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映画「僕の好きな女の子」はめちゃくちゃキモい映画だった(褒めてる) ※ネタバレあり感想

◆はじめに

 又吉直樹原作×「あの日々の話」玉田真也監督×渡辺大知主演で見ないことがあるか?というわけで「僕の好きな女の子」を早速鑑賞。
 予告動画や雰囲気的に「愛がなんだ」のようなエモ散らかす映画だと思っていたら、思いもよらずめちゃくちゃ良い意味でめちゃくちゃキモい映画だったので、感想を早速書きますね。いやー気持ち悪かったー!最高だよ!

一言でいうと

 非モテ男がファムファタールに片思いし続ける青春恋愛モノ、ではない。

◆あらすじ

 内向的な男子・加藤(渡辺大知)は、親友・美帆(奈緒)に片思いし続けている。自由奔放な美帆に振り回されながらも、彼女と過ごす時間に幸せを噛み締める加藤は、この関係が崩れるくらいなら、自分の気持ちは押し殺してでも彼女と仲良く居続けたいと思うのだったが・・・・・・。

◆感想(ネタバレあり)

・主人公・加藤の淡い片思いに若い頃の自分を重ねる前半
 加藤(渡辺大知)がね、本当にナヨナヨの内向ボーイなんですよ。美帆(奈緒)のためを思って買ったはずのジュースは渡せないし、美帆の個展の差し入れとして買ったケーキも渡せないようなナヨナヨっぷり。
 ほんでめちゃくちゃ受動的。美帆からの散歩や飲み、個展の誘いに応じてワクワクするだけで、自ら何かを誘ったり、アクションを起こすことはできない消極っぷり。おそらく自分に自信がないからだろうな。
 ただ彼に出来るのは、美帆に「意中の男とはどうなんだ?」と聞き、彼女から「うまくいっていない」だとか「振られた」だとかの言葉を聞くことで、ひとまずの安心を得ることだ。
 彼はきっとその言葉を聞いて、「ああ、この関係性をまだ続けられる」そして無意識的に「自分は傷つかずにいられる」と思ってるんだろう。

 あー!高校生の頃の私かよ!メール返信来ると喜んでたし、一緒に遊んだら楽しくてキュンキュンしてたけど、フラれるの怖くて告白できなかった私かよ!あの日々が思い出されて恥ずかしいわ!

・主人公・加藤の淡い片思いではないのでは?と思い始める後半
 そんなモジモジ展開が終始続くも、とある出来事がきっかけで加藤は美帆を散歩に誘い、いざ勇気を振り絞って告白しようとすることに。しかしその瞬間に絶望的な言葉が美帆の口から発せられてしまう。 
 「私、好きな人ができた。付き合ってるの。」

 奈落の底ワードキターーーーーーーーーー
 高校時代4年片思いし続けてた人に彼女ができた事実を友人経由で聞いた時と同じ気分だよ!!!スンスン・・・・・・

 でも加藤は悲しい気持ちを抑えて「よかったな、彼氏に会ってみたいな」っていうんだよね。加藤よ・・・・・・。
 すると美帆も、「彼氏が加藤に会いたがっている」というのだ。そしてその足で井の頭公園で彼氏(仲野太賀)と落ち合い、3人で遊ぶ。

 んんんんんん???????

 ここで、実は冒頭から少しずつ感じていた違和感が加速する。

 ちょっと話が出来すぎてないか?

 付き合って間もない彼氏が加藤に会いたがるってどういうことやねん?

 平日昼間にスーツ着た彼氏が井の頭公園に来るのおかしくない?

 彼氏が、美帆に「加藤さんはお前のこと好きだと思う、本当に気づかなかった?」(つまり「彼をそんなに傷つけてやるなよ・・・」の意味が込められている)と静かに伝えた後、美帆が大泣きするとか、ありえる?

 ちょっと都合が良すぎるナァって思いながら見ていたら・・・・・・


・ラストのオチで、この映画は傑作に昇華した
 前述の通り違和感ガーって思ってたらラストで衝撃の事実が浮き彫りに。

 井の頭公園で、加藤はアコギ片手に歌を歌うパンクロッカーに話しかける。
加藤「いつも弾いてますね。応援してます!」
パンクロッカー「あなたもよくいらっしゃいますね。1人で。何か考えごとされてるんですか?」
加藤「まあ・・・・・・いろいろと。」
そこに現れる加藤の妻(朝倉あき)と娘!
妻「何よ、いろいろって!パパ気持ち悪いよね〜」

 仲良く公園を後にする3人。
というシーンでこの映画は幕を閉じるのだ。

 なんと、この話全部、加藤が井の頭公園で1人で考え事をしていた時の「脳内の出来事」だったんです。少なくとも私はそう読み解いた。
(ちなみに原作だと加藤の書く脚本だったというオチらしい)

 と、なると、この解像度がめちゃくちゃ高い失恋、全部、加藤の想像なんですよ。最高に面白くない???

 思わせぶりの美帆に片思いするのも
 美帆の個展行ったのに差し入れのケーキ渡せないのも
 その様子を見ている女の友人(徳永えり)がフフフってニヤニヤするのも
 告れないことを友人(萩原みのり)に「弱い」って指摘されるのも
 美帆に彼氏ができてその彼氏と3人でご飯食べるのも
 彼氏に加藤の想いを気付けなかったことを指摘され美帆が大泣きするのも

 全部、彼の脳内描写!!!!

 もちろん彼に過去そういう経験があって、それを今の時間軸に落とし込んで、思い出してはエモくなっているという考え方もできるんだけど、どう考えても美帆は非モテ男にとって理想的すぎるし、ストーリーの所々で違和感を持つ箇所があるから、これは彼の妄想だと思うんだ。

 ッチャクチャ主人公変態じゃん!!!!!最高!!!!!!
 ていうか又吉変態じゃん!!!!!最高!!!!!

 そういえば、オフィシャルのキャッチコピー。

友達以上、恋人未満。
この関係が壊れてしまうなら、今のままの関係で十分幸せだ。
きっと僕が好きな人は永遠に僕のことを好きにならないから。 

 これって、ダブルミーニングにもできるよね。彼女に好いてもらえない加藤という意味と、脳内妄想だから好いてもらえないという意味。

 うーん、震える。誤った解釈だとしても、私はこの話を彼の脳内妄想と捉えて最高のド変態映画として高く評価したい。

◆ちなみに (ストーリーの美しさとキャストについて)

 前述の通り、個人的には本作のメタ的な部分がこの映画の一番面白いところだと思っている。が、登場人物たちの心の機微の描写や会話における言葉のチョイスがかなり繊細で美しいので、単純に片思いのエモい映画として見ても、心に刺さり涙する人は多いと思う。

 そして、その美しさを支えるのが、新進気鋭の若手俳優たち。今にこのキャスト陣の共演は幻になるよ。

 「勝手にふるえてろ」で「ニ」を好演した渡辺大知(すごい好き)、「南瓜とマヨネーズ」の好演筆頭に同世代で演技力は群を抜いてるであろう仲野太賀(ずっと好き)、「お嬢ちゃん」の主役は彼女以外ありえなかった萩原みのり(モキュモキュしたい!!)、「疑惑とダンス」が記憶に新しい徳永えり、「四月の永い夢」で圧倒的透明感を誇った朝倉あき、「エンボク」やら「ヘドローバ」で体張ったゆんゆんこと秋乃ゆに、あとね、玉田監督の前作「あの日々の話」に出てきてた俳優陣(山科さん、野田さん、前原さん、長井短さん!)

 はーーみんな最高すぎた!!若手俳優厨としてはなんたる僥倖!

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 最後にモキュモキュラブリーなみのりちゃんの画像を貼り付けておしまいにする!

 では!みなさん「僕の好きな女の子」を見て、きも〜いって思うなり涙するなりの映画体験に没入してみてくださいね!

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