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君を探して三千里 〜ピンクの君は何処へ〜
今回は部下の話ではなく、わたしの話だ。
連日の残業が続いたある日。
これ以上残ると日を跨ぐ可能性が出てきた為、わたしは職場を後にした。尚、仕事は終わらない。
何故か、終わらない。山積みである。
大丈夫、仕事は明日以降のわたしがなんとかしてくれる。頑張れ未来のわたし。
そんな最中ではあったが、翌日は待望の休日だった。心なしか足取りも軽い。
自分のスマホを開くと、弟からメッセージが届いていた。
「帰りにコンビニを見てきて欲しい」
どうやら、かの有名な牛乳瓶のマークのコンビニ限定でピンクの丸いアイツの籤引きが出ているらしい。
そう、みんな大好き「星のカービィ」である。
弟とは仲が良い。コンビニに寄るくらい、訳ないことである。快く承諾した。
これが全ての始まりであった。
帰り路に寄れる対象店舗は計4店ほど。
しかし、何処にもカービィは居なかった。
弟に連絡する。どうやら、よくよく話を聞くと、弟本人が欲しい訳ではないらしい。
探しているのは弟の知人で、その人はカービィ大好きなお子さんへの誕生日プレゼントとして探しているようだ。
翌日に休日を控えたわたしは、弟に提案した。
「もし良ければ、これから探しに行く?」
是非、と返事が返ってきた為、夕食を摂り終えたわたしは車のキーを手にして外へ出た。
平日22:30過ぎの街は静かだ。
運転する弟の隣でボンヤリと外に目を向ける。
運転してくれると言うので代わってもらったが、わたしは翌日休みでも弟は仕事だ。大丈夫だろうか。
-まぁでもそんなに掛からないだろう。
しかしその思いが甘かったことをわたしはすぐに思い知ることとなる。
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「あった?」
「ない」
もう何店舗巡ったであろうか。
市内中の青いコンビニを巡ったのではという疑惑すらある。
途中から弟は車を降りるのを辞め、わたしが中まで見に行っていた。
ちらりと時計を見る。日付を跨ぎそうだ。
もうそろそろ帰る?と相談しながら、ふとわたしは思い出した。
「そういえば、もう少し行ったところにもう一店舗あるな。」
隣の市にはなるが、そんなに遠くはない。
「…行きますか!」
かくして、ピンクのアイツを探す旅は市外にまで拡大されることとなった。
…。
……。
隣の市のコンビニまで捜査範囲を拡大してから暫く経つ。
時間は0:30を超えていた。
到着する度に地図で確認し、「近くにあるな」と足を伸ばす。そんなことを延々と繰り返す。
弟は明日出勤だ。わたしが運転を代わった。
そして。AM1:30、わたしは運転していた。着くと降りてコンビニへ向かう。-いない。
弟は車の中で次の店舗を調べている。
捜査範囲は隣の市から更に拡大され、別の市にまで及んでいた。
もはや本当に何店舗巡ったかわからない。仕事帰りにひとりで見てきた店舗も加えれば、優に20店舗を越す量をハシゴしていた。こんなに居ないなんてこと、ある?
「まだ出てない店舗もあるよねきっと。これからかもなぁ」
と弟が言う。
店舗に入っていない弟は見ていないが、どの店舗も籤引きじゃないコラボグッズは置いてあった。ということは、売り切れた方が可能性の方が高いのでは?とわたしは思っていた。
あの店舗を最後にして帰ろう。
そう決めた最後の店舗のレジには店長さんが居た。
期限が近付き安くなったシュークリームを購入しながら、店長さんに声を掛ける。
「無いよなぁとは思うんですけど、カービィの籤って売り切れちゃってますよね??」
その店長さんはとても優しかった。
「そうですねえ。今回のははやかったですねぇ。」
夜中のコンビニ。ほかに客も居なかったからか、色々教えてくれた。
「いやぁ、今回のって30周年でしょう?
だからか、発売日前から問い合わせが凄くて。店によっては販売時間も違うから。
当日朝『ここで4軒目なんです』って言ってる人も居ましたよ。」
「ええ〜、それじゃお店も大変でしたよね? お疲れ様です…!」
つまり。発売から2日経った現在、周辺の何処の店舗もカービィの籤引きは売り切れている。
ニコニコと教えてくれた気さくな店長さんに丁寧にお礼を言い、店を後にした。
弟に今聞いたばかりの話を告げる。
「まじかー。」
弟はシートに沈み込んだ。
こうして、AM2:00、平日深夜に行われたピンクのアイツ大捜索班は解散となった。
「…とまぁ、深夜に弟とドライブしてきた訳ですよー。」
部下たちとの雑談で話をする。お題は『最近体力使ったこと』。
よくよく考えれば、あの日わたしは残業含めて11時間超働いていた。それから深夜2時までドライブ。よく体力がもったものだ。
まぁたまにはこんな日も悪くない。
結果は残念ではあったが、弟とは仲が良いし、BGMはわたしの好きな曲たちだったしで楽しい時間だった。
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