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設計事務所つれづれ~なぜ自分の住み家を人に任せっきりにするのか~

設計事務所を15年経営してきました、1級建築士のMerzです。

これまでに、数えきれないほどの住宅設計に関わってきました。

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この国の方は、なぜ自分が住まう家を「初めて会う人=業者に任せてしまう」のでしょうか?

ほとんどの方は住宅を手に入れる際に「住宅ローン」を使い、30~35年という途方もない期間を設定し住宅の費用を支払っていきます。

ちょっと考えてみましょう。今年、晴れて住宅ローンから解放される方。35年もの長期間支払い続けてきたローン。では、今から35年前。いったい何があったのでしょうか?

35年前。新両国国技館(今の両国国技館)が完成しました。日本電信電話公社がNTTに、日本専売公社がJTになりました。阪神ファンの私も懐かしい、バース・掛布・岡田のバックスクリーン3連発ホームランもこの年。桑田や清原はまだ高校生でした。これが35年前。

さて、今から35年もの長期のローンをお考えの方、この先35年を考えるとどうでしょう?

「まあ、何とかなるか」なんて考えられますか?

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近年だけでも、大地震や新型ウイルスなどの脅威、他国との関係、少子高齢化など、過去に比べ問題は山積しています。そんな中で、一定額を35年も支払うことは可能でしょうか?

大切な住み家を人に任せてしまう理由はあります。その問題点を考えてみましょう。

1)住宅の作り方がわからない

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住宅とひとくくりにしても、木造から鉄骨造、鉄筋コンクリート造など作り方は様々。今はネットなどで浅い情報は手に入るけど、調べていくとどんどん深みにはまりわからなくなる。結局、建築業界(というより不動産)の人に任せるしかない。といった流れでしょう。

ここで一つの勘違いが生まれます。あなたが依頼しようとしている人は、建築の専門家でしょうか?不動産の販売の専門の方ではないですか?

ほとんどの場合、住宅を「購入する」という考えでスタートしています。住宅は「購入する」ものでなく「作るもの」です。依頼されている方は、住宅を「販売するプロ」である場合、建築に関する詳しい情報(例えば温熱環境や建築法規、耐震性など)はほとんど知らない人が多いです。なぜなら「販売のプロ」ですから、売れたらいいわけです。売るためには性能など良い部分のみを全面的に押し出します。売れたらいいわけですから。

私がクライアントと打ち合わせを行う場合は、必ずメリットとデメリットを説明します。二つを並べて「悩んでもらう」ためです。悩んでもらうことで住宅を「作る」ことに気づいてもらい、完成してからもメンテナンスなどに気を付けてもらうためです。

2)住宅にかかる費用がわからない

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住宅の新築ともなると大きな金額が必要です。だからこそ住宅ローンを組みます。では実際にかかる費用ってどのくらいかわかりますか?

夢を持って住宅造りに挑むも、難しい用語が出てきたり、やややこしいお金の流れがあり、進めていくうちに「もう任せよう」となります。私も多くのご家族とお会いしましたが、ほとんどの方が1か月もしないうちに「夢の住宅造り」から「金額の計算」に代わってしまう姿を見ています。その時に必ず話すのが

住宅を考える時間は「夢を語る時間」で楽しいのですが、必ず「費用計算」という現実を見ないといけない時期が来ます。心していきましょう。

と話します。設計事務所としては、かっこいいものを作るだけの仕事でなくクライアントの支払える実行予算と現実の実行費用とを見比べ、工事に取り掛かる前に「無理なくいけるかどうか?」を査定する、いわば人生設計も業務の一つとしています。かっこいいだけの建物は、時に費用と見合わないものとなり、住む方に35年もの負担となってしまうことがあります。その部分を先に理解していただき、身の丈に合った住宅造りが必要となります。

この他にも様々な要因があり、日本では「住宅=購入」という風潮が当たり前となってしまいました。新型ウイルスの蔓延により、これからは新しい生活様式を強いられます。握手もハイタッチもできない世の中です。なんだそんなことか。。。と思っている方、思いのほか、新しい生活はこれまでの生活と大きく違ってくることになりますし、私も設計事務所として「新しい生活空間」について、いろいろと考えないといけないと危機を感じています。

住宅は購入するものでなく、住む方が住み方をしっかり考える時代が来ました。次回は「これまで当たり前にできていた生活ができなくなること」についてまとめてみましょう。

読んでいただきありがとうございました。

https://www.houzz.jp/pro/cazarchi

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