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半夏生サバ【読みサバ】12尾目

皆サバ、お元気ですか? 
7月に入り、梅雨明けの発表を心待ちにしながらも、今年も全国的に酷暑との長期予想に今から戦々恐々としておるサバやしです。
そんな7月の前半、そう丁度この原稿を書いているまさに今日(7月1日)は、「半夏生」です。
これ、知ってる人と知らない人の年齢境界はどこらへんかなあ…サバやしは年齢的には言葉だけは知っていましたが、これまで特に意識することなく生きてきました。
 
「はんげしょう」、または「はんげしょうず」と読みます。
夏至から数えて11日目、7月2日頃から七夕(7月7日)までの5日間をいいます。
この暦は旧暦なので日付は毎年微妙に変わり、2024年の半夏生突入日は7月1日です。
 
古来、中国から伝来した暦の一つ(季節の分け方)に「二十四節気」というのがあります。春夏秋冬を6つに分けることで1年を24等分したもので、前述の夏至や冬至もそうですし、春分・秋分、立春・立夏…など現代の暦にも溶け込んでよく知られているものが多いです。
この二十四節気の一つ一つ(一気)をさらに初候・次候・末候の3つに分けると合計して72になり、これを「七十二候」といいます。調べてみるとそれぞれになかなか趣深い名前がついていますが、こちらは現代の日常生活ではもはや忘れられているものも多いようです。
半夏生は、七十二候のうち夏至の末候にあたり、今も比較的よく残っている季節の節目(雑節ともいう)といえるでしょう。
(因みに、二十四節気の「気」と七十二候の「候」を合わせたのが「気候」の語源です!)

七十二候 - Wikipedia

出典:Wikipedia

二十四節気・七十二候はもともと太陽の日長や光量の変化から生み出された暦で、特に農村では農作業を行うタイミングの指針として重用されていました(気象庁とかありませんからね)。
その中で半夏生はというと、「この日までに田植えを終わらせるべし!」という目安。そして、「田植えを無事に終え夏を迎える前のひととき、皆で美味しいものでも食べてねぎらい合おう!」という合図でもありました。
そんなワケで、日本各地に「半夏生には〇〇を食すべし!」という風習が生まれ、今もなお受け継がれている地域がけっこうあるんですね。
 
一般的には半夏生に「タコ(蛸)」を食べる」習慣が残る地域が多いようで、特に関西では今でもこの時期になるとスーパーの鮮魚売り場には「半夏生用のタコ」が並ぶんだとか。
これは、植えた稲の苗が「タコの足の吸盤のように根を張ってスクスク育つように…」というゲン担ぎだと伝えられています。また、タコには疲労に効く「タウリン」が豊富なため、農繁期の疲れを癒す効果があったとも。
また、香川県ではやはり、というか「うどん」を食べるんだとか。事程左様に、ほかにも地方によってさまざまな「半夏生には〇〇を食べる」が伝わっていそうですね。
 
前説がめっちゃ長くなりましたが・・・表題の「半夏生サバ」に移りましょう。
ここまできたらもうおわかりですね? 
「半夏生には〇〇を食べる」の〇〇に、我らが「サバ」が入る地域があるんです!
ところは、福井県大野市(越前大野)。半夏生になると脂の乗った丸焼きのサバを食べる風習があります。そして、こちらでは半夏生を「はげっしょ」と読み、「はげっしょサバ」と呼んでいるとのこと。カワイくないですか?
 
この半夏生サバ、江戸時代にこの地を治めた大野藩の藩主が、春の農繁期に疲れた体を癒し、盆地の蒸し暑い夏を乗り切る“夏バテ防止食”として領民に奨励したり、焼きサバを配ったりした(いいお殿様だ!)のが始まりとされています。
(因みにこの大野藩の城が今、“天空の城”として人気の越前大野城です!)

天空の城 越前大野城

大野市は福井県の中央、内陸に位置しますが、古来サバ食文化の中心地であった若狭地方から運ばれる新鮮なサバが豊富に流通して身近なタンパク源であったことも、もちろん関係しているでしょう。
江戸時代の大野藩は越前海岸に接する飛び地「西方(にしかた)領」(現在の丹生郡越前町の一部)を持っていたこともあり、“越前の小京都”として繁栄した城下町には行商人の「♪はげっしょサバ~♪ハゲサバ~♪」みたいな売り声も響いていたかもしれません(サバやし妄想)。
残念ながら今では若狭湾のサバの漁獲量は激減してしまいましたが、今でも半夏生の頃になると、市内の鮮魚店の店先などで香ばしく焼かれたサバの丸焼き「はげっしょサバ」を買い求める人が多く、同市の初夏の風物詩ともなっているとか。
 
そんな大野市の「半夏生サバ」は、令和3年度、文化庁の定める「100年フード」に認定されました。「地域の風土や歴史・風習のなかで個性を活かしながら創意工夫され、育まれてきた地域特有の食文化」として認められたのです。

「半夏生さばの食文化」が文化庁100年フードに認定 大野市公式ウェブサイト (city.ono.fukui.jp)

出典:大野市公式サイト

いかがでしたか? 今回はタイトルだけ見ると「はんなつの、生サバ??」などと思われがちなネタだったかもしれませんが、日本人が大切にしてきた季節の節目と、昔から庶民に親しまれてきたサバが組み合わされた、なかなかに趣の深イイ話だったのではないでしょうか。
今年はもう間に合わないけれど、来年の半夏生の時季には若狭へのサバ旅から足を延ばして体験してみたいと思っています!
なお、サバの丸焼きについては、同じ福井県の小浜市でサバやしが遭遇した「浜焼き」として「サバ旅@小浜」内でも紹介していますのでぜひそちらも!

浜焼き鯖(小浜で撮影したもの)

さらに、福井といえば、来たる10月26・27日に開催が決定した「鯖サミットin美浜」の美浜町も福井ですね。この機会に、鯖サミットと大野市観光をセットで楽しんではいかがでしょうか?!

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