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昭和の名ブランディング〜ダルマと言えば〜3分で読めるブランドのチカラ (59)

○ 小林亜星さん作曲の珠玉のCM曲 for Suntory
○ 目力大魔王の芥川賞作家・開高健さんの目力CM
○ 私の大学時代のウィスキーピラミッドの頂点はサントリーオールド
○ 子供が成人してわかったサントリーの往復ビンタ的ブランディング



「ダルマ」というニックネームで男性に親しまれてきたサントリーの名ウィスキーがあります。サントリーオールドです。

 数多くのCM曲や歌謡曲を創り出してきた巨漢の名作曲家、小林亜星さんが先頃逝去されました。※

 レナウンの「ワンサカ娘」、日立製作所の「この木なんの木・・」など皆の知る多くのCM曲を作曲されてきた方ですが、私にとってはなんと言ってもサントリーオールドのために作ったCM曲が珠玉なんです。

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YouTubeでサントリーオールド、開高健と打ちこむと出てきますので、観てください。

 カメラ目線でウイスキーを味わっているひと、この目力の異常に強い方は、故開高健さん (1930〜1989)、元 壽屋(後のサントリー)宣伝部で辣腕を振るい、芥川賞作家にもなった傑出した作家です。このCMは1979年(昭和54年)に放送されたものです。

 サントリーオールドの歴史は古く、1940年には山崎蒸留所で誕生していますが、太平洋戦争戦時中はもちろん販売できませんから、本格的には戦後復興期からです。

 高度成長期にサントリーの代表的なウィスキーに成長していきますが、まさにそんな頃に私は思春期の中学生でした。

 奥手だった私は、中学生当時まだ酒を舐めたことすらなく、もっぱらウィスキーは大人への通過儀礼的な嗜好品で、タバコと共に大人の2大シンボルでした。正直を言うと、これに女性経験が加わって3大シンボルでしたけど。😀

 お酒は高校生になってからでしたが、アルコール度数の高いウィスキーはあくまでも「父親」世代の飲み物でしたから手は出さず、もっぱら安い日本酒だったと記憶します。

 当時ウィスキーは高嶺の花だったんです。
どこの家もそうだったと想像しますが、家の応接間のサイドボードにはジョニーウォーカーなどの「洋酒」が慎重に置かれ燦然と輝いていました。

 今は昔話で笑ってしまいますが、父は決してジョニーウォーカー、黒ラベルで「ジョニ黒」と呼ばれてたやつです、これには手をつけず、その横に鎮座する座りの良い😀サントリーオールドを専ら晩酌に飲んでいました。

 ウィスキーを飲み出したのは大学生になってからです。
 1970年代中盤、盛場には多くの「コンパ」と呼ばれるパブが出来ていました。今の人にはコンパもパブも死語ですよね。

 コンパは語源は英語のcompany、ドイツ語のKompanieで仲間と集い飲むことで、大学の部活動やクラブでは新入生の歓迎の飲み会を新歓コンパと言っていましたね。

 で、パブは英国の酒場Public Houseから呼ばれるようになったウィスキーやカクテルが飲めるお店です。

 店として「コンパ」と呼ばれる店舗形態は、丸いカウンターの中にお酒を作る女性従業員が入ったバーのことでした。

 大学のあった高田馬場に当時はやっていた「コンパ」があり、そこで出されていた人気のウィスキーがサントリーオールドでした。開高健さんのCMが流れたのはそんな頃なんです。

 お金のない大学生だった私の中では、お酒に序列がありまして、下から言うと、こぼすとベタベタしてしまう安い日本酒(当時は吟醸酒なんて無くて、一般酒です。しかも最下位ランクの)、ちょっとバイト代が入ったら角(サントリー角)かホワイト(サントリーホワイト)、そして今日は懐が暖かいぜ!と言う日はコンパでサントリーオールドだったわけです。

 つまり私の頭の中ではサントリーオールドは自分の飲むウィスキーのブランド・ピラミッドの最高峰に位置していたんです。「洋酒」は別格です。あれは父がまれに手をつけたときにご相伴に預かる「他人のもの」でした。

 そんなわけで、サントリーオールドの私にとってのブランド価値はfeel like being 大人、大人としての自己承認効果なんですね。

 開高健さんの出ているCMは、ナレーションで大人の顔ということが語られています。というか、改めて観て良いナレーションだと再認識したわけで、実は何も覚えていませんでした。

 覚えていたのは小林亜星作曲、当時上智大の教授だったサイラス・モズレー氏が口ずさむ特徴的なスキャットだけです。

 以前ネスカフェ・ゴールドブレンドの違いのわかる男の「ダバダ〜♪」スキャットのブランディング効果について書きましたが、まさにこのサントリーオールドのスキャットがブランド・ソーマとして私の頭の中に撃ち込まれていたんです。

 今でもこの曲が流れるとウィスキーを飲みたい気分になります。もちろんそんな時はサントリーオールドを思い浮かべます。ほんとなんです。😀

 最近飲んでいませんでしたが、先日社会人の息子が久しぶりに実家に遊びに来たので、妻がサントリーオールドのボトルを出したんです。息子が来るので買っておいたらしい。

 皆で飲みながら思ったのは「こいつも大人になったな・・・。」

 しばらく遠ざかっていたサントリーオールドでしたが、これに似た感情が國村隼人と伊藤歩の出ているこのTVCMを見たときに浮かんでき、ほろりとしました。

 國村隼、伊藤歩、サントリーオールド、で YouTube検索してみてください。このCMいいですよ。

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ちょっと仕事があって出張と言い訳をして、地方都市から上京した父、しばらく会っていない娘を誘いバーのカウンターで二人サントリーオールドを飲み交わす。
仕事はうまくいってるのか?(父)
順調、順調、心配ないって。(娘)
娘の声のナレーション「嘘をつきました・・・」
そうか・・・(父)
娘の声「でも。父も嘘をついていた」
新幹線で帰る父を改札に見送る娘。
娘の声「ほんとは出張なんかなかったくせに」
新幹線の中でひとりごちる父「ばれたか。」

人生おいしくなってきた。ザ・サントリーオールド

  自分も娘がいるので、感情移入甚だしく。😀
そんな大人になった娘を見て「俺も十分過ぎるくらい大人になったなぁ。」という、大人としての自己承認感情だったんでしょうね。

   サントリー、やっぱりブランディング巧者です。やられました。しかも往復ビンタで。若い頃の憧憬と、年齢を重ねてからの自己承認の往復ビンタ。☺️
   心動かされるCMには行間が多いです。


   なんかアタマの中で例のスキャットが浮かんできました。今夜はウィスキーで。

  小林亜星さん、合掌。


最後に。

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※脚注

○ 小林亜星逝去・・・2021年5月30日逝去



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