Hey

まだ肌寒い春の瞳を、ごまかさないまま見つめていく。乗せてゆく。振り返らずに。欲望の光が苦いということ、誰にも教わらずに知った。純粋な糖分はねちっこくて、素直じゃないから、やっと好きになれる。聡明さなんて厄介だ。聡明なふりをしているだけが愛情だ。いじわるで、皮肉じゃなくちゃ。誰の心も現れないなら、皮膚を隔てた手前の空間でヘンテコを練るしかない。それ以外を見るとうらめしさで吐き気がする。うらやましさではなく。踏みつけるものを思い出すから脳みそが焼き切れる。でも踏みつけたものを思い出さなきゃ感情が逃げていく。容器になったら嫌われてしまうのが、結局いやで、どうしてと聞いたって、好きだからとしか答えられない。足場のぐらつきに目を瞑らなくちゃ溺れる。どうしてあなたの心が見たくなったんだろう。どうしてあなたのために容器で居られなくなっちゃったんだろう。プラスチックを毛嫌いしてまとめられる。その軽さに身を委ねたらどんなに楽ちんだろう。いつまで踏みつければいい。遠い昔の悲鳴が小さくなっても、ずっと耳鳴り。雑踏。木々のゆらめき。鳥のお喋り。配達のバイク。まばたき。冷蔵庫。声を出すのさえ億劫だ。同じ悲鳴を出して新鮮に肌に触れさせなければいけないような気分になるから。バターで柔らかいクッキー生地をこねて喉に詰めこむ。喉は役割を果たし、私の腹を満たす。石を詰められた狼もこんな気分だったのかな。重い身体。足取りが遅くなるほど、魂は独立し、魂が空想で得た身体は軽く飛び跳ねてついに見えないところまで進む。落っこちてしまうのだろうか。私は瞼を閉じて、空想の魂を取り戻そうとする。あまりに簡単だから、瞼の隙間から涙を零した。ありきたりに、愛されないということを証明した何度目か。

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