奈良の絵日記 三日目
2010年9月13日
「元カノに逢いに行った」の続きです。
江戸の敵を長崎でとは聞くけれど、まさか東京の疲れが奈良で出るとは思わなかった。
前夜は昼間の暑さから解放され、宿のエアコンに救われた気分だった。
ところが夜十時には就寝したものの、日付けが変った頃に目が覚めてしまった。
どうやら軽い夏風邪を引いてしまったらしい。
眠れぬまま、ライティングデスクに向かい、想像で興福寺の朝焼けを描いた。
今日は法隆寺へ行くつもりだったが、一日、休養と決めた。
その代わり、阿修羅を見よう。
朝までの長い時間、持参した文庫本を読んで過ごした。
秋の旅朝は茶粥に香のもの
食後に部屋に戻り、少しだけ二度寝をした。
気がつけば九時、国宝館の開館時間だ。
宿からブラブラ歩いて、興福寺境内を散策。
今日は平日。
昨日までと打って変わって、人が少ない。
来月には初層を一般公開するらしい。
鹿。
段ボール食べてる。
重要文化財の南円堂。
お参りする人がちらほら。
少し歩いて北円堂。
こちらは国宝。
きれいな六角形だ。
そして国宝館へ。
阿修羅との再会は一年半振りだ。
相変わらずのお姿に、しばし至福のひととき。
体調の悪さも、時間さえも忘れてしまう。
バラ売りしていた柿の葉寿司を買って、宿に戻った。
結局それは食べずに、横になった。
それでもせっかく奈良に来ているのだからと、再度、出掛けることにした。
タクシーで白毫寺へ。
周囲の邪魔にならぬよう、素早く描き上げた。
奈良の多くのお寺には、数え切れないほどの思い出が詰まっている。
あの時は誰と訪ねた、そして別のあの時も誰かと一緒だった、あの季節は寒かった、などの想いが押し寄せて、胸が一杯になる。
志賀直哉の旧居にも寄らず、早々に宿へ引き上げた。
誰か「小僧の神様」ならぬ「中年の神様」を書いて、ひと時でも良い夢を見せてくれないものか。
とにかく、夏風邪を追い出して、明日からの為に体力と気力を復活させよう。
明日は、いよいよ法隆寺へ行く。
続きます。