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ナナメさん #009 さとこさん

学生時代から心身の不調を抱えつつ、自分との付き合い方を模索してきたさとこさん。進学や就職の目標を達成してきた一方で、つらい時期をどのように過ごし、乗り越えたのか。自分らしく生きていくヒントをいただきました。

さとこさんのプロフィール

・33歳、女性、東京都板橋区出身

・通った学校:私立中央大学杉並高等学校→日本女子大学 家政学部 住居学科

・部活動:バレーボール

・好き(得意)だった教科:体育、数学

・嫌い(苦手)だった教科:国語、日本史

・卒業後の略歴
某ハウスメーカー インテリアコーディネーター
のち適応障害・摂食障害再発 休職 解雇
主婦
ヨガ講師
個人事業主

・現在の家族構成:夫

・趣味
ヨガ、テニス、読書、voicy、おしゃべり
ころころ変わりますが人が好きです

・休日の過ごし方
夫とドライブや美味しいもの食べる
友人知人に会う
ごろごろする

・好きな音楽
安室奈美恵ちゃん大好きです!

・おすすめの本
オー!ファーザー
夫は犬だと思えばいい
日本人はやめる練習が足りてない

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自分で選べなかった中学校、自分で選んだ高校

――まず中学高校時代のことをお伺いしたいのですが、さとこさんは高校受験をするにあたってどんなことを考えていましたか?

私、中学校は公立に通っていたのですが、本当は中学受験したかったんです。習い事をたくさんしていたので「更に塾に行くなんて。もう少し遊べば?」と親から言われて。でも公立校は勉強に関するレベルやモチベーションがバラバラすぎて、勉強する環境としては居心地が良くありませんでした。だから、高校では自分と同じ価値観や意欲を持っている人たちと一緒に過ごしたいと思っていました。

――偏差値的になるべく上を目指そう、という考え方の学生さんは多いと思うのですが、さとこさんはいかがでしたか?

負けず嫌いなのでそれなりに勉強も頑張っていましたが、偏差値が高い低いというよりも「自分がそこにいるイメージができるかどうか」で選んだ感じです。

――なるほど。そうして選ばれた高校は、望んでいた環境がありましたか?

そうですね。気の合う友人にも出会えましたし、制服も自由で可愛くて。何よりも自分で選んだという満足感がありましたね。

体調を崩し拒食症へ。しかし大学受験にも挑む

――もともと身体が丈夫ではなかったということですが、高校時代は大丈夫だったのですか?

体調は崩しがちでした。
高校ではバレーボール部に入ったんです。私としては緩くやりたかったのですが、結構激しい部活で。辞めたいと思いながらも「今しかできないよ」とか「一緒に頑張ろう」とか励まされて1年間くらい続けていたのですが、ある時倒れてしまったんです。病院を受診したらマイコプラズマ肺炎になっていて、先生に「あなたのような年代の子がなるような病気じゃないけど、自分の体力わかってる?」と言われてしまって。
その後、肺炎が長引いて咳喘息になってしまって、体力も落ちて、学校に行けなくなってしまったんです。

――かなり無理されていたんですね。

そうしているうちに、どんどん痩せていったんです。出席日数ギリギリという感じで時々学校に行っていたんですが、皆に会うと驚かれるんですよ。「痩せたね!どうしたの?」って。そう言われるとなんか面白くなっちゃって。
体重計に乗るたびに体重が減ると、逆にどこまで行けるかな、みたいな気分になっちゃって。気付いた時には自分ではどうしようもないところまで行ってしまっていたんですよね。
助けて欲しいけど、「助けて」が言えない、みたいな感情がありました。

――それは大変な…。ご両親は心配されたんじゃないですか?

はい、やっぱりすごく心配していたようで、一生懸命食べさせようとか病院連れていこうとされたんですけど、当時はそれも嫌だったんですね。体重が減っていくのを邪魔されたくないという思いがあって、「大丈夫わかってる、自分で何とかできる」って。
受験の時期だったので、受験が終わったら病院に行くという約束で、見守ってもらっていました。

――そんな大変な時期に受験をしようと思われるとは。エスカレーター式で大学にも行ける高校から、どうして他大学を受験しようと思ったのですか?

建築家になりたかったんです。小さい頃から学校を休みがちだったので家が大好きで、家の図面が載った広告を切り貼りしてノート作ったりしていて。でも中央大学には建築学科が無かった(笑) だから思い切って他の大学を受けることにしました。

大学で勉強に打ち込みながら、カウンセリングに通う日々

――見事合格されたわけですが、お身体は大丈夫だったんですか?

気力で乗り越えた感じでしたね。むしろ大学に入って、病院に通い始めてからの方が精神的にはキツかったです。

――精神的に、ですか?

はい、病院ではカウンセリングも受けるんですが、どうしても自分自身と向き合わなきゃいけないんですよね。更に、食べる練習もしていくんですけど、ある程度食べられるようになると、今度は食べたくて止まらなくなるんです。拒食の反対の過食ですね。そんなのが全部ぐちゃぐちゃになって、躁鬱の症状が出てきて…。学校に行けない日もありましたね。
病院通いを続けて、3年生になる頃には、徐々に皆と一緒にいても大丈夫と思えるようになったり、予定をドタキャンしないで済むようになりました。

――よかったです。体調不良が続く中、学業の方はどうだったのでしょうか。

勉強は何とか続けられました。友達が助けてくれた力も大きかったです。ただ、建築家になりたかったのに、いざ製図の授業になったら「これは構造上成り立たないからダメ」とか「柱がここにないとダメ」とか、縛りが多いことが分かって、つまらないと感じてしまったんです。
そこで、居住環境というインテリアや福祉や環境についての分野を専攻することにしました。卒論では、ユニバーサルデザインといって、障がいを持った方にも暮らしやすい街づくりについて研究しました。

――若干の路線変更はありつつも、興味のある分野について学べたんですね。よかったです。就職先ではインテリアコーディネーターとして働かれたそうですが、資格は在学中に取ったのですか?

いえ、取っている人もいましたが、私は就職してから取りました。

――就職活動は、ハウスメーカーに絞られていたんですか?

はい。建築家になるのはやめましたが、家づくりには関わりたいと思っていたので。友達が企業研究とか自己分析とかしているのを横目に「私はハウスメーカーで行く!」と決めていました。

――あまり自己分析等はされなかったんですね。不安になる事はありませんでしたか?

私の場合、大学1~3年は通院とカウンセリングばっかりだったんです。サークルとか遊びに時間を使う人たちを羨ましいと思いつつ、病院に通う日々を送りました。でもそれが「私は自分と向き合う日々を積み重ねてきたのだ」という自信につながったんですよね。

――なるほど。では迷いなく就職活動に取り組めたのですね。

そうですね。就職セミナーで「学生は選ばれる側だけど、自分も会社を選ぶんだという気持ちで臨みましょう」と言われたこともあって、自分なりに軸を持って選んでいました。

――さとこさんの軸は何だったんですか?

人です。どんな人が働いているのか、自分がその人たちと仕事をしたいと思えるか。
それから企業理念や「求める人材像」と、実際の社員の方が一致しているかどうかを重視していました。

就職後はインテリアコーディネーターとしても活躍。しかし再び心身に異変が

――そうして入社した会社は、入ってみていかがでしたか?

就活時の印象通り、人を大事にする会社だというところは合っていましたね。
ただ、最初に洗礼を受けました(笑)
私、結構思ったことをすぐ口に出してしまう方で。入社して3か月経った頃、「これはどうなんですか」とか「これ意味あるんですか」みたいなことを言ったら「そういう事は言っちゃだめ」「社会ってそういうものだから」って言われて。一旦は納得したんですけど、そういうモヤモヤが次第に積み重なっていった感覚がありました。

――再び体調を崩されたんですよね。入社してどれくらい経った頃ですか?

7年目くらいからですね。当時は注文住宅の部署でインテリアコーディネーターとして働いていました。一軒分の内装を全て一人で担当して、お客様との打ち合わせから社内の調整まで行っていたのですが、それぞれの立場の人から出てくる色々な意見や要望に合わせようとする気持ちが強くて、結果自分がつぶれちゃったんです。

――そして休職を余儀なくされたと。

はい、今度は過食嘔吐になってしまって、鬱にもなって、どうしようもなくなって主治医から休職宣告を受けました。
この時考えたことは「どうやったら普通に生きられるんだろう」ってことでしたね。学生時代に続いて2度目でしたから…。本当にもう、どうしたらいいの?って。

復職への高い壁を感じる日々の中、ヨガや大切な人との出会いも。

――そこからの回復のきっかけは、どんなことだったのでしょうか。

その時に今の主治医に出会ったのですが、マインドフルネスを教えてもらったんです。とりあえずやってみたら、何かヨガに似てるなって感じたんですよね。
ヨガは、会社員時代にエクササイズとしてやったことがあったのですが、これを機にヨガの勉強をちゃんとやってみようと思って。そうしたら「自分、こんなに苦しい呼吸をしていたのか」とか色々気づくことができて、少しずつ気力が戻ってき始めたんです。

――それは良かったです!そこから、復職に向けて動き出されたんですか?

私はずっと休職しているのも辛くて、早く戻りたかったんです。でも主治医も会社の産業医もなかなかOKを出してくれなくて。1年3か月くらい休んだ頃にやっと電車通勤の練習を始めることになったのですが、「会社に向かう」「電車に乗る」のが思っていた以上に恐くて。復帰までの道のりは長いなと痛感しましたね。
それで今度は、そういう自分を一つ一つ受け入れるように心がけていたら、ある時「戻っても戻らなくてもどっちでもいいや」と思ったんです。そこからリハビリとしての通勤が始まりました。

――ついに出社できるようになったのですね。

週3日くらいから始めたんですが、まぁ辛かったですね。自分が週5日9時間働いていたのが信じられなかったです。一度降りちゃうと、もう一度仕事のペースに乗るのはすごく大変なんだなと感じましたね。
少しずつ日数や時間を増やしていってはいたのですが、結局元通りに働けるようになる前に休職期間満了となってしまい、解雇になりました。

――せっかく復帰に向けて努力していたのに…残念ですね。

現場では「契約社員として続けないか」と提案していただき私も同意していたのですが、本社の方から「前例がない」と言われ実現しませんでした。残念でしたが、逆に「この会社に未来はない」と諦めがつきました(笑)
実は、リハビリをしている時から「もうこの流れに乗らなくてもいいんじゃないかな」と思い始めていたんですよね。そんな時に今の夫と出会ったんです。

――お…!旦那様との出会いがあったんですね!

同じ職場だったので前から知ってはいたんですが、気づいたら「この人いいかも」って思うようになっていました。
彼は「自分はバリバリ働きたいけど、皆がそうする必要はないと思うし、家にいて好きなことがあったらやればいいんじゃない?」という考えだったので、うちは共働きにこだわらず、夫婦という小さなコミュニティで支えあって回していく形にしました。

――では退職して間もなくご結婚という感じだったのですね?

はい。初めのうちは他人と暮らすことや家事を担うことって大変だなって感じました。でも1年経ってだいぶ慣れてきましたし、平和に暮らせています。

――体調は安定されているんですか?

まだ通院はしていますが、不思議なことに、夫と交際するようになってから一度も吐かなくなったんですよ。夫はすごく話せるタイプの人で、辛い時は素直に辛いと言うことができて。それでだいぶ良くなったのかなと思います。

自分のペースでヨガの良さを伝えていきたい

――今はヨガ講師もされているということですが、資格などもお取りになったのですか。

RYT200という資格を持っています。ヨガの本質はポーズではなく呼吸なので、私が2~3年続けてきていることをお伝えするという形でやっています。

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――ヨガに出会ったことで、考えたことはありますか?

ヨガに出会うまでは、ずっと外に求めていたんですね。「ここは私がいる場所じゃない」とか「もっと違う場所があるはず」って。それで海外旅行に行ってみたりもしていたんです。だけど、自分からは逃げられないんですよ。
そう気づいてからは、どうやったら自分に優しくできるかなと考えるようにしてきました。

――ヨガ講師として今後こうしていきたい、というビジョンはありますか。

ヨガ講師として組織には所属したくないんです。というのも、ヨガは「あるがまま」を練習するものと捉えているので。組織のルールの中でやるとか、組織のために働くということに今はピンときていません。あくまでマイペースに、無理のない範囲でヨガをお伝えしていけたら、と思っています。

――心身の不調があったり、周りと同じようにできず苦しんでいる人へ、言葉をかけていただけますか。

うーん、難しいですね、どれくらい辛いかにもよりますし…。
私は、「今いる場所が全てじゃない」と信じていました。
時間が解決してくれることもあるし、嫌だったら逃げればいい、辞めたかったら辞めればいい。そこ以外にもあなたの生きる場所はあると、私は信じていますね。
苦しいって感じているのは、身体が警告を出してくれているからだと思うんですね。それを無視しないであげて欲しいな、と思います。

――確かに、身体が発するシグナルに目を向けてあげることって大切だと思います。

学生さんにも伝えたいことは、進路について迷ったり不安になったりするのは自然の反応だ、自分で道を拓いていくことが恐くなって立ち止まることもあって当然だ、ということです。
だから、それを乗り越えて決断した選択は、どれも間違っていないと思うんです。あとは決めたことを楽しんで、そこから学んで過ごしていってほしいですね。

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明るい笑顔からは想像もできないほどの苦難を乗り越えてきたさとこさん。どんな時にも自分を信じてあげることの大切さを教えていただきました。

さとこさんのtwitterはこちらです!


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