見出し画像

ナナメさん #008 ユカリさん

現在ライターとしてお仕事をされる傍ら、司法試験合格を目指して勉強にも取り組むユカリさん。「不本意だった」と語るユカリさんのこれまでと、今後にかける思いをお聞きしました。

ユカリさんのプロフィール

・30代、女性、栃木県出身

・通った学校について教えてください:
栃木県立宇都宮女子高等学校→慶應義塾大学法学部法律学科

・部活動:文芸部

・好き(得意)だった教科:国語、英語、世界史、倫理

・嫌い(苦手)だった教科:数学

・卒業後の略歴を教えてください
大学在学中に体調を崩したため、就活はしませんでした。
その後、偶然在宅でできるライターの仕事を知り、そのままライターになりました。

・趣味:読書、美術館巡り、ジム通い

・おすすめの本:ミステリ系全般

~~~~~~~~~~~~~~~

文理選択、学部選択に揺れた高校時代

――まず、一つ目の進路選択である「高校選び」について、どのように考え選ばれたのか教えてください。

一応、県内で女子が入れる学校としては一番難しい学校でしたが、偏差値的にいけそうだったので、「入れそうなら受けておく?」という感じで受けました。自由でのびのびした雰囲気で有名だったので、魅力を感じていたこともあります。
学区外受験だったので通学は大変でしたが、行ってよかったと思います。

――高校に入ると間もなく文系・理系の選択がありますよね。迷わず文系に進まれたのですか?

理系も考えたことがあったんです。ずっと精神医学に興味があったので、医学部を目指してみたいなって。でも理系では医学部以外に興味のある学部が無かったし、数学が苦手だったので結局文系に進みました。今思えば理系コースに進んで医学部を目指しつつ、文系の学部を併願するという手もあったかなと思います。

――文系ではどんな学部に興味を持っていたのですか?

文学部には興味がありました。でも就職に不利かな、就職を考えるなら法学部かなって。

――大学で学んだことを仕事につなげたいという思いが強かったのですね。

今思えば視野が狭かったなと思いますが、当時はそうでしたね。文学部に行くなら院に進んで研究職に、法学部に行くなら司法試験を受けて法曹界に、と考えていました。
結果として私立大の法学部にいくつか合格したので、その中から進学先を選びました。

――おじいさまが弁護士さんなんですよね。進路選択に、ご家庭の影響はありましたか?

ありましたね。やはり情報が入ってきやすい環境でしたし、法曹界は身近に感じていました。
両親からは「好きにしろ」と言われていたので、プレッシャーのようなものは無かったですけど。

――そうなんですね、ちょっと意外です。

ある意味、放任主義でしたね。もっとも、母は、家の中の子供が手に取りやすい位置にいくつか漫画を置いていました。その中に「家裁の人」という家裁の裁判官が出てくる漫画がありまして。それから「研修医なな子」と「動物のお医者さん」(笑)
セレクトがあざといですよね。結果的にだいぶ影響を受けたので、今思えばあれは狙ってたのかも?なんて思います(笑)

体調を崩し、思うようにならなかった大学時代

――そして大学に入学されたわけですが、体調を崩されてしまったと。

そうですね。なかなか授業に出られないようになってしまい、休学期間を挟みつつ大学に通いました。そこから10年くらいずっと体調不良が続いて。卒業こそしましたが、司法試験は受けずじまいでした。

――それでも卒業はできたのですね、よかったです。

法学部は「一斉授業で、テスト一発勝負」みたいな評価方法だったので、どうにか単位は取れましたね。同じゼミやサークルの同期に頼んでノートをコピーさせてもらったりしてテスト対策して。
これが文学部で演習に全部出ないといけないとか、理系で実習がたくさんあるなんて状況だったら、卒業は無理だったかと思います。

――なるほど、その点でも法学部にはメリットがあったのですね。その後は数年間療養生活を送られたわけですが、回復のきっかけは。

体力をつけたことですね。ジムに通ったんです。
ライターの仕事を始める1年ほど前に、少しバイトをしたことがあるんですが、そんなに長時間の仕事ではなかったのに全然体力がついていかなくて。
自分でも愕然として、ジムに通うことにしました。通っているうちに体力がついてきて、そこから驚くほど速く体調が良くなっていったんです。

ライターとして活動しつつ、再び司法試験へ向けて動き出す

――それはよかったです!そこから、ライターのお仕事を始められたんですね。

もう30だし、普通に就職するのは無理だなと感じていました。田舎は仕事少ないですしね。
それでネットで色々見ていたら、クラウドソーシングのサイトを見つけたんです。文章を書いてお金がもらえるのか、と今の世界に入っていった感じです。

――どんなお仕事から始められたんですか?

最初の仕事はよく覚えてないですが、スタート時から1文字1円の単価で仕事を受けていました。初心者向けの案件だと、文字単価0.5円なんてザラにある世界なので、良かった方ですね。当時は仲介会社さんを通して仕事を受けていましたが、現在は直接取引するようになったので、単価は3倍くらいになりました。
内容も「何でも書きます」ではなく、専門を決めて書くようにして、「○○についてはユカリさんに頼めば安心」という存在を目指して取り組んでいます。

ユカリさんスタバ

スタバでお仕事中の一枚

――そうしてライターとしての実績を積んでいかれたわけですが、もう法曹を目指そうというお気持ちは無かったのですか?

卒業してからしばらくはあったのですが、ちょうどその頃、実家から通える距離にあった法科大学院が潰れてしまったんです。
都内に部屋を借りて法科大学院に通うとしたら、奨学金1000万も覚悟しなきゃいけない。それは無理だなと思い、諦めました。

――なるほど。でも今、再び司法試験に挑戦しようと考えてらっしゃるんですよね。

はい、司法制度が変わってから10年以上が経ち、受験環境もだいぶ落ち着いてきたこともあって決断しました。今は司法試験の予備校に通っています。

文系の花形資格・司法試験。実情を教えていただきました

――司法試験の予備校とはどんなところなんですか?

「司法試験の対策」が目的で、司法試験を目指す大学生や大学院生、社会人が通うところです。司法試験、および予備試験、法科大学院入試の受験対策をするための学校と考えてもらえればいいと思います。
私が今目指しているのは、予備試験。司法試験の受験資格を得るための試験ですね。
現状、司法試験を受けるためには、この予備試験に合格する方法と、法科大学院を出る方法の二通りの方法があります。ただ、法科大学院となると、お金も時間もかかるので。現状は誰でも受けられる予備試験をまず目指す、それでダメなら法科大学院に行く……という流れが一般的です。

――なるほど。予備試験の重要性、理解できました!

もっとも、現在また制度が動いてきているので、今後事情が変わる可能性も十分あります。
ただ、いずれにしても予備校やら何やらでお金がかかるのは間違いないので、将来法曹を目指す高校生諸君には「まずお金を貯めろ」と言いたいです。

――司法試験については本当に素人なので色々と教えていただきたいのですが、理系の難関資格である医師国家試験と比べて、合格率がかなり低いですよね。これはどうしてなのでしょうか。

新司法試験になった当初は、医師国家試験並みに合格者が出るって話だったんですけど、実際はそんなことはありませんでしたね。一番合格率の高い法科大学院でも6割程度で、3~4割のところなんかザラにあります。全体の合格者数も、司法制度改革前と比べて結果的にそこまで増えていません。

――それでも弁護士が余っているような報道も目にしたことがあります。

法社会学的な話になりますが、日本人の気質的に、問題が起きたとしても「訴訟で解決しよう」という考えにはあまりならないんですよね。当事者の事情によっては、訴訟を起こした側が非難されることもありますし。だから、今後も訴訟件数が少なくともアメリカ並みになることはないだろうなと思います。

――では法学部といっても、必ずしも弁護士や検事や裁判官を目指す人が多いわけではないのですね。

ええ、そうではない人の方が圧倒的に多いです。ただ伝統校というか、伝統的に司法試験に強いといわれる大学はあるんです。関東では東大、一橋、早稲田、慶応、明治、中央ですね。こういう大学には「法律サークル」といって、司法試験を目指す人で作るサークルがあったりして、司法試験を受ける人の比率も高くなっています。
今はインターネットも普及しているので、地方でも勉強しやすい環境にはなっていますが……情報収集や仲間作りという意味では、司法試験を目指す人が多い大学に進学したほうが有利だと思います。私も、私大に関しては、いわゆる「伝統校」しか受けませんでした。

数十年後の将来まで見据え、司法試験への挑戦を決めた

――ユカリさんは、一度は諦めた法曹への道を再び歩き始めたわけですが、どんなお考えがあって決断されたのでしょうか。

今後のことを考えたときに、これが最後のチャンスだと思ったんです。
今はライターとして自立できるくらい収入もありますが、副業の解禁に伴ってライター業を始める人が増えたり、より質の高い記事を求められるようになってきたり、という状況もあります。そこで「ライター+何か」が欲しいなと考えたんです。
書くことはずっと続けていくと思いますけど、ライター業だけでやっていくのは厳しい。人生100年とか言われている中で、できることは複数持っておいた方がいいなと。
司法試験に合格したら、弁護士業の傍ら、法律関係の記事を書くお仕事をしたり、情報発信したりしたいと考えています。

ユカリさんおやつ

ライター仲間との読書会を開催。お楽しみの「おやつ」。

――これから予備試験、司法試験と挑戦していくわけですが、今後のプランを教えてください。

ある程度時間が必要にはなりますが、ダラダラやっても仕方ないので、これから心機一転、ライターの仕事を減らして集中して取り組んでいきたいですね。
まずは中間目標として行政書士試験を受けようと考えています。試験科目が結構重なっているので腕試しになりますし、資格としてひとつ持つことができますから。そして来年の予備試験を受けたいです。
時間の確保は難しいですが、社会人経験を積んだことで、実感を持って法律に向き合えるようになったのは私の強みですね。

――最後に、学生さんに向けてメッセージをお願いします。

学生は本当に勉強した方がいいですよ!学生の4年間はすごく貴重ですから。働きながら勉強するのは本当に大変です。
バイトも社会勉強になりますけど、どっちみち卒業したら働くわけなので、バイトはほどほどにして集中して勉強した方がいいと思います。硬い本を読むでもなんでもいいですけど、時間をかけないと身につかないことはあります。
バンドに青春をかける!とかならそれでもいい。とにかく目的を持ってじっくり何かに取り組む日々を過ごしていって欲しいなと思います。

――ありがとうございました!

~~~~~~~~~~~~~~~

思うようにいかないこともある。でも、人生は実は長い。いつからでも歩き出せる。それぞれのペースで行けばいい。そう教えていただいたインタビューでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?