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自分のため 人のために

同級生がゼミで美しい鰭を歌っていた。

すごい、なんかよかった。

何がよかったってわたしたちゼミ生の方を見て、笑顔で歌いかけていたのがよかった。

声の伸びとか響きとかそういうのもよかったけど、目が合ったときにドキッとした。

わたしたちを考えて歌声を出しているのがよかった。

これが人のため。

別のゼミ生が合唱はできると言った。

すると、ゼミの先生が同級生の独唱は合唱とは違うよね、という話をした。

彼氏が隣でどっちもできるよねと言ってきた。

わたしは合唱を全国大会に出場するレベルでやっていたし、独唱もめちゃめちゃ下手ということはないと思う。

でもわたしは独唱はしたことがない。

こんなに聞く人のためを思って。

わたしはわたしのために歌うのが好きだ。

そして気持ちの悪い音がする曲が好きだ。

それを歌って自分の耳で聞くことで歌を楽しむ。

別に誰かを思って聞かせたいわけではない。

わたしは絵を描くことも好きだ。

学校では賞を取ったこともあるし、どこに行っても絵を描けば喜ばれるし、褒められる。

だけど、わたしは自分のために絵を描くのが好きだ。

自分の納得行くように、頭の中で思い描いたように線のつながりを紙に描けたときが一番楽しい。

だから、わたしは他の人にもっと自分の絵を見てもらう工夫をしていない。

わたしは小説を書くのも好きだ。

小説というよりストレス発散に近い。

ストレス発散ということは読み手を意識していない。全くこれっぽっちも。

でも、不思議なことにファンになってくれた人はいた。

だけど、売れようと思ったらもっと読み手を意識しなければ、人が喜ぶものは書けない。

わたしはわたしが楽しむために、嫌な思いを清算するために小説を書く。

わたしは自撮りを始めた。

好きな女の人が自撮りをしていたから。

可愛い女の人は自撮りをするのかなと思って自撮りをしたら可愛くなるのかなとも思いながら自撮りを始めた。

メイドさんになりたいからその真似事かもしれない。

わたしは自撮りを始めたときより多分可愛くなった。

メイクをし始めたし、服にお金をかけ始めた。

時々ネイルをするようになったり、一番大きかったのは男の子みたいに短かった髪を伸ばした。

わたしのアイデンティティ。

わたしは男の子になるのが夢だったけど、彼氏のことを意識したのかもしれない。

可愛くなると声を掛けてくる人が男女問わず出てきた。

これは嬉しかった。

わたしは人と関わるのが好きだ。

わたしはインスタを始めた。

わたしは可愛い人を見るのが好きだ。

可愛い人の投稿は可愛い。

それを見ると楽しい。

だからわたしも自分が見たら楽しいと思うような投稿をするようになって少しずつフォロワーやいいね、コメントが増えた。

わたしの楽しいとみんなの楽しいが一致した瞬間だった。

もっと他の人に意識が向けば、わたしはすごい人になるだろうけど、あんまり今はというかずっと絵を描き始めたり、小説を書き始めたりした頃からそんな気持ちはない。

この文章は誰のためだろう。

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