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創作大賞2024・漫画原作部門・俺はモブキャラで終わらない(第一話)

あらすじ

有名なONLINEゲームの街Luckycityに住む、道具屋のジムは退屈な毎日に飽き飽きしていた。

そんなある日、ジムの幼馴染で警察官のチェイスが店の中へ入ってくると、ジムに詰め寄る。

「ジム、お前にいい知らせがある。聞きたいか?」

顔をニヤニヤさせながらそう聞いてくる。

「その話ってどんな話なんだ?」

「ワープゲートって知ってるか?」
「ワープゲートって別の世界へ行ける特殊な空間だろ?」

「それがこの街のどこかに発生するんじゃないかって噂なんだよ」

飲んでいたコーヒーカップを落とす。ジムは
思った。これは神様が俺にくれた最後のチャンスだと

最初にして最後のチャンスだと、チェイスは沈黙しているジムを見つめていた。



有名オンラインゲームの街、ラッキーシティに住むモブキャラのジムは小さな道具屋を営むが、同じ毎日に退屈していた。

そんなある日、同じモブキャラで幼馴染の警察官のチェイスが目の色を変えて、店に入ってくる。「ジム、いい話を聞いたぞ。」カウンターに前のめりになりながら言うが

「おいチェイス、ドアを開けたら閉めろ。」「へいへい、わかりましたよ。」嫌嫌開いたドアを閉めると、カウンターの近くの椅子に座ると、

ジムがコーヒーの入ったカップをチェイスに渡すと、一口で水を飲み干し、口を拭う。

「ジム、お前、今の生活に満足してるか?」飲んでいたコーヒーを勢いよく吹き出し、慌てふためく。わかりやすい行動に、腹を抱えて笑うチェイス

「そうか、満足してないのか?じゃあいいこと教えてやろうか?」

床にぶちまけた水をモップで拭いていた手が止まりモップを投げ捨て、目と鼻の先まで顔を近づけたジムは。

「良い事?なんだ?教えろよ?ジム」


両手で左右の肩を掴み、激しく揺さぶる。「わかった、わかったから、その手を離せって」ジムはその手を離すと、チェイスは話を始める。「最近、ある噂を聞いたんだ」


「ある噂?何だよ、勿体ぶらずに言えよ」「ゲームミュージアムって知っているか?」


「あぁ確か、この世界のバランスを保つための3種の神器、ゴールドコントローラー・ゴールドカセット・ゴールドファミコだっけ?それがどうした。」

「何者かに盗まれたんだよ、3種の神器が」 

数秒間時が止まるが、ゆっくりと口を開く「それって最近の話なのか?」「あぁ、俺が知ったのは2時間前だけど、この噂は一週間前から有名になってる、あともう一つ噂があるけど、聞きたいか?」

ニヤニヤと笑うチェイスにジムは気づいた。本当に言いたいのは、本当に話したいのは次の話だと。

「別に言いけど、良い話なんだよなぁ」信じられないと言わんばかりの顔で、チェイスを睨むが、そんなことは気にせず、さっきの話を続けるチェイス。


「3種の神器が盗まれたせいで、この世界のバランスが崩れたと同時に、他の世界へ移動できるワープゲートが出現している。どうだ?興味あるだろ」


「その話、詳しく教えろ。」ジムはチェイスからワープゲートについて根掘り葉掘り訊く。ワープゲートの存在を知ったのは3種の神器から数時間後に、様々な世界でワープゲートが出現する。  


最近、ラッキーシティにもワープゲートが現れ少なくとも、数人が行方不明になっている。

それについて、ラッキーシティの市長アン・フォーチュンは3種の神器が盗まれたことも、発生したワープゲートもデマだと、国民に向かってテレビ演説するが、誰一人その言葉に耳を貸すものはいなかった。

チェイスから話を聞き終わると、このチャンスを逃したら一生この場所で終わる、そんなことは考えられない、ジムはチェイスに「なぁチェイス、ワープゲートが出やすい場所を知っているか?」

「俺が知ってると思うか?だけど、1人だけ知っていそうな奴はいる」

「誰だそいつは、チェイス教えろ」

ジムは軽く両手で首を持って、前後に揺さぶる。「手を離せ、俺を殺す気かぁ」

「悪い、悪い、で?そいつは誰なんだ」

ゲホゲホと軽い咳をして「そいつはホームレスの情報屋で名前はカイ」頭をボリボリ掻きながら、「その、カイって奴はどこにいるんだ?」

語気を強めでチェイスに言うジム。「ここ最近は姿を見てないんだ。行きつけのバーと、よく話をしていた公園にもいなかった、もしかして、ワープゲートに」

ガチャと後ろの扉が勢いよく開くと、ヨタヨタと数歩歩いて倒れる、ジムとチェイスは近くと「嘘だろ、カイ、カイどうした?」倒れているカイに声をかけるチェイス、

すぐにドアを閉めるジム「チェイス、そいつがカイなのか?」「あぁそうだ、それより顔の傷が酷い、早く病気に連れて行かないと」

「駄目だ、病院だけは駄目だ」チェイスの腕を掴み、病院へ行くのを拒否するカイ「どうしてだ?カイ」ドアの方を見て、チェイスを見ると「俺を暫く匿ってくれないか?」

突然の申し出に困惑するが、ことわる理由がなかった。「その代わりに」ドンドンと扉を叩く。チェイスは急いでカイを担いで2階へと上がっていく、それを確認するとドアを開けるジム

ゾロゾロと店の中へ入ってくる数人の黒ずくめの男達、1人だけ長身の男がチェイスを見て、サングラスをはずす「兄ちゃん、ホームレスの格好した男がここら付近に逃げ込んだ、知っているなら教えてくれないか?」

「そんな奴は知らない、帰ってくれ」店から出ていくよう促すと、「そうか、わかった」長身の男は無言で、ジムの腹にパンチを当てる。

「あっ、あ…………」腹を抱えて床に両膝をつくジムに嫌味ったらしく訊く長身の男「どうだ?思い出したか?」「すみません、そんな男は知りません、他を当たってください。」

「どうします?」長身の男の部下が言うと、周りを確認し、「おい、この家を全部調べろ。」ジムは長身の男に「おい、あの男は向こうに行ったぞ。」ジムは指をさすが、長身の男はジムの腹を思いっきり蹴る。「そこで大人しくしてろ。調べろ。」

男の命令を受け、家の隅々まで調べ始める。道具を置いてある棚や、部屋の奥を調べる男達1人の男が二階へ上がっていく。数分後降りてくると、長身の男に耳打ちすると、「お前ら、他を調べるぞ」黒ずくめの男達は急いで、外へ出ていく。

腹を抱えて起き上がるジム、「くそ、アイツラ」出ていったドアを恨めしそうに見るジム。「おいジム、大丈夫かぁ?」チェイスが階段から降りてくると驚いた顔をする、「なっ、なんだこれは」

床が店の道具屋で埋め尽くされて、足の踏み場もなかった。さっきの黒ずくめの男達が散らかしていたとチェイスに説明すると納得すると

「それよりチェイス、カイは大丈夫か?」「あぁ、カイは大丈夫だ、今ゆっくりしてるよそれよりチェイス、お前どこに隠れていたんだ?さっき黒ずくめの1人が、二階へいったはずだが」

「あぁ、屋根裏部屋の天井に隠れていたんだよ」「屋根裏の天井?そんな場所あったか、まぁ、それは言いとして、カイは?」

「カイは今、テレビを見ている。あと話がしたいらしいから、来てくれってさぁ」

「カイが?何の話だろうか」

ジムは急いで2階に向かう。2階へ上がり真っ直ぐ廊下を進んで、奥の部屋のドアを前に立つと

「カイ、部屋に入るぞ」

ドアを開け部屋に入ると、電気もつけずTVの音だげが聞こえる。電気をつけると壁によりかかっていたカイが、こっちを見る。

「カイ、大丈夫か。」

「大丈夫かって?この顔を見て、大丈夫かって思えるか?」「そうだな……大丈夫じゃないなぁ」

腫れた顔に水で濡らしたタオルで押さえると、苦痛の顔をするカイ。「あの、カイさん、言いにくいことを訊きますけど、さっきの黒ずくめの男達は、何故?あなたを追いかけていたのか、詳しく教えてくれませんか?カイさん」

ジムは優しく言うとカイは一瞬黙るか、言葉を選びながら話し出すカイ。

「俺はホームレスの情報屋と言っていたが、本当は違うんだ。俺は3種の神器を守るエージェントをしている。それと、俺を奴ら追いかけてくる理由はこれだよ。」

カイはポケットから小型の機器を取り出して、ジムとチェイスに見せる。

「これはなんだ?」「何かの機器というのはわかるが」ジムとチェイスは小型の機器を調べる。「その小型機器は、ワープゲートの発生場所と発生時間を教えてくれる、さっきの黒ずくめの奴らから奪ってきた。」

その言葉、その小型機器に目を輝かせるジム

ジムはカイに詰め寄ると、「カイ、その機器を俺に譲ってくれ。」

その言葉に、カイは機器をポケットに戻すと、
ぶっきらぼうに「それは出来ない。ただ一つ聞いてもいいか?」

ジムは頷くと、「どうして、この機器が欲しいだ?」とカイは訊くと、ジムは真剣な態度で何度もカイに 
プレゼンテーションするが、駄目の一点張りにジムは

「俺はラッキーシティで小さな道具屋を営んでいたが、ある日俺は思った、このまま退屈な毎日でいいのかと?そんな時にチェイスが俺に教えてくれたんだ。他の世界へ行けるワープゲートの存在を」
熱く語るジムをじっと見るカイ。

「なるほど……言いたいことはわかった。道具屋をやめたいと、そしてワープゲートを使って、他の世界へ行くと……で?それで何をするんだ?目的はあるのか?」

何がしたい?……目的は?……

カイの質問に言葉が詰まる、確かにワープゲートを
使って他の世界へ行ったとしても、目的がなければ
意味がない、1番大切な部分が抜けていたことに気付く。

何も言えないジムを見て、深く溜息をつくと、
チェイスの方を向くと「チェイス、お前もジムと同じで、ワープゲートを使って他の世界へ行きたいのか?警察官を辞めたいのか?なぁチェイス?」

チェイスも黙っていたが口を開く「そうだなぁ、俺もジムと同じで、退屈な毎日に飽き飽きしていたんだ。悪いか?」

開き直るチェイスに、半ば呆れるカイは
頭を掻きながら考えていた。

「2人はとんだ大馬鹿野郎だぁ、そんなにお前ら
別の世界に行きたいのか、わかった、わかった、ほらよ」

ジムに小型の機器を放り投げると
慌てて落とさないようにキャッチ
「え?いいのか?大切な物なんだろ?」
ジムとチェイスは心配そうな顔をする

カイは指を指しながら「お前ら2人はどうせ、俺が渡さなかったら、勝手にワープゲート探して、他の世界へ行くつもりだろ?」

ジムとチェイスは頷く

「それで死なれても困るんでね、だから渡しとく、
その代わりに一つ、俺と約束してくれないか?」

ジムとチェイスは互いに顔をみて、カイを見る。
「なんだ、約束って?」
「俺の代わりに、ジムとチェイスで3種の神器を奪い返してくれないか?」

俺達が3種の神器を奪い返す?何を言ってんだ?
そんな顔をするジムとチェイス。

「おいカイ、3種の神器を奪い返す?俺達が?
何を言ってんだよ。」
ジムの肩にそっと手を乗せるカイ、

「俺は本気だそ、それとも怖気づいたか?まぁ無理なら、この話はなしで」

ジムを煽るカイ、隣で見ていたチェイスは
カイお得意の相手を煽るテクニックに、

「わかった。俺とチェイスで三種の神器を奪い返してくる。いいよな?チェイス」

横にいるチェイスを見る、観念したような顔で
「あぁわかったよ、やればいいんだろ、やれば」
投げやりに言うが、まだ納得はしていなかった。

それとは反対に、ジムは小型の機器を真剣な顔で
いじっていると、ピピと音をたて表示される。
ワープゲートの発生場所と日時が表示されると
ジムは子どもの様に無邪気に喜んで、小型の機器を
2人に見せる。

「おい見ろよ。チェイス、カイ、」
ジムに呼ばれると、チェイスにカイは小型の機器の画面を覗き込むと、画面にラッキーシティの地図が表示され、ワープゲートの発生場所が赤く点滅され
時間も表示される。

「ワープゲートの発生場所は刑務所で、時間はお昼の午前十二時三十五分、曜日は木曜日らしい、チェイス今何曜日?」

チェイスは壁にかかっているカレンダーを見る
「今日は火曜日、あと2日しかない、急いで準備しないと」
カイは頷くと壁により掛かる。
「あぁ、そうだなぁ。できることをしないと」

ジムは浮き浮きしていたが、反対にチェイスは
不安を覚えていた。
確かに、この世界から出たいとは思ってはいたが、
三種の神器を奪い返すとか、刑務所に行くとか、
とにかく不安でしかない。

けど、もう引き返すことはできない。
腹をくくったチェイスの顔は穏やかだった。
その分、強い決意を胸に秘めて、

刑務所に行く前の2日間、ジムは散らかった店を掃除し、バックパックに必要な道具を入れて、入れられなかった道具は全て売り捌いた。

チェイスは勤めていた警察官を退職、身辺整理をして、2日後、ジムの道具屋へやってくる。

カイは道具屋の一室で静養、腫れぼったい顔も回復し、ジムが出す食事もガツガツ食べれるぐらい、体調も回復していた。   

ワープゲート発生日当日、午前十一時、ジムは道具屋のドアを閉めて、シャッターを降ろす。あらかじめ、店の倉庫から出してきたBANを、店の前に停車していると、カイとチェイスはひと足早く乗り込む。

「おいジム、早く行こうぜ」「あぁ、ちょっとまっていてくれ」店の前で立ち尽くす。感慨深い気持ちになりながらも、心は前を向いていた。
「行ってくるぜ」そう言うとBANの方へ走り出す
運転席に乗り込むと「さぁ、行くぞ」シフトレバーをPからDに、アクセルをゆっくり踏み込んでいき
Uターン、歩道を左へ横切ると道路沿いの道へと入っていく。

車が少ない車道を軽快に走行していると、黒い車が後ろをついてくる。「おい、後ろを見ろよ」

カイがそう言うと、ジムはバックミラーを
チラッと見る。「あの車に乗ってる奴らは、この間の奴らか?」

ガムの包装紙を取って、口の中に放り込みクチャクチャと音を立て、風船を作るチェイス。
「どうする?ジム」

ドリンクホルダーに置いてあるペットボトルの水を一口飲むと「ふたりとも、シートベルトしとけよ。」
アクセルをベタ踏み、60・70 ・80・90・スピードメーターの針が上昇、それと同時に後ろの三台の黒い車もスピードをあげ、黒い2台はBANの左右にピッタリと張りつく、もう一台はBANのケツにピッタリと
張りついて離れない。

ゆっくりと左の黒い車のスモークガラスのウィンドウが下がると、銃をつきつけてくる。
黒ずくめの男は「おい、今すぐ車を止めろ」

ジムはハンドルを左に切ってぶつけると、黒い車は
スピンして電柱にぶつかる。「よっしゃ~」

ガッツポーズをするジム、後ろの黒い2台は
ピタリと張り付く。
突き放そうとさらにアクセルをベタ踏み、
100・110・120・そのスピードの勢いで十字路の交差点を左に曲がる、

後ろの黒い車2台も、同じスピードで食らいついてくる。「くそ、何だよこいつら、しつこい」

「おいジム、前を見ろ、前」
助手席のチェイスが指を指している方向には
踏切が見えてくる、カン・カン・カンと甲高い音が
聞こえると同時に、ラッキーシティの住民を乗せた電車が踏切に向かって猛スピードで走行してくる。

「おい、このまま行くと列車に激突するぞ。ジム」
後部座席に座っていたカイが引きつった顔でジムに言うが、そんなのお構いなしに突き進む。

「ふたりとも、しっかり掴まっていろよ」
踏切への距離、1000・900・800・700と距離が短くなっていく。

黒い車の2台は、300付近でBANから離れる。
「おい、ぶつかるぞ」絶叫するチェイス
「よし今だ」ジムはハンドルの真ん中にあるボタン
を押すと、左右から翼が現れ、BANに搭載された小型のジェットエンジンが発動、ゆっくりと空へあがっていき、踏切を通過する電車の上を飛んでいく。

車の中から、空を飛んでいくBANを見つめる赤髪
「おい青髪、逃げられたぞ。」
運転席の赤髪は、助手席で寝ている青髪を叩き起こす。「あぁそうか、仕方ない帰るぞ」
そう言って目を瞑る青髪、車の窓から赤髪の部下が
「赤髪さん、どうしますか?奴らを追いますか?」いや、もういい、戻るぞ」
「わかりました。」

2台はUターンすると反対方向へ走行、暫くして街へ入ると青髪が目を覚ます。
「青髪、アイツラは必ず俺達がいる場所へ必ずやってくる。」
「あいつら来ますか?」
抜けた声で言う赤髪。
「来るさ必ず、むしろ来てくれないとつまらないからなぁ、あぁ早く来てくれないかなぁ」

赤髪が運転する中、赤髪はもう一度目を閉じて仮眠を取る

数分間、空を飛んでいたBANはゆっくりと地面に着陸、翼とジェットエンジンを収納すると再びBANは走行を始める。


「おい、さっきのはなんだ」

「いつから空を飛べるように改造したんだ、答えろ」

ジムは運転しながら、チェイスとカイの質問に答える「改造は一ヶ月前だよ、かなり無理したけどなぁ」

「無理したっていくら金かけたんだよ。」

言いたくない顔をするジム、その顔を見て察するかなりの金額を注ぎ込んだのだろうと

そんなくだらない話をしていたら、目的の場所に到着する。無人工場の空き地にBANを停車する

「カイ、ここでいいのか?」「あぁ、ここでいい。」車から3人が降りる、ジムはドアについている青いボタンを押すと、BANは手に収まるサイズに小さくなると、それをポケットにいれる。

刑務所に入るには正面突破は不可能だったら別のルートで行くしかないそれで、下水道から刑務所に続く道はここしかないらしい。

チェイスは1人で薄暗い無人工場に入り、マンホールの場所を探す。探すこと数分、マンホールらしき場所を見つける「おいあったぞ、こっちに来い」

その声にジムとカイが走ってくる。「なぁ、ほんとに大丈夫なんだよなぁ」ジムが不安そうに言うと「真正面から行くより、安全なのは確かだが保証はできない」「あいつらのことだ、なにかしらしてくるだろう、気をつけろよ」「あぁ、そうだなぁ。よし行こうぜ」

ジムがバールでマンホールを開けると、チェイスが最初に降り、次はカイ、最後にジムがマンホールの蓋を閉めて、ゆっくりと降りる。

「なんだか静かだなぁ」「あぁ、静かすぎる。カイ、刑務所はどっちだぁ。」ジムはカイに聞くと、指を真っ直ぐに指差す。「表示される方向はあっちだ、行くぞ」

カイは先頭を歩き出す、その後ろをジムとチェイスがついて来る。薄暗い照明と迷路のような下水道に、息苦しさを覚えながら刑務所に向かう3人。

一方、赤髪と青髪が乗っている車は、刑務所に到着、ゲートをくぐって駐車場に車を停車し刑務所の中へ入っていくと、赤髪と青髪の部下達が刑務官や囚人をおもちゃにして遊んでいた。

青髪と赤髪が現れると、一斉に整列すると、部下の後ろから赤髪の部下、黄髪と緑髪があわてて「赤髪様、青髪様、お疲れ様です。」

黄髪が後ろに吹っ飛ぶ、隣にいた緑髪がワナワナと震えだす。「おい緑髪」 

赤髪が緑髪のネクタイを掴むと顔を近づけて

「これからここに客が来る、遊んでないで散らかした場所を片付けろ、いいな?それとビールを持ってこい」

緑髪と部下達はすぐに掃除を始める、部下の1人がビール瓶を持ってくると、それを奪い取りラッパ飲みする青髪と青髪。

「なぁ、本当にあいつら来るのか?」
「心配症だなぁお前は、」

ビール瓶を手に持つと、山積みになった刑務官の屍の一番上に座って、紙タバコを取り出すと火をつけて一服する。

「青髪、だとしてもあいつら遅くないか?車で来るならそんなに時間かからないよな?」

赤髪は右手に装着した腕時計を見る。

「赤髪、あいつらは下水道から来るから時間はかかるだろう。それとアイツを放ったからなぁ」

「まさか、アイツって」青髪はビールをグビグビ飲む。 

アイツとは他の世界で偶然手に入れた生物兵器、最初は犬ぐらいのサイズだったが、数週間後には体長数メートルに成長、凶暴性と俊敏性を兼ね備えていて、手が付けられないほどの生物兵器。

「あいつらは死んだな」と青髪はそう感じた「ゴワァァァァァァァァァァァァ」地面の下から恐竜のような声が響き渡る。その咆哮に青髪以外、背筋が凍り動けなくなっていた。

下水道を彷徨うこと15分「おい、ホントにこの道でいいのか?」「大丈夫、こっちであってる、このまま進もう」

小型の機器に表示される地図とにらめっこするカイが「おかしいなぁ、もう出口付近なのに、」「どうしたカイ?何かあったのか?」

後ろから覗き込むジムとチェイス、なにやら赤い点滅がゆっくりと移動していることに、チェイスほ気付く。

「赤い点滅が移動している、どういうことだ?」「嘘だろ?そんなことあんのかよ。」画面を凝視するジムとチェイスの肩を叩くカイ2人は顔を上げると、カイの顔は引きつっていた。

「どうしたカイ?そんな顔して」「前、前を見ろ」カイが指差す方向に目を向けると、柱の影から巨大なワニが姿を現す。

「なんだあれは、おい逃げるぞ」「逃げるってどこだよ」「そんなの俺に聞くな」

ジム・チェイス・カイは来た道を走っていく「おいどうする、」「どうやってコイツを倒す?」「俺にまかせろ、カイとチェイスはどこかに隠れてろ」

1番前を走るジムが言うと「わかった、ジム死ぬなよ」「気を付けて」カイとチェイスは左の細い道に入ると、巨大なワニとジムの追いかけっこが始まる

「さぁ、来いよ」巨大なワニを煽り、十字路に差しかかると、右の通路へ逃げると巨大なワニも追いかけてくる。

「さぁ、こっちに来い。化け物がぁ」奥へ奥へと逃げるが、ついに行き止まりになり、後ろを振り返ると、巨大なワニが口を開けて迫ってくるが、太く巨大なパイプに遮られて動けなくなる。

ジムはギリギリ身体が入れる穴を確保すると、店から持ってきた、威力の低い手榴弾をズボンのポケットから取り出すと、ピンを引き抜き巨大なワニの口の中に投げすぐに穴へ入る。

数秒後。手榴弾が爆爆し、ガスパイプも同時に爆爆するき。巨大なワニはバラバラになり、肉片と血が天井や壁に飛び散る。

穴からゆっくりと顔を出し、周りを見渡すと血がベッタリついた梯子が落ちていた

「やったのか?」穴から出ると身体を起こし、椅子が落ちてる場所まで歩くと、カイとチェイスこちらへ走ってくる。

「おいジム、大丈夫か?」「良かった、死んでなくて」

死んでなくて………?チェイスの頭を軽く小突く、チェイスは頭を両手で押さえる。「イテテテテテ、何すんだよジム」「俺を勝手に殺すな」そんな会話をしている2人をほっておいてカイは梯子を手に取る「おいジム、この梯子はなんだ?」

カイが梯子を立てると、梯子が天井まで伸びるとマンホールの蓋が現れる。

「なるほど、さっき動いていた赤い点滅はこれだったのか。」

小型の機器が現在地を示す、チェイスが原型を留めない肉の塊を見て、梯子に視線を移す。

「ジム、あの巨大なワニをどうやって倒したんだ。」ズボンのポケットから取り出すと、チェイスとカイに見せる。

「手榴弾だよ。1番威力の低いやつだけどなぁ、そんなことより早く行くぞ」

梯子の元へ歩くと、ゆっくりと登りだすジム「おい、何ボケっとしてんだよ、早く行くぞ」ジムに言われると、急いで梯子に近づき登り始める。


数分かけて梯子を登ると、マンホールの蓋が見えてくる。ジムがマンホールの蓋を開け、外に出るとそこは調理場、ゴミ一つ落ちてない隅々まで綺麗になっている。

あまりの静けさに不気味さを感じていたジム、その後ろから登ってきたチェイスとカイは辺りをキョロキョロ。

「ここって、刑務所だよな……」

「あぁ、ここは刑務所で間違いない、だけど誰もいないかよ」

木のカゴに置いてある林檎を手に取ると、丸かじりするチェイス、その行動を注意するカイを無視して1人調理場を出る。

左右を確認し、廊下を歩いていると刑務所の案内図を発見「この先に体育館かぁ」

後ろから2人が歩いてくると、「おいジム、勝手に行くなぁ」チェイスはジムを引き止める。

カイは立ち止まると「この先にワープゲートが発生する場所がある、急ごう時間がない」

小型の機器が示す場所へと足を進める。数分後、体育館の扉の前に到着、ジムとチェイスが2人がかりで扉を開けると、体育館は暗闇と静寂に包まれていた。

ジムとチェイスそしてカイは、一歩、二歩、三歩体育館の中へ入っていくと暗闇から一転、一斉に照明が点灯、数十メートル先に高く積まれた人間が視界に入ると

「なんだあれは……一体どうなってんだ

ジム・チェイス・カイは混乱していると、コツコツと音を立ててこちらへ誰かが歩いてくる。1人ではない、2人、3人、いやそれ以上の足音が聞こえてくる。

「いやいや、君達よく来たね。ようこそ、ボス3人が来ましたよ。」と赤髪が言うと、

「おぉ、アイツを倒して来たとは驚いた。やるねえ、後はカイ、久しぶりだなぁ」

いつの間にか、高く積まれた人間の1番上に胡座をかいて、こちらを凝視する青髪。

「青髪」青髪に向かって叫ぶと、苦虫を噛み潰したような顔をするジム。

「お前かぁ、お前がカイをしつこく追いかけ回してるのは?」

「おいおい、そんな言い方はないだろ?平和に行こうぜ、お三人さん」 


右手で顔を隠しながら笑う青髪。「おい、お前はなんでしつこくカイを追いかける」

チェイスは青髪に質問をすると、面倒臭そうに「あぁ、そいつは我々が奪った三種の神器の一つを隠した。カイどこに隠した?答えろ」

カイは黙り込む。左右にいるジムとチェイスはカイを一瞥して赤髪と青髪を見る。「おい、お前ら」赤髪の一声に後ろからゾロゾロと赤髪と青髪の部下達が現れる。

「ボス、いいですか?」青髪は軽く頷くと、「お前ら、ボスの命令だ、存分に暴れろ」その言葉を皮切りにジム・チェイス、カイに襲いかかる部下達。

「カイ、後ろに下がってろ」ジムの言う事を素直に聞き、邪魔にならないところまで下がっていく

第二話

第三話






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