踊る

“だから踊るんだよ。音楽の続く限り”

彼は羊男のセリフを引用して、そう僕に語りかける。
ここ最近では、幾つもの星々に線が引かれ、星座として意味を成すように、様々な事が繋がり、そのゲシュタルトが輪郭を表そうとしている事を感じる。

「きっと今僕が今やっている事は未来の自分という他者を救う為の“ケア”なんだと思うんだ。」

「ずっと先の、自分宛の郵便って所かい?」

そうさ、誤配のない事を祈るよ。そう呟き考えを巡らす。ここ最近では、僕は様々なモノを失い、それでも続けられる言語ゲームの中で踊り続けていた。

一つ気付いた事と言えば、僕だけがその“劇”を履き違えていたという事だ。カーテンコールの終わった舞台上で1人虚しく演じ続けている、そんな日々だった。

それでも次の“幕開け”を信じて、僕は踊り続ける。

思惟を編み直すのだ。
もう2度と、何が大切であったかを見誤りたくない。

僕は未来の自分への“贈与”として、様々な事を学び、思考を研ぎ澄まそうと日々尽力していた。

そんな事を友人である彼と語り、最近読んだ本の話になった。そこにはこんな一節が記されていた。

“現在の私の認識枠組み、常識、暗黙の前提を手放し、私自身が変容しなければアクセスできないものがここにある、という想いを恋と呼んでなぜいけないのだろうか”

とてもロマンチックだな、と思いそれを彼に伝え、僕らはいつもの言葉遊びに戻っていく。

「なあ〇〇君、恋に落ちるとはどう言う事だと思う?」

「恋に落ちる、とは一体何に落ちているのか。それは彼女という大気の構成元素すらも知らない“惑星”に不時着/墜落するって事さ。」

僕はなるほど、感嘆の声をもらし、合点がいった様で彼にこう伝えてその会話を終える。



「なるほど、呼吸すらもままならないわけだ。」

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