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夕暮れと仮面の街

久し振りに歩く商店街も
そこまでの街並みも
前に来た時と比べてシャッターが増えている。
一度も入ったことはないお店
なんの権利もないのは当たり前に分かっている。
ただの傲慢な感傷なんだけど、それでも、
気になることに変わりはないのだ。
そして誰が住むか分からない戸建てマンションが
また今日も建っていき
資本の轍を残しながら、街を形作っていく。

そんな繰り返しに寂しさを感じること自体が贅沢であるのかもしれない。
僕の故郷はとても、そうとても田舎で。コンビニが町に一つあるのが重宝しているような、そんな田舎だった。そこでは繰り返しすらなく、動きを止めた街はそのままの姿で寂れていく。

仕事にかこつけて、何年も故郷には帰っていない。人間関係から逃げている部分も大きいと思う。学生時代、母校の近郊でうなりをあげ、産業の象徴として特有の悪臭と煙をあげていた製紙工場は停止して久しい。
恩師はもう退官していない。下らない時間を過ごした下宿も少し前に廃業した。Googleマップで確認しても、広い駐車場になっていた。少し前に、近くまで高速道路が延びたらしい。そんな街に。自然に還りゆくそんな街に。だからこそかもしれない。

そういったことに憐憫は感じない。街も、記憶も、どんどん薄れて忘れていく。そんなもんだし、そうやって僕も忘れ去られていくだろう。そうありたい。
最初にそう思ってから、そろそろ15年。その感覚はあまり変わっていない。その感覚だけは、大事にしていきたい。

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