キングオブコント2021 出場記

この記事は「GUTアドベントカレンダー2021」における12月16日分の記事です。

こんにちは、かてごりです。

今夏、キングオブコントというお笑いの大会に出場したので、その参加記を記します。

キングオブコントとは、「M-1グランプリ」(朝日放送テレビ制作、テレビ朝日系列)や「R-1ぐらんぷり」(関西テレビ・フジテレビ共同制作、フジテレビ系列)および、過去にコンテストとして実施されていた「THE MANZAI」(フジテレビ制作)と同様、決勝戦が全国放送されるお笑い王者決定戦で、「コント日本一」を決める大会である。

(Wikipedia より引用)

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参加のきっかけ

ある日、10年来の友人から、ことの嚆矢となる一件のメッセージが届きました。

「誕生日、いつ?」

非常に端的なメッセージです。僕は「ああ、誕生日プレゼントでも貰えるのかな」と淡い期待を胸に、自分の誕生日に関する情報を添え、返信を済ませました。

それから数か月後、実家へ顔を出すついでに、その友人と昼食を共にすることとなりました。昼食は勿論二郎系ラーメンです。友人が「オレもこの道に入って10年近くなるけどよォ(=二郎系を食べ始めてから10年ほどになる)」と熱弁していたことを記憶しています。気持ち悪すぎる。

昼食であるラーメンを啜る最中、ふと以前送ってきたメッセージの真意が気になった僕は「そういえば前、誕生日を聞いてきたけど、あれは何?」と軽い気持ちで質問しました。

すると、友人はカンマ何秒かの沈黙の後「ああ、キングオブコントの申し込みに必要だったから」と、呟いたのです。コンビ名を勝手に決め、既に申し込みを済ませてしまったらしい。

ぼく「マジ?」
友「マジ」
ぼく「本気で言ってる?」
友「本気で言ってる。」
ぼく「なんで申し込んだの?」
友「よく覚えてない。気づいたら申し込んでた。」
ぼく「夏休み、大学院入試があるんだけど。」
友「なんとかしてくれ。」
ぼく「(ウェブサイトを確認しながら)キングオブコントの一回戦、期末試験の2日前だ。」
友「なんとかしてくれ。」

僕が何と言おうと「なんとかしてくれ。」の一点張りで押し通すつもりですね。状況を上手く呑み込めぬまま相手の""覚悟""に圧され、僕はキングオブコントへの参加を心に決めたのでした。あまりの衝撃に当時の記憶が曖昧なのですが、その時啜っていた二郎系ラーメンの味を感じなかったことと、吹っ切れた僕が「やるなら本気でやるつもりだから、妥協するなよ」と、カッコいいセリフを吐いたことだけは覚えています。

ちなみに、1回戦を突破した場合、彼は成績の都合で大学を中退する可能性が高いらしい。オモシレー男。

準備期間~本番直前

暫くして、友人から本番用のネタが送られてきました。ネタの概要は「サラリーマンが釣りをしていたら、カールじいさんの元ネタの人が釣れてしまう」というものでした。完全に異常者の発想から生まれた産物ですが、面白いのでヨシ。

ネタが送られてきてから数日間、学校までの移動時間等を利用してネタをなるべく暗記しました。真面目過ぎる。

本番二日前、京都に住んでいる友人が東京までやってきました。本番が近づいてきたことを自覚させられ、この辺りから緊張感が高まってきたことを記憶しています。友人が来てすぐ、会場の下見も兼ねてつるとんたん(かてごりの好物)を食しに行きました。こいつら麺類ばっか食べてんな。

麺を食した後は、勿論ネタの改善に取り組みます。主な改善内容は「観客や作家に伝わらなさそうなネタ・語彙を、伝わりそうなものに変更していくこと」と「細かいウケのポイントを序盤から挟んでいくこと(序盤で笑える雰囲気を作っておくと、中盤~終盤での盛り上がりポイントでよりウケる可能性がある)」でした。友人はかなり知識が偏っている人間なので、常識的な観点から僕がネタをチェックし、相談のうえで書き換えました。

ネタの改善が済んだ後は、近くの公園でピザを食いつつネタ合わせ。公園を巡回する警備員に怪訝な目で見られたのが癪だったので、早稲田大学野球部員並みのデカい声で挨拶して牽制しておきました。元気が一番。斎藤佑樹もニッコリ。

飯を食い、ネタ合わせを済ませた後、近くのドンキまでネタ用の小道具を買いに行きました。ドンキに到着するとセグウェイが売っており、数分間本気で購入しようかと検討しました。無免ですが。この頃には午前3時を過ぎ、精神的にも体力的にも限界が近づいていたため、小道具購入後には帰宅し、即就寝。

本番1日前、ぼくはバイトがあったことは覚えているものの、他に何をしていたのかよく覚えていません。その夜、友人と2人でネタ合わせをし、相談の結果、ぼくがボケを、友人がツッコミを担当することとなりました(このときまでは、両者がボケとツッコミの両方をできるようにしていた)。

また、ネタ合わせ終了後、緊張を紛らわすためにYoutubeでニューヨークのコントと山口むつおの動画を視聴しました。

これらの動画を、ぼくは抗うつ剤として利用しています。ありがとう、ニューヨークさん、山口むつおさん。

そして本番当日、僕と友人は早めに会場へ到着し、その後暫くして待機室に通されました。本番に向けた準備を進めつつ、内心、ハンター試験の「新人潰しのトンパ」のような人間にちょっかいをかけられるのではないかとビクビクしていましたが、勿論そんなハプニングが起きることはなく、無事に自分たちの出番を迎えることになったのです。


舞台上での話~終了直後

キングオブコントでは出場チームが各グループに振り分けられます。各グループはそれぞれ6組ほどのコンビから構成されており、僕たちが振り分けられたグループも、例に漏れず6組のコンビから成っていました。また、6組中1組が2回戦へ進むこととなります。

その6組のコンビのうち、僕たちの出番は5番目でした。1~4番目の方々がネタを披露している最中には緊張感がピークに達し、普段は温厚な友人も少しピリピリしていました。
(普段友人は、僕が面白くないことを言ったときと競馬で負けたとき以外機嫌が悪くならない)

そして本番を迎え、舞台へ上がります。序盤の「ウケればラッキー」と思いつつ挟んだポイントと、一番ウケてほしいポイントで笑いをとれたので、概ね満足のいく結果となりました。また、ぼくと友人がともにミスなく出番を終えられたことも収穫だったかと思います。

舞台から降りるや否や、僕は友人に対して「かなり上手くいったし、もしかすると一回戦を突破してしまうんじゃないか?」と声をかけました。友人は「絶対あり得ない」「そんなわけがない」と返してきましたが、後から聞いてみたところ、内心本当に突破してしてしまったのではないかと怯えていたようです。一回戦を突破すると大学中退が濃厚になってくる友人からすると「敗戦したはずだ」と思い込む方が精神的に安定したのでしょう。

会場を出た後、天を仰ぐと、月が煌々と輝いていました。客観的に見れば、霞がかった、それほど魅力的な月ではなかったかもしれません。しかし、闘いを終えた士が己の無事を体全体で感じつつ眺める月は、楊貴妃の横顔にも、土屋太鳳の額にも劣らぬ妖艶さを備えていたのです。

僕はなんとも言えぬ充足感に身を任せ、新宿にある小汚い銭湯で一息つくことにしました。人生で数十番目にいい湯でした。

結果と感想

暫くして結果を確認すると「一回戦突破コンビリスト」の中に、僕たちのコンビ名はありませんでした。正直かなり悔しかったです。

ですが、短い間とはいえ友人と2人でどうすれば笑いをとれるかを考え、その成果を舞台上で発揮できたことにより、僕はかなりの精神的充足感を覚えていました。

味をしめた結果……

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