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365択のうちから

大学時代、同じ研究室で学んでいた友人が居る。
いつもニコニコしていてのんびりとした気風の『森のくまさん』のような人だった。

卒業後はSNSの相互フォローをしつつ数年に一度くらい連絡を取る程度だったのだが、最近似た趣味を持ってることが発覚した。その関係で去年あたりから連絡を取る頻度が少しだけ増えたりしている。

因みに、部下萌えを延々と聞いてくれる親友も大学で出会ったひとりだ。
わたしの友人たちはユニークかつ優しい人が多い。大変嬉しいことだ。



ある日の仕事が終わった後、わたしのスマホはその『森のくまさん』みたいな友人 (以降、くまさんと呼ぶ) からのメッセージを着信していた。
曰く、

「ねこのちゃん、誕生日おめでとう!」

とのことだ。可愛い絵文字も添えてくれている。嬉しい。

卒業後にくまさんから誕生日メッセージが届いたことはなかった。
最近何かと連絡を取る頻度が増えたのと、タイミングが合ったから送ってくれたのだろう。
社会人あるあるである。


嬉しかったが、同時にわたしは戸惑った。

何故ならば、その日はわたしの誕生日ではなかったからだ。

季節は大体合っていた。非常に惜しい。しかしわたしの誕生日はあと1ヶ月以上先である。

そして、その日はわたしの誕生日ではなかったが、奇しくもわたしの父の誕生日であった。

何が起きてるのかわからず混乱する。
間違えるにしても、彼は何故正当以外の365択の内からジャストでわたしの身内の誕生日を選び出したのか。
くまさんに身内の誕生日の話などしたことはない。というか、そもそも友人たちに身内の誕生日の話などしない。

こんな奇跡ミラクルが起こるから、人生は面白い。


わたしは思案した。どうしたら優しい気風の友人を傷付けずにこの奇跡を伝えられるだろうか。
思案した末、こう返信した。

「ありがとう! 今日はわたしの父の誕生日です! 本人に伝えておくね♪」

思案したのに直球ストレートしか選択出来なかった。
もっとウィットに富んだ人だったら、素敵な返答が出来たのかも知れない。少し悔しい。


翌日くまさんから返信が来た。連絡先にその日で登録をしていた、とのことだ。
共通の友人の誕生日がその一ヶ月前なので、恐らくそれと混ざったのだと思う。
「でも全く見当違いじゃなくて良かった! お父様によろしくね!」と言うくまさん。良い人過ぎる。


因みに、両親にこの話をしたら笑っていた。

わたしの友人よ、わたしの父に最高の笑い話をプレゼントしてくれて本当にありがとう。

優しく面白い君には今なら宝くじか何かが当たる気がする。
わたしは優しい友人の幸福を心から祈った。

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