21世紀のめんどくさい本の話

 読書好きな方は意外に多いと思う。
 少なくとも私は、映像メディアにあまり感化されない方で、聴覚や文字情報に影響されやすいようだ。
 当然、読書は好きだし、読書に限らず1日のどこかで文字メディアを目にしないと落ち着かない活字中毒者だと思っている。

 さて、ここで質問。
 これを読んでいるアナタは、紙媒体の「本」がお好きだろうか。あるいはデジタルの「電子書籍」が好きだろうか。

 ここ数年で急激に電子書籍が急激に普及したせいもあって、この論争は答えのない禅問答のような様相になっている。
「本じゃないと頭に入らない」という人もいれば、「電子の方が読書が捗る」という人もいて、多分に読書家諸兄の好みの問題になっている。

 ちなみに私はと言えば、「どちらかと言うと電子派」という感じだ。
 何となくだが、読書が捗る気がするのは電子書籍なのだ。
 だからと言って紙が電子より劣っていると思うかと言われるとそうでもない。
 紙は紙の独特の良さがあるし、ひとつの「物」として見た場合、電子書籍は実体のない文字情報という感じを受けるが、紙媒体は「本」という実体を伴っている。
 電子書籍でシリーズ物を読むことも多々あるのだが、数十巻というサイズの長編となると紙媒体の方が「逃さず集めている」感を受ける。

 正直なところ、紙であれ電子であれ、文字情報がそこにあるというだけで活字中毒者の私としては十分満たされるわけで、紙の本も電子書籍も両方購入している。
 ただ、そこにはひとつの線引きがある。
「シリーズ物なら1巻を紙で買ったら紙で集め続ける」というもの。
 
 例えば、1巻から4冊くらいは紙で買っていたけど、途中から電子書籍の販売も始まった、というケースは結構ある。
 こういう場合、4冊はすでに紙で持っているので、今さら電子で買い直して集めるのはお金の無駄にもなるし、買い直したところで読まないので意味がない。
 ということで、紙で読み始めた本は全部紙で読む。
 加えて、解説書の類や電子化されそうもない本は選択肢がないので、本を買う。

 こうやって本を買っていくと、部屋のスペースを侵食していくのが本の欠点と言える。
 だから、紙の本も好きなのだが、上に書いたような理由がない限りは基本的に全部電子で揃えることにしている。
 
 電子書籍はとにかく場所を取らないのが最大のメリットだ。
 電子書籍リーダーの中に数百冊というサイズで収まってくれるので、どれだけ長いシリーズになろうが、気にせず買って読めるのはうれしいところだ。

 しかし、電子書籍にもデメリットはある。
 代表的なところで言うならAmazonのKindleだろうか。
 Kindleストアで「お金を払った」電子書籍はKindleデバイスをはじめ、スマホやタブレット、パソコンでも読める。
 だが、「お金を払った」のに「実体」がないのだ。
 本来、電子書籍というのは紙の本をデータ化して、規格に則ってファイルになっているもの。
 それはKindleでも同じなのだが、電子書籍ストアで購入した本は「お金を払った」人には決して見えない仕組みになっている。
 著作権保護という理由もあるのだが、電子書籍は「購入」しているように見えて、実はファイルの所有権自体は購入者に移らず、ストアが所有する形になる。
 したがって、ほとんどの電子書籍は「読書する権利にお金を払っている」ことになる。

 紙の本はお金を払った人=所有者なのだが、ここが電子書籍との大きな違いだ。
 ここに引っかかっている人も意外に多く、それが理由で電子書籍を読まない人もいる。

 電子書籍の場合、そういう仕組み上の問題で、例えばAmazonがKindleのサービスを止めます、と宣言したとき、今までお金を払って読んできた電子書籍は全部読めなくなる。
 良心的なところなら、ダウンロードさせてくれる場合もあるが、今まで使ってきた金額をポイントで返還、というようなユーザーに優しくない例もある。

 電子書籍と紙の本、それぞれに長所・短所があって、どちらがいいとは一概に言えないところはあるが、活字中毒者としてはそういうものを全部併せのんで楽しむしかない、と割りきって本を買っている。

 先のことは考えてもしょうがないし、電子書籍に何かが起こったらその時に考えればいい、紙の本が部屋中にあふれたら、整理して売るなり何なりすればいい、と居直って読書をしている。

 さて、アナタはどちらを選ぶだろうか。 

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