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『ぼくたちの哲学教室』【言葉を手繰り寄せるために】

『ぼくたちの哲学教室』を見に行く。

ドキュメンタリー映画で、哲学対話をしている北アイルランドの男子小学校が舞台だ。
かつての宗教対立の痕が、生々しく残る地域であり、映像にも頻繁に登場する。

歴史的背景に詳しくなくとも、その深刻さ、悲惨さが伝わってくる。
撮影中にも、校門に爆発物が置かれたり、親の教えが「やられたらやり返せ」であったり、今もなおその影響は続いている。

プレスリー好きでユーモアに溢れる校長が本作の中心人物であり、哲学教室のジェネレーターである。
哲学対話の手法や理念を映像から垣間見ることができるが、本作で一番心に残ったのは先生たちの姿勢である。
指導というより、子どもたちと徹底して対話を通して見出していく、その姿勢に、今の自分は反省を促された。
どこか強圧的に済ませている自分がいなかったか。その子のことを見ていたか。

“子どもに向かう人間性”は、日本の教育関係者必見だ。


タイトルは作中の1シーン、「不安」とは?を子どもたちが語り合う場面から。
不安を自分の言葉で次々と言い直していく様に、言葉を自分のものにしようとする瞬間を見た。
誰かの言葉を半端に使ってその場しのぎをするのでなく、確かな自分と目の前の貴方を繋ぐために。
自分の語彙で言い換えていこう。

夏休み初日、いい刺激をもらった。
この夏も知見を広げ、深めたい。

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