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書評|ジーン・シャープ『独裁体制から民主主義へ』

ジーン・シャープの『独裁体制から民主主義へ』はとても尊い本だと思う。自らアインシュタイン研究所して民主化運動の研究を続けてきたジーン・シャープの集大成と言える本。アラブの春ウォール街を占拠せよでも読まれた本。非暴力の反体制運動のバイブル。

そんな尊い本ではあるのですが、どこか自分とは関係ないとも思っていました。日本は独裁体制ではなく、(完璧ではないにせよ)民主主義の国です。民主主義には民主主義の戦い方がある。それは選挙に行くこと。しかし、どことなく「それだけでいいの?」という考えが浮かぶこともありました。だからこそ、自分のアウトプットを兼ねてブログで情報を発信しているのかもしれません。

2020年のアメリカ大統領選の開票少し前。ヴァン・ジョーンズ(有名なCNNのホストであり、コメンテーター。オバマ政権のアドバイザーも就任)がこのジーン・シャープのHold the Lineを読むことを勧めていました。

もし、投票結果が僅差だった場合、とんでもないことが起きるかもしれない。トランプは敗北宣言をしないかもしれない。そして、政権に居座るかもしれない。アメリカの現在の憲法では抜け道があって、そんなことが起きる可能性があることをヴァン・ジョーンズは警告していました。もし、そういうことが起きた場合、決して暴力的な手段を使ってはいけない。ジーン・シャープの本を読んで非暴力の闘争のやり方を学ぼうと呼びかけていました。

ヴァン・ジョーンズが言う「みんな、申し訳ないが、選挙で投票するだけでは十分じゃないんだ。もっと活動しないといけない。すでに強力なグループが活動している。そこに貢献することができる」と呼びかけている。

- The Leadership Conference on Civil Right
- American Civil Liberties Union
- The National Association for the Advancement of Colored People
- Indivisible
- ColorofChange.org

なんか、ここまで民主主義を守ろうとするグループがあるなんて、とても羨ましいと思いました。幸にして、日本ではそのような事態は起きそうにありません。しかし、日本だと昔の学生運動の延長線上にあるとても一般的な支持は得られそうにないグループばっかり。ちょっと前の自由と民主主義のための学生緊急行動(SHIELDs)とか。

自民党を支持してる?「いいえ、それほど積極的に支持してない」じゃあ、立憲民主党に政権をとってほしい?「いいえ、全く思いません」れいわ新撰組?共産党?「いえいえ、全く思いません」不幸なのは選択肢がないこと。なんでそんなことになってしまったんだろう?

ボクたちの民主主義は(他の多くの国の民主主義と同様に)ポンコツでどうしようもない。『独裁政権から民主主義へ』と言うよりも『ポンコツ民主主義からよりよい民主主義へ』が必要なんだと思います。これは日本だけでなく、アメリカも同じなのでしょう。ポンコツ民主主義との戦いもやはり非暴力だし、ジーン・シャープの本は有効なんだとヴァン・ジョーンズは言っているのだと思います。

アメリカにはローレンス・レッシグのように、「よりよい民主主義はこうあるべき」だと提案してくれる人がいる。ヨーロッパにはトマ・ピケティのように「よりよい資本主義はこうあるべきだ」と提案してくれる人がいる。民主主義や資本主義は素晴らしいと思う。ただ、まだまだポンコツだから良くしてあげないといけない。よりよい民主主義や資本主義は「アベガー」とか「スガガー」みたいに批判したって生まれてきやしない。ボクらが必要なのはよりよい民主主義やよりよい資本主義を日本のコンテキストに合わせて生み出す、前向きな作業なんだと思います。その戦い方をボクたちはまだ知らない。

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