Y君の死について

 Y君が亡くなった。
 コロナ禍の最中、酷暑に喘ぐ2020年夏。
 最後に会ったのは思い出せないくらい前のこと。確か、彼がまだ学生の頃だった。だから「獣医になりたい」と言っていた二十歳前後のイメージしか残っていない。ラグビーやってただけあって、身体もごつくて、日に焼けて真っ黒だった。

 当時、通っていたキリストの教会は、カルト化し、ボクと家内はその団体から距離を置いた(※注0)。彼は残った。親しい友人が沢山いたからだろう。友達の少なかったボクは、決して彼を責められない。
 プロテスタント系の教会カルト化は最早、日常茶飯事といってもいいくらいに増殖している。教理が曖昧で、聖書の適用がおかしいと、ひょんなことでカルト化はズンズン進行する。入ったら最後、入口を間違えた高速道路みたいに、ずいぶん遠いところまで運ばれてしまう。結婚も然りだけど、早めに進路を矯正しないと、気づいた時には手遅れになる。

 ボク達が教会を去った後、何度かY君から相談を受けた。教理が誤っていることを指導層の人達にどう伝えたらいいか、そこにハマっている友人達をどうすれば救い出せるか、等々。切実な願いだったので無下にできず、話を一通り聞いて、自分なりに思ったことを伝えた。
 「やめた方がいいよ」と…。
 実際彼は、指導者の何人かに訴え出て、総スカンを喰らった。指導者から教会のメンバーには、Y君と距離を置くよう伝えられたらしい(本人談)。一人で組織を変えよう、抗おうとしても難しい。というか、無理ゲーだ。「やめた方がいいよ」は、経験知からの助言だった。(※注1)

 何年か後、今度はY君が体調を崩し、死の淵を彷徨ったと聞いた。連絡がとれた時「気を悪くしないでね」と信仰の確認をした。「救われている」と思いながら、死んだ後で実はそうでなかったと知ることほど酷なことはないと思ったからだ。分かりやすい説明のあるリンクを送ると(※注2)「大丈夫です」と返事があった。…まあ、失礼な話ですよね、クリスチャン捕まえて「アンタ、ホントに救われてる?」なんて聞いてるわけですから。
 その後は連絡も途絶えていた。共通の友人からは時折、容体がなかなか改善しない旨は聞いていた。その矢先の訃報だ。

 葬儀は自宅で、ご家族と数人の友人で執り行われるらしい。ご両親の心中を思うといたたまれない。ご家族のために祈ります。
 が、本人は今頃、第三の天でイエスと出会っているだろう。ちょっと羨ましい。今はまだ魂だけだから、好きなラグビーはできない。でも近い将来、携挙がやってきたら(※注3)、今よりも強靭な身体をいただくことになるので、思う存分タックルできるようになる。ケガもしないし、苦しめられた病気もない。さらに食べても太らない。
 キット、そんなに先のことではない。


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 ※注0:ペラギウス主義に傾倒。結果「~してはいけない」の多い、律法的な団体になっている。原罪の概念がなく、人は生まれ落ちた時、罪がなく、純粋な存在だったと教える。https://www.gotquestions.org/Japanese/Japanese-pelagianism.html
 ※注1:キリスト教に限らずどんな組織も、カルト化する可能性がある。誤った教理を土台にすると組織はカルト化する(マタ13:24-30)。「収穫まで両方とも(毒麦も麦も)育つままにしておきなさい」というイエスの言葉に従うべきだったと、今も思う。毒麦=誤った教理。
 ※注2:送ったリンク https://message-station.audio/-2-6
 ※注3:聖書に記されたイエスの再臨のこと。再臨は2段階を経る。最初は空中再臨、次が地上再臨で、携挙とは前者を指す。

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