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【怪奇ファイル006】幻の宝石 ブルーダイヤ奪還作戦の話

 その日も我々3人はパチ屋に来ていました。先日のグランドオープンのパチ屋の3日目です。3日間通っています。明日も来ます。体感で分かるぐらい出なくなるまで来ます。それはまるでイナゴのように。

 実はグランドオープンは3日目辺りから勝ちやすくなります。その日までに出てない台を打てば結構な確率で勝てます。なぜなら高設定をロータリーするのが当たり前の経営だから。履歴の最高出玉の更新も早くしておきたいところ。

 裏をかく必要があるのは経営が困難なパチ屋です。セオリー通りの立ち回りが上手くいかないのは通っちゃいけない店です。連日行列が出来るパチ屋は設定なんか配分だけでいいです。

 と偉そうなことを言うだけあって3人とも勝っていました。このまま閉店まで粘ります。メダルを流す行列に並んで、カウンターの行列に並んで、換金所の行列に並んで、駅まで徒歩20分です。

 そうなると終電がギリギリなので急ぎます。するとランコが「ラーメン食おうぜ。その店入ろう」と言いました。説明する時間が惜しいので無視して歩きます。するとダンキチが「それはダメだランコ」と言ってくれました。頼れる男です。味方でよかった。

 そして「ラーメンを食べるなら絶対餃子もつけたい。そこはラーメン専門店だ。中華料理屋を探すぞ」と言いました。説明する時間が惜しいのでこれも無視して急ぎます。とはならない。二人が完全に中華料理屋を探して動き始めました。なんとか今から説得しないといけません。

 だってこのままでは終電に間に合いません。今から急いで5分も猶予がありません。ラーメンをゆでる時間も餃子を焼く時間もないのです。いや。ラーメンをバリカタで食べるのならギリギリ行けるかもしれない。

 よってラーメンはクリアです。しかし問題は餃子。餃子を半生で食べるわけにはいきません。ひき肉は良く焼いておきたい。食中毒が怖いです。さらに皮もパリパリに焼いておきたい。

 つまり。餃子が邪魔です。ラーメンだけならやりようがあったのですが。餃子が加わったことにより解決が困難な事件となりました。もう我々の手に負えません。

 普段はパリパリで美味しい餃子がここに来て我々の行動を阻んでおります。コレが記憶にも新しい『餃子の反乱』です。ここから人類と餃子の戦争がはじまりました。2020年頃から歴史の教科書に載ります。

 しかし当時はまだ戦争に発展しておりません。餃子が自我を持ち、小さな反抗をしている程度です。なので我々は気づいていませんでした。この後に起こる悲惨な結末を。

 もしもこのとき。二人を説得出来ていたら。きっと戦争は回避されていたに違いない。しかし私はまたもや無力です。このまま二人に両腕をつかまれて中華料理屋に連行されることとなります。その結果。来年世界の人口が半分になるとは知らずに。私に勇気が足りなかったことがとても悔やまれます。

 といった理由で二人の説得を試みたところ。『そいつはヤベーな』『そうかそうか。あっ!中華屋あった』と言われました。つまり説得失敗です。まさか戦争を何とも思ってないなんて。こいつら人間じゃねえ。

 しかしそこで奇跡が起きる。運が私に味方をしました。なんと。ラストオーダーが終わっていたのです。つまりお店に入れません。危機を回避しました。これで餃子の反乱は阻止されたこととなります。歴史が変わりました。

 それはまるでキューバ危機を回避した世界のリーダー、ケネディ大統領のようでした。つまりそのとき私はケネディーだったのです。私は世界の人口の半分の命を救いました。凄いと思う。


 その後。二人も観念して駅へ急ぐこととなります。『一旦電車には乗ろう』と言ったら承諾してくれました。そして無事に駅に着きました。駅には着いたのですが。終電は終わっていました。

 なぜこんなに時間がかかってしまったのでしょう。それは駅に着くまでのすべての信号に最長時間つかまったから。運が私の一番の敵でした。

 ということで。困りました。家に帰れません。選択肢としては。『タクシーで帰る』『漫画喫茶で一泊する』『スタンドバイ三―する』の3つとなります。『スタンドバイ三―する』とは長時間線路沿いを歩くことです。今考えました。

 とりあえず『スタンドバイ三―する?』と聞いたら『なにそれ?』と言われました。どうやら私が今勝手に考えた言葉なので説明しないと通じないようです。だから説明しました。そしたら『しょうがねーなあ』と言われました。よって我々はスタンドバイ三―をすることとなりました。

 では線路沿いに歩き出そう。朝には家に着きます。明日は休みですね。と思ったその時。後ろから知っている声がしました。『どうしたのさ。あんたたち』って。そこには先日イタリアンマフィアから助けた花売りの少女がいました。

 でも一回会っただけの全然知らない娘なので何を言えばいいか分かりません。そもそもこの娘の名前も知りません。一旦無視します。

 そしたら『私はイライザ。今は街頭の花売りだけど。立派な花屋の売り子になるのが夢なの』と言いました。続けて『スペインの雨は主に平原に降ります』と言いましたが意味不明です。

 つまり。一分もしないうちに。割と知っている仲になりました。展開が早くて助かります。しかしそうなるともう無視できません。私は他人に失礼なことはしてはいけないと厳しく育てられています。

 とりあえず何か言わねばなるまい。『こんな時間に何してるんだ?』と言いました。おそらく花を売っているんでしょうけど。花が詰まったカゴも持っています。答えは分かってるけど聞いてしまいました。要はあんまり頭が回っていないです。

 すると。『何してると思う?』と言われました。続けて『3文字で』と言われました。漢字が一文字なら『花売り』と答えたいところ。でもおそらくダメでしょう。しばらく考えて『迷子』と答えました。

 すると。イライザは『違うわよっ! 失礼しちゃうわ!』と怒り出しました。さらに『バツとしてブルーダイヤを持ってくることっ!』と言われました。簡単に言うと『面倒くさいこと』が起こっています。

 これ以上は私の力では無理かもしれない。ダンキチを見たら目をそらされました。ランコに『持ってる?』と聞いたら『持ってねえ』と言われました。どうしよう。ポケットに手を入れるとパチ屋のメダルが一枚入っています。

 なので。おそるおそる。ダメもとで。パチ屋のメダルをイライザに渡しました。すると。なんということでしょう。『違うわよっ! 失礼しちゃうわ!』と怒り出しました。やっぱりダメでした。

 ということで。困りました。ブルーダイヤが無いと家に帰れない。しかし誰も行方を知りません。このままじゃらちが明かない。作戦会議が必要です。我々4人は24時間営業のファミレスで今後の動向を話し合うことにしました。

 ファミレスに入る直前にイライザが『ブルーダイヤは冗談よ』と言っていたけど、お腹が空いているのでとりあえず入ってなんか食べます。ブルーダイヤはもう関係ないです。

 話し合いの結果。うどんとハンバーグを食べます。なぜなら。それで当初の予定のラーメンと餃子にだいぶ近くなったから。これにてファーストミッションクリアです。


 それでは。食事も終えたところで。作戦会議に入ります。今日の議題は『ブルーダイヤをどうやって入手するか?』となります。今のところ。誰も行方を知らないので。簡単に言うと手詰まりです。

 しかしここで逆転の発想。『もしブルーダイヤを諦めるとしてピンチを切り抜けられるか?』の方向へ転換してみます。

 するとどうでしょう。思い出してください。ファミレスに入る直前にイライザが『ブルーダイヤは冗談よ』と言いました。つまり。ブルーダイヤは入手しなくても問題ないのです。解決しました。

 よってブルーダイヤは幻と消えました。我々はトレジャーハンターとしてまだまだ駆け出しです。今は命があるだけで儲けもん。いつか必ず手に入れて見せる。俺たち4人に盗めない宝はない。

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