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ブランドソーマ・保険のケース〜3分で読めるブランドのチカラ (73)

  • ○ 業界別広告出稿量調査で金融・保険業界は何位?
    ○ 自動車より上?下?
    ○ ヘッドセットマイクをしたオペレーターの姿というブランドソーマ
    ○ 想起されるブランド・イメージは「納得」の安心
    ○ 仕掛けられているプロスペクト理論活用というマーケティング手法


  業種別の広告出稿量調査というのを電通が毎年発表しています。対象はマスコミ4媒体です。

 これによると2020年度の総広告費は2兆1,363億円。同年のインターネット広告費はマス4媒体に並ぶ出稿量となったと言われていますので、この調査だけで業界別の動向を判断するわけにはいきませんが、メジャーな流れを見ることはできるかと思います。 今日は保険の広告について書こうと思うのですが、皆さん保険業界の広告の量は何位くらいだと思いますか?

 保険は金融・保険というカテゴリーに仕分けられているので、銀行やカード、ローン会社も含まれており、純粋に保険という切り取りは出来ませんが、
電通の調査によると金融・保険カテゴリーは2兆1,363億円の総広告費の6・1%で6位なんです。思っていたより多いですか?それとも少ない?


 ちなみに、自動車は金融・保険より1パーセント低く、8位なんですね。
1位から3位は、情報通信、食品、化粧品・トイレタリーの順で、全て10%超えてます。10%超はこの3業種だけなんです。情報通信? なにそれ?・・・って思われました?

 携帯電話がこのカテゴリーに入るんです。激戦区、携帯電話の出稿量多いですもんね。

 さて、話は保険です。

 以前ブランド・ソーマという考え方について書きました。世界的な市場調査・マーケティング会社のMilward Brown南アフリカの会長 Erik du Plessis氏が提唱した考えで、簡単に言うと、購買時点で人の購買を誘発する、意識下に刻まれた、ブランドにリンクした好印象 (または悪印象) の刻印のことです。

 刻印はブランドのデザインやキャラクターだったり、音だったり、五感にわたり様々です。

 私が「〇〇保険」と聞いた時に想起するブランドソーマが二つあります。

 実際にこのソーマが売上にどれほど寄与しているか、私はデータを持っていないのでなんとも言えませんが、両社が長年にわたりこれらのソーマを継続使用しているわけですから、効果大なりなんだと推測します。効果が認められなければ、とっくにお払い箱ですから。


 ひとつ目は♪ハロー・チューリッヒのジングルが印象的なチューリッヒ保険です。チューリッヒ保険会社はその名の通り、スイスで1872年に設立され、現在世界200ヵ国以上で保険業務をしているglobal insurance companyです。

 自動車保険を中心に営業している損害保険会社ですが、私のアタマに差し込まれているイメージは、ヘッドセットマイクをして、電話で相談に乗ってくれるオペレーターの女性です。記憶にあるかと思いますが、如何でしょう。

チューリッヒ保険のTVCM

 自分的には保険は、会社に訪ねてくる女性の保険外交嬢が机の横に座り込んで、イエスというまであの手この手で商品を繰り出して圧を掛けてくる営業手法がディファクトスタンダードだったんですね。生命保険ですが。いまは、会社はセキュリティー対策でフラッパーゲートを付けているとことも多く、保険の外交員さんも以前のように気軽に入る事は出来ないと思います。

 ヘッドセットマイクを装着して、顧客と電話で保険の委細を詰めていくというこのスタイルは、私の記憶では、チューリッヒ自動車保険が最初だったように思います。今は他社がどこもやっていますけど。

 チューリッヒ自動車保険のヘッドセットマイクを付けて喋るオペレーターは、女優の松木里菜さんが2006年から演じていて、今でも続いています。現在は俳優・歌手の石丸幹二さんがメインでCMをやっていますが、松木理恵オペレーターも健在です。

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松木里菜さん


 このTVCMで作られたブランド・ソーマはヘッドセットマイクをつけて相談に応じているオペレーターの図。ブランド・ソーマによって誘引されて繋がっていく昇華ブランドイメージは「納得」だと思います。

 保険外交員さんのペースに乗せられて、うまいこと丸め込まれた感がどうしても強くて、後になって余計な保険項目を追加して高くなってしまったんでは・・・という「疑問」がどうしても残るのが保険なんですね、私の場合。皆さんはどうですか?


 でも、このように自動車保険をオペレーターさんと詰めていき、不要な条件をカットしていくことができるなら、安心です。結果的に安くなることも大事ですが、むしろ「納得」した安心感のほうが大きいです。

 ブランド・ソーマはヘッドセットマイクをして相談に乗るオペレーター、誘因される先のブランド・イメージは「納得」安心感と思いますが、実はマーケティング戦略的にもきっちり消費者の心理をおさえています。

 マーケティング戦略で「プロスペクト理論」の活用というのをお聞きになったことがある方は多いでしょう。

 人間の「損をしたくない」という気持ち、得をするより損をしたくない気持ちが勝る、という性質を利用するマーケティング手法です。損失回避性、つまり無意識に「得を求めるより損を避ける」人間の心理のことですね。

 オペレーターが相談に乗ってくれて、個別事情をヒアリングしながら「不要な」条項をカットしていくというのは、「今まで知らないで付けていた事による損失」を無くすという、まさに損失回避そのものです。よく出来てます。入っちゃいますね。😄 余談ですが、チューリッヒ保険の広告でオペレーター役を演じている女優の松木里菜さんの声がとてもいいんですね。なんか親身になってくれてる感があって、通りいっぺんじゃないというか。音声学の専門家が声紋分析をしたら、何かあると思います。実際の広告制作ではこういうのとても大事なんですよね。入っちゃいます。


さて、私が思い浮かべた保険のブランドソーマ、もう一つはなにか? 別稿で書きたいと思います。ヒントはドナルド。😄



最後に。

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