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会津トロッコ旅行(前編)

 この記事は4,827文字、約9分で読めます。
 この記事ではJR東日本びゅうツーリズム&セールス主催の団体列車に乗車しています。同様のツアーに興味のある方はサイト「日本の旅、鉄道の旅」へ。では本編どうぞ。


上野駅 5:45

上野駅
この時間でも明るい時期になった

 台風2号が接近し、大雨が降る上野駅からおはようございます。今日は6/3の土曜日。とてもじゃないけどお出かけ向けの天気ではありません。傘をさしていても普通に濡れます。ただ、現地の方は雨が降らない予報なのでそれを信じて向かうことにしましょう。電話で叩き起こした友人と合流してから、乗り込むのは6:14発の上越新幹線始発とき301号新潟行。東京駅から乗り込むのは特急券を少しでも安く済ませるためです(東京から乗ると特急料金が210円高くなる)。

とき301号 上野6:14→長岡7:47 

E7系とき301号 - 長岡駅にて
少し肌寒い

 上越新幹線がE7系に統一されてから乗車するのは今回が初。この統一に合わせて最高速度が240km/hから275km/hに引き上げられたのですが、なんだか他の新幹線では感じないような細かい横揺れが少々気になりました。E7系の設計最高速度が275km/hであることと何か関係があるのでしょうか。
 利用客の方は自由席の乗車率が3~4割といったところ。大宮からも多くの乗車があったのが印象的でした。ちなみに車掌氏からの検札はありませんでした、東海道口は再開したようですが東北口は新幹線の自由席の検札はまだのようです。

しらゆき1号 長岡8:36→新津9:13

特急しらゆき2号 - 長岡駅にて

 長岡駅からは特急しらゆき1号に乗り換え。先に発車する普通列車でもこの後の乗り継ぎに十分に間に合うのですが、特急に乗りたいので乗車します。新幹線から乗り換えなので乗継割引が効いて半額なのも大きいです。そこ、さっき上野駅から乗ったのはなんでなんですか、とか言わない。
 全体的に特急の名に恥じない高速運転が続いていました。流石信越本線なだけあります。沿線の住宅も多いのですが、何よりも田んぼの割合が高い。さすが米どころ越後の国。新津は政令指定都市新潟の町ですが、駅に到着する前まで結構田んぼが多かったです、まぁ新津は2005年まで新津市だったので何とも言い難いですが。ちなみに利用客の方は、しらゆき自体があまり振るわないのと、急ぐ人は長岡から新幹線に乗り換えるのと相まって、自由席の乗車率は1割ちょっと。少し行方が心配… ちなみにこちらはしっかり検札がありました。

新津というまち

新津駅
蒸機の車輪だけでは飽き足らず、駅舎まで鉄道をアピール

 新津は鉄道の町として有名です。かつて国鉄は公式に12の「鉄道の町」を認定していました。当然新津はその1つに数えられていました。新津が鉄道と共に発展した最大の理由は4つの方面から鉄道路線が合流している交通の要衝であること。
 信越本線、羽越本線と磐越西線が交わり、これだけの路線が集中していることから大規模な車両基地も新津に設けられました。全盛期には町の4人に1人は鉄道県関係の職に従事していると言われるほどでした。現代でも鉄道車両メーカーの総合車両製作所新津製作所が立地するなど、鉄道にとって新津は重要な町です。
 そんな新津の歴史をまとめた市立の新津鉄道資料館というのがあります。資料も充実していてオススメなのですが、どうも新津駅前にサテライトができたらしく、今回のようなわずかな乗換時間でも訪問可能なので読者の皆様も是非。資料館、完全に需要を理解している。スタッフのおじいさんも親切な方でポストカードとパンフレットを頂きました、ありがとうございました。


磐越西線 新津9:33→会津若松12:02 

使用車両はキハ110。
白飛びしている、悲しい

 さて、新津からは磐越西線に乗り継ぎ。昨年7月の大雨の影響で喜多方〜野沢で運休となっていましたが、この春に無事に復旧。今年の夏から名物のSL列車「ばんえつ物語」も運転を再開する予定で明るいニュースが多い線区です。この列車、新津発車時点ではワンマンだったのですが、途中の津川駅からは車掌が乗務。個人的には新津寄りの方が利用者が多いのではないかと思っていましたが、実際には会津方面のほうが多いようです。新津方は町を外れてから早くに山に入るのに対し、会津方はしばらく会津盆地を走るからでしょうか。
 乗車した印象としては思ったより速いな、です。新津から会津盆地に入るまでのほぼ全区間に渡って阿賀野川と並走していて、車窓としては関西本線の木津川沿いの区間や大糸線の糸魚川〜南小谷のものに似ているのですが、これらの線区より圧倒的に速い。大体80km/hくらいは常に出ていたと思います。JR東日本はこういう線区にもしっかりと保線でお金をかけている印象。
 車内の方は座席の7割ちょっとが埋まる程度、本数を考えれば健闘している方だと思います。同業者も5名ほど確認。途中の喜多方から快速運転を実施、喜多方からは特に日常利用者らしき人も目立ち、ちゃんと使われているようです。

しらすめっぱめし - 旅館田事にて

 会津若松駅到着後に現地在住の友人と合流。お昼ごはんに名物の「めっぱめし」を頂きます。僕はしらすを頂いたのですが、香りも良くてボリュームもそこそこあって満足。ごちそうさまでした。

びゅうコースター風っこ号

風っこ号 - 会津若松駅にて

 さて、いよいよ今回の旅のメインの風っこ号に乗車します。会津若松駅の構内で受付を済ませてから、乗車。今回のツアーは現地集合解散と東京発着の2パターンが用意されていて、前者は2号車、後者は1号車だったようです。1号車が会津若松方。
 風っこ号はキハ48形2両を種車に2007年にデビューしたトロッコ車両で、仙台を中心に東北の幅広いエリアで臨時列車として使用されます。車内はテーブルは一応ありますが、ペットボトルを2本並べたら他のものが置けなくなるほどの幅しかなく(長さは割とある)、椅子は木製で座り心地は良いとは言えません。高校の講堂の椅子にそっくりでした。

車内の様子
車内にはストーブもあります

 ただしあくまでこの車両はトロッコ車両。窓枠が大きく取られていて、開放感はバツグンです。僕たちが乗車した日は台風の余波なのか風がめちゃくちゃ強く、頭痛がするほど寒かったです。皆さんはキチンと防寒するか、天気を選んで乗りましょう。

只見線 会津若松14:18→会津川口16:37

駅員さんたちのお見送りで出発 - 会津若松駅にて

 今回のツアーの車内アナウンスはツアー終着点の会津川口駅の存在する、金山町観光物産協会の方が担当されていました。ユーモアもあふれていて、分かりやすい解説放送で良かったです。「この先100km以上コンビニはありません」とか「右手で俺の友人が手を振っています」とか挙句には「あれが俺の家です」とか、地元感があって面白かったです。このツアー、若松で集合解散なので担当の方は会津川口~会津若松をもう一往復することになります。しかも手弁当で参加されていたようで。本当に頭が下がります。

車内で配られた。美味しかったです

 沿線の絶景スポットで減速する観光列車らしさを度々見せてはいましたが、僕が印象的だったのは沿線の方がよくこちらに手を振っていたこと

沿線の風景

 実は只見線沿線の自治体では「只見線に手を振ろう条例」なるものが定められています。本数が少ないからこそ可能なこと。守らなかったところで、当然罰則なんてないのですが、お手振りをしてくださる方が多くて第三セクターにあるような只見線に対する愛着というかマイレール意識のようなものがあると感じました。実際、昨年10月に全線で運転再開するにあたって復旧区間については福島県が線路を保有しJR東日本は運営に集中する“上下分離方式”が取られており、地元側が相当のお金を負担しています。あそこまで大事にされていることを実感できる鉄道路線はなかなかありません。
 今回の列車は会津川口駅で折り返しますが、途中駅の会津宮下駅でも扉が開き、この2駅では駅前マルシェが開催されました。

会津宮下駅前マルシェ
焼き鳥。美味しかった
風っこ号 - 会津宮下駅にて
皆降りているので車内はガラガラ

 それぞれの駅で購入金額500円につき、1枚クジ引き券を頂けたのですが、宮下駅前で購入した場合のクジ引き会場は川口駅、逆に川口駅で購入した場合は宮下駅がクジ引き会場です。良くできた仕組み。僕は宮下駅では地鶏の焼き鳥、川口駅では黒毛和牛串をそれぞれ頂きました。肉ばっかりだな。どちらも美味しかったのですが、特に牛串の方は500円とは思えないボリューム。あれで利益出てるのかな…

会津川口駅前マルシェ
駅舎にJAと郵便局が入っています
牛串。500円のボリュームじゃない
他にもいろいろ

 ちなみに同行者の中で唯一20歳になっていた人がいたのですが(当日が誕生日)、運転する必要があるため地酒が飲めなくて嘆いていました。そんな会話をしていたら、酒売り場のおばちゃんからおちょこをもらっていた。

もうちょっと貼る場所があったのではないか - 会津川口駅舎内

只見線 会津川口17:40→会津若松20:00

会津川口駅は只見川のすぐ脇に存在します

 復路は全く同じ道のりなので観光案内なども控えめで少々スピードを出していた感じでした。ですが復路こそがこの列車の本番。今回のツアーは「只見線トワイライトトレイン」と銘打っていて、日没後の走行については室内の明かりを消して夜景を楽しもう!というコンセプトなのです。

キハE120系国鉄色ラッピングとすれ違い - 会津宮下駅にて

 会津坂下 (あいづばんげ) 駅手前の会津盆地に入る直前あたりで日没を迎えるダイヤとなっていていました。アナウンス氏曰く、その手前の山岳区間は夜は本当に真っ暗であるそうなので、人口が多く“町明かり”が存在する盆地の夜景を楽しめるように狙ってそのようなダイヤにしたのでしょう。 

夕暮れ時
ちなみにこのエリアの木はほとんどがスギです。春には来たくない

 某羽織物YouTuberも言っていましたが、車窓の夜景を楽しむのなら室内の明かりを消すのがベストです。理由は窓に室内の明かりが反射して外が見にくくなるから。ですが、今回はトロッコ車両。室内の明かりが反射する窓が存在しません。なので室内灯があってもなくても実は夜景を見ることそのものについては影響しません。ただ室内灯を消した方が雰囲気が出ることも事実で、僕としては室内灯を消してある方が好きです。ちょうどほぼ満月のタイミングで (乗車翌日が満月)、田植えが終わった直後の田んぼに月明かりが反射していてとてもきれいでした。

田んぼに反射する満月
足元の明かり

 ちなみにここでも沿線の方のお手振りが発揮されていて、アナウンス氏と事前に連絡を取り合っていたらしく、クルマ5台ほどのヘッドライトとスマホのライトで見送ってくれました。こちらもスマホペンライトで振り返します。
 そんなこんなで20時ちょうどに会津若松駅に到着。そこで解散となりました。お出迎えもちゃんとあって、全体的に満足度が高いツアーでした。ただ一人9,800円なのはちょっと高いかな、と… 

只見線に乗ろう!

 只見線は昨年10月の復旧以来観光促進に力を入れています。やはりお金を出してもらっている以上JR東日本も協力しているようで、今回の風っこ号も何度か只見線に乗り入れるようですし、えちごトキめき鉄道の観光列車「雪月花」の乗り入れも計画されています。景色も文句なしに良くて、沿線の方の温かさを感じられる只見線。是非、皆さんも乗りに行ってみてください。

駅員さんたちによるお出迎え - 会津若松駅にて

後編に続きます。記事内の写真は全て筆者が撮影。 


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