バブルの頃#191:進駐軍の施策

経営再建というプロジェクトは、生き残っている旧経営幹部とその取り巻きにとっては、馴染みの環境を進駐軍に破壊されることにつながります。

まず、過去1年間実績無しの営業部員に退場してもらいました。この会社は創業時の赤字プロジェクトの体質をそのまま継続していました。新規顧客開拓のために、利益より売上高に注目してきたようです。2億の売上をあげるために4億つかい、その差額が創業費になったようです。オープニングキャンペーンを継続しているコスト意識のない幹部社員が温存されていました。1年間売上の無い営業マンの会議費と出張旅費の明細を見ると、こまめに活動し多額の金をつかっていました。日常のサポートができない遠距離地域に製品説明のために出張をしたり、赤字プロジェクトの顧客に会議費と接待費を頻繁に使ったりしていました。無駄な出費を削減するために、出費を認めた経営陣の経営責任を問う前に、手っ取り早く、その出費をする従業員をカットしました。

数年前に日本市場に参入した外資系法人が、いまだ20人弱の規模で低迷し、赤字を毎年積み上げているのです。だめな企業にはだめな理由がありますが、まずは単年度黒字達成のための救急救命が第一のタスクです。

「清濁あわせ呑む」という気持ちをなくさないよう努力しました。古参の従業員を一掃すると、創業時から膨らんできた文書に記録されていない約束事、既存顧客のキーパーソンおよび親会社の従業員との人脈などが途切れてしまいます。これまで会社が蓄積してきた負の財産や隠れた瑕疵を精査するために、創業以来の情報をアナログでにぎっているメンバーを残しました。しかし大きな誤算がありました。進駐軍の質問に対して、在庫社員は聞かれたことだけしか答えず、いわれたことだけしか実行しませんでした。本人たちの能力というよりは、モチベーションの問題だと理解し、「俺がやるから、お前もやれ」という手法で業績改善と社内のモラル向上をはかりました。

結論はすぐでました。改修工事より新築工事のほうが、効率がよかったということです。腐ったリンゴを新鮮なリンゴの中に残してはいけなかったのです。新鮮なリンゴの鮮度が急速に落ち、腐ってしまうからです。これは何度経験しても繰り返す失敗かもしれません。「清濁あわせ呑む」からです。呑んだ方の体力と気力が萎えた瞬間に、毒が体中にまわって、戦闘力のいっそうの低下をもたらします。次善の改善策は、最古参や、アナログ情報をたくさんもっているメンバーの削除です。(ブービーは人質に残します)

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