュース】長引く戦争に備えた動きアウディーウカで激戦続く  今月初頭以降、ドネツク北部のアウディーウカに対してロシア軍の激しい攻撃が続いている。攻撃

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第239号(2023年10月16日)プーチンの核実験カード

【今週のニュース】ショイグ国防相がミサイル工場を訪問  10月6日、ロシアのショイグ国防相がクラスノヤルスク機械工場(クラスマッシュ)を訪問した。クラスマッシュはロシアで唯一の液体燃料弾道ミサイルの生産拠点であり、現在はサルマート超大型大陸間弾道ミサイルの生産が行われている。訪問中、ショイグは、サルマートの実戦配備が間も無く始まるだろうと述べた。 2024年のロシア国防費は10兆ルーブル超えへ  来年度のロシア連邦予算案が下院に提出された。第237号で触れたように、来

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第228号(2023年7月3日)衛星画像分析 ロシアの核兵器はベラルーシのどこに配備されるのか?

【インサイト】衛星画像分析 ロシアの核兵器はベラルーシのどこに配備されるのか?プリゴジンの乱から1週間  えー、前号ではプリゴジンの乱について次号で扱う、ということを申し上げました。しかしその後、『フォーサイト』さんから緊急に依頼を受けまして、「乱」については現状で考えていることを概ね語りきったかな、と思っています。  もちろん、その後も続報は出てくるのですが、これらも含めた今回の件についての再評価はもう少し時間を置いてからにするつもりです。ということで、有料記事で申し訳な

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第227号(2023年6月26日)博士(たち)の異常な愛情

【今週のニュース】ベラルーシからロシアへの弾薬供給量は ほかウクライナにクラスター弾頭型HIMARSを供与?  6月22日、ロイター通信は、米国がHIMARS用のクラスター弾頭搭載型ロケット弾(DPICM)の供与を検討していると報じた。  DPICMは2008年のクラスター弾禁止条約による禁止対象に入っている。米国はロシアと同様に同条約の批准を拒否しているが、米軍の現役装備から外すという措置をとった。今回の件はそれをウクライナに供与しようということのようだが(なお、ウクラ

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第223号(2023年5月29日) ウクライナの「パレスチナ化」と「イスラエル化」

【今週のニュース】ベラルーシへの戦術核兵器配備続報ベラルーシに戦術核兵器配備を「開始」 ルカシェンコ大統領  5月25日、モスクワでのユーラシア経済フォーラムに参加したベラルーシのルカシェンコ大統領は、同国への核兵器の移送に関する文書に署名したとプーチン大統領から口頭で知らされたと述べた。その上で、核兵器の移送が「始まった。既に始まった」と2回繰り返して述べたが、実際に自国に核兵器が既に存在しているかどうかは「帰国してからたしかめる」とした。  一国の大統領が自国への核兵

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