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刺鯖(さしさば) 【読みサバ】1尾目

鯖にまつわるあれこれを、読んで味わってみようという「読みサバ」。 今回は、耳慣れない方も多いかもしれません。「刺鯖(さしさば)」です。

馬刺しや烏賊刺しみたいに言うところの「鯖刺し」(鯖の刺身)ではないです、念のため。まあ平たく言うと、鯖の干物ですね。マサバを背開きして塩漬けにした後、頭(エラ)のところで2匹合わせて1本としたもの。

冷蔵技術も輸送スピードも未発達だった江戸時代までは、食当たりしやすい生魚を食する習慣はほとんどなく、特に傷みやすい鯖は塩漬けなどの加工・貯蔵技術が各地で工夫されていたんですね。

そんななか、刺鯖は、特に西日本で盛んにつくられていたようです。そして、面白いのはこの刺鯖、古くから祭事や儀式のお供え物、またその“お下がり”をみんなで食す行事食としての地位も得ていたということ。古来、日本人にとって鯖がいかに身近な食材であったかを物語ってくれます。

たとえば、江戸時代には、7月15日に父母の長寿を祝う儀式があり、そのとき刺し鯖を蓮の葉に包んで供したとか。また、お盆には親類縁者への贈答品にもなりました。
今でも奈良県では、お盆の行事食として受け継がれている地域があるようです(奈良の方、読んでいたらぜひご一報を!)。

一説には、今も残る「お中元」。中元とは中国の習俗で7月15日を指すため、これは江戸時代、この時季に「刺鯖」やそれをお金に代えた「鯖代」を贈るという習俗が変化したものでは、とも言われています。先述の、父母を寿ぐ儀式ともつながっていそう。

よし、今年のお中元は実家に刺鯖でも贈ってみるか!と、およそ売ってないモノはそうそうない楽〇市場で「刺鯖」を探してみたのですが…
なんと、見つかりませんでした。普通の鯖の干物(一尾物)はもちろん、鯖刺し(刺身!)まで売られていたんですが。昨今、伝統的な刺鯖の製造・販売は激減しているものと推測されます。

ただ、奈良県などお盆行事に残る地域では、その時季には地元のスーパーなどでも売られているかもしれません。いつか足を運ぶ機会があれば検証してみたいものです。

因みに、刺鯖は、俳句では初秋の季語なのだそうな。
有名な与謝蕪村(1716~1784)に、こんな句があります。
 
刺鯖も蓮の台に法の道

それでは、ぼくも一句、

刺鯖を詠むより食べたい刺鯖かな(字余り) 

…おそまつさまでした!


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