月の舟で星の海へ漕ぎ出そう

2021.6.13



昼過ぎに雨が上がり、月齢2.8の月が見える。

揺りかごのような曲線が、まるでゴンドラの形で、ほら乗り込んで宇宙旅行でもどうだい?と誘っている。
じゃ乗せて貰おうかなと、その気になる。

寝転がりながらの旅は怠け者の私にぴったりで、ゆらゆらと快適そうだ。

夢想するだけだから、太陽風とか放射線とか紫外線とか無重力とか真空とか時空とかカイパーベルトとか、そんな小賢しいことまでは考えず、夢の中で遊び、通り過ぎる無数のスターダストを雲に見立てて何処までも行く。

スピードさえあれば、帰還した時には浦島太郎効果で若返っているかも知れず、いや、生前かもね。

そうしたら、まったく別の人生を生きるのだろうか。

今度こそしっかり勉強して多くの人の役に立つ仕事に打ち込み、周囲に優しく接して、目立たず、驕らず、穏やかな人生を歩みたい。
いや、数世代後の地球人に会うことになるのか。
阿呆だから、何が何だかとんとわからぬ。

天の海に雲の波立ち月の舟星の林に漕ぎ隠る見ゆ

この柿本人麿呂の歌を読み返すたびに心がとろけそうになり、しばし現実を忘れさせてくれる。

万葉集の中でも出色の歌だから、余計に目立つのだろう。

人麿呂さんと、この際だから一緒に宮沢賢治とサンテグジュペリを、宇宙ステーションに連れて行ってあげて、感想を聞いてみたい。

宇宙の遠くを考えることは、過去を見るのか未来を見るのかわからないが、果てまで行くのは空想の世界でも難しい。
宇宙の広さを実感出来ないからだ。

だから気が向いた時に出掛け、帰りたくなれば一瞬で戻る。

しかしこのところの悩みは、帰りたくない、という一点だ。
人生観が浮世離れしてるからなんだろうね。

幽体離脱とか瞬間移動とか体験してみたいけど、月夜に釜を抜かれても困るので、夢想もほどぼどにしましょ。

この瞬間にも、無数のニュートリノが無断で体内を通過しているらしい。

私はiモードとWi-Fiとデザリングの違いもわからない阿呆だから、今夜の月を見ると、ウサギも窮屈だろうなと心配になる。

今回は万葉集で攻めてみました。

〆は俳句 で。

月の舟で星の海へ漕ぎ出そう

おやすみなさい。



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