バブルの頃#192:闘争感覚の違い

前職をやめ、新たな職場で捲土重来(砂をまきあげて荒々しく)を期し、限られた時間と資源(体力と気力かもしれません)を駆使して事業計画必達を、メンバーが合意しマネージメントチームができました。ところが目標は同じなのですが、達成するためにかける時間と払う犠牲に関しては、各メンバーにより違いが生じます。これは仕方のないことです。それぞれ家庭の事情とか健康状態とか思惑とかが違います。

在庫社員にとって新経営陣は外人部隊、進駐軍、GHQみたいなものです。新経営陣が投入してくる戦闘部隊によって、不良在庫社員は一掃されることになります。前からいる従業員はこういう不安を持ちます。彼らのなかには生き残るために、占領軍にゲリラ戦、テロを仕掛ける者が出てきます。今回のプロジェクトで新経営陣に欠けていたのは、占領政策でした。儲かるビジネスモデルを提案し、即戦力で成功事例を持ったメンバーによる経営再建というシナリオには、残存した抵抗勢力・反動勢力にどう対処するかという項目が抜けていました。新しい体制で実績があがり社員全員に昇給という恩恵が与えられている限りは、テロは発生しません。ひとたび、右肩あがりの実績が調整期に入ると、クーデターの危機となります。この危機管理意識が欠落していました。

危機管理意識の希薄を示す例としては、相手に手の内を見せてしまうことです。
メンバーの一人が、前の職場が開いてくれた送別会に出席し、元同僚の管理本部長に次の職場の組織(だれが何をしているか)を教えました。本人は、組織体制と人名を前職の人事担当責任者に漏らすことはリスクではないと考えています。流してしまった事実について、リスクを議論しても意味がありません。ましてや、これによりもたらされた弊害を明確にして、本人の考え違いを正すとか、危機管理意識の強化を狙うという余裕はありません。白兵戦の最中に、レビューボードを開催する余裕はありません。

ベンチャー企業に加わったら、毎日が資金繰りとコンペティターとの戦いです。
既存のビジネス環境のもっとも強固な部分に挑戦して壁を崩していくほうが、誰もやらない隙間をねらうより成功報酬が多額になります。でも、ビジネスモデルの優位性だけでは、勝てません。負けないための危機管理が必要です。無名の小集団が戦うためには、戦闘能力を公表してはいけません。相手がこちらの情報をもっていないことが優位性となります。「人質をとっても要求をしない、テロを仕掛けても犯行声明をださない」ということです。既存勢力の既得権をくずし、取得しようとするなら、相手に自分の手の内(戦闘能力)を見せてはいけません。

サラリーマンとして最後の職場で、緒戦で情報漏えいが発生しました。これがとんでもないことであるという危機意識を持たないメンバーとの、別れの始まりでありました。

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