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ー5ー 衝突、恐怖感、別れ話


彼とは度々衝突することがあった。

2人でショッピングモールの喫煙所に入ったとき、
すごく背の高い男性が3人くらい一気に入ってきて
喫煙所を出て思わず「さっきの人たちめっちゃ背高くてびっくりした」
と私は言った。

その時に彼は何も言わず、後日
「だったら背の高い人と付き合えばいいじゃん。」
と、俺は身長が低くてもその辺の男と比べたらたくさんいいところあるし
って
また矢継ぎ早トーク。

そういうつもりで言ったんじゃないのに。
どうして彼はそういう受け取り方しかできないんだろう。


ある日は、彼の作ってくれた凝った料理を食べる私に対して
「料理の感想を言え。俺は料理人だよ?」
そう言ってきた。
彼は友人にこの話をしていたみたいで、友人から
「彼の料理を食べて美味しい!って喜ばないのはおかしい」
そう言ってたぞ、と言ってきた。

彼の作る料理は勿論美味しいし、作ってくれることにも感謝してる。
私にとって食べる行為は生きる為の行為に過ぎない。
職場で、小さな子どもたちとの食事の時間は毎回戦場。
ちゃぶ台返しする子、食べずにフラフラ歩く子、
何かしら愚図る子が×8人

だから、せめて家で食べる食事は何にも考えずに
ゆっくり食べたかった。

それでも、最初一口食べたときに「美味しい」と言うことを意識していた。

彼は家で食事を作ってくれる時に、
毎回 ‘‘いただきます‘‘ をする前にテレビを点ける。
向かい合って食べているわけでもない。
彼の視線は食べながらもずっとテレビに向いている。

「無言で食べられるの嫌だ。
その辺のレストランより美味しく作れてる自信あるし」

私、どうしたら良かったの?

毎回彼は後からこういうことを言ってくる。

私は本音を言うとその2倍以上の言葉で返されるのを恐れて何も言えなくなる。頭の中が言いたいことでぐるぐる回り続ける。

私が下を向いて黙っているのをいいことに、
あの時はああだった、こうだった
と更に追い立てられる。

そして、無理矢理顔を上げさせてこう言うんだ。
「え?なんか言いなよ。」

決まって彼は私のシフトに合わせて仕事を調整して
私の家に来る。
「毎回1時間半もかけてバイクでくる俺すごくない?かったるいわ」
と言いながら。

私だって行くって何度も言ってるのに。
頑なに家に入れてくれないのはあなただよ。
あなたが望んでこっちに来ているんだよ。



私は小さい時から抱き枕がないと眠れない。
でも彼からは腕枕で寝るように言われる。
「俺に抱き着けばいいじゃん。」って。

全然別物だよ?私は縮こまって抱き枕を足の間に挟んで寝たいの。
そうすると安心するから。
だから彼が寝た後に私は抱き枕を使って寝ていた。

そんなある日、一緒に寝ていた朝方
彼は急に私の抱き枕を引っ張って取り上げ、
「こんな気持ち悪いのでずっと寝てて俺の気持ち考えたことある!?」
と怒り、そのまま投げられた私の抱き枕は、
私のジュエリーボックスに当たって、中身が飛び出した。

彼は、「あれは事故。ただの事故。」
と言い謝ることはなかった。

私はとんでもない恐怖感を感じた。
自分の家なのに好きなように出来ないストレス。
怒ってばかりの彼と一緒に居たくない。


彼と同棲する話は度々でていたし、お互いに物件をシェアして見ていたりしていた。

けれど、私の彼に対する違和感や恐怖感。
同棲した先のことを考えるとどうしてもマイナスなイメージが湧いてきた。

加えて、前回休職した時に貯金はほぼ無くなり、
復職しても夜勤は精神的にも体力的にも入れなかったから
給料はいつもより減っていた状態だった。

私の家の更新の時期が近づき、悩んだのち
彼に今の家を更新することを伝えた。

彼はあっさりと承諾した。


家の更新を決めてから、彼にはゴムを付けてほしいと
お願いしようと思っていた。


その後
一度、別れ話を超えたことがある。

きっかけは、お互い自分のバイクで出かけていて私の家までの帰りの道中。
インカムで通話しながら、ふと昔お世話になっていたバイク屋さんの横を通った時に私から話をした。

バイト先の関連で繋がってよくお世話になっていたこと、
そこの店長さん(既婚者)がカッコいいこと、
昔バイト関連つながりで飲み会をしたことがあること。

すると、彼は無言になった。
そしてそのまま彼は車の間をすり抜けていき、
先に行ってしまった。インカムの接続が届かないところまで
行ってしまった。

あー、地雷踏んだか。と思った。

そして、家に入るなり、
また矢継ぎ早に言われた。正直あまり覚えていない。
「すぐに俺のほうがかっこいいよとかフォローすらない」

そして、「もう無理、別れよ。」
と、私の家の合鍵とペアで作ったリングを置いた。
そして、もうそのまま出ていこうと立ち上がって歩き出した。

突然すぎて、私は咄嗟に泣いて引き止めてしまった。


私がまだ高校3年生の時、母親の虐待に耐え切れず家を飛び出し、荷物を取りに行った時に家にすら入れてもらえず
ベランダから私の荷物を全て落とされた時に感じた虚無感。

夜逃げした時に父から電話口で
「お前は恩すら言わずに出ていくのか。」
と言って切られた時に感じた見放され感。

多分、きっと。
それが甦ってしまった。

私にはその時、恐怖を感じながらも依存していて
見放される恐怖の方が怖かったんだと思う。








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