ダントン 1792年9月2日

1792年9月2日、ヴェルダン包囲の報を受け動揺するパリでダントンが行った演説です。いわゆる九月虐殺の引き金となったことでも知られています。底本には Discours civiques de Danton, éd. par H. Fleischmann, Eugène Fasquelle, 1920 を用いました。
(加藤広和)


 諸君、自由人民の宰相として、祖国が今にも救われようとしていると宣言するのは喜ばしいことである。全人民がうごめき、どよめき、戦いに焦がれている。
 ヴェルダンがいまだ敵の手に落ちてはいないことは諸君も分かっていよう。最初に降伏など唆したものは血祭りにあげると守備隊が約束していることも知っていよう。
 ただちに人民の一群が前線へと駆けつけ、他の一群は要塞を切り崩し、そして第三の者たちは槍を手に我らが村々を防衛することになる。パリはこの偉大な尽力を支えるのだ。自治政府委員は市民たちに、祖国の防衛のために武器を持ち、進軍するよう厳に布告する。首都がフランス全土のために尽くしたと宣言できるのは、諸君、まさにこの時なのだ。その時こそ、国民議会が真の戦争委員会と化す時である。諸君らには、この危急の時にあって我々の力となる委員を任命し、もって我々が人民の崇高なる活躍を導くことに協力してほしい。我々は、身をもって仕えることを拒否し、武装を放棄するものは誰であれ死をもって罰されることを要求する。
 我々はまた、市民に対して通達を下し、その活動を導くことを要求する。我々は、諸君が下した布告が下知されるべく、あらゆる部署に使者が送られることを要求する。これから鳴らされる鐘は危機を知らせるものではない。祖国の敵に対する突撃の鐘である。勝利のためには豪胆が、さらなる豪胆が、常なる豪胆が必要なのだ。すればフランスは救われよう。

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