バブルの頃#193:広告宣伝、広報、IR、マーケティング、コミュニケーション。
大企業の本社スタッフとして上記の業務を遂行していくなかで受けるプレッシャーと、ベンチャー企業、業績不振で経営再建が課題の企業で受けるプレッシャーの違いは、それぞれを体験してみないとわからないことかもしれません。現場にいなければ、その違いは、一時流行した「へエー」ボタンを押す程度のインパクトです。
企業グループの本社スタッフとして、グループシナジーとかコーポレートブランディングとかを大義として、担当事業所から広告費を預かりオーナーの意向を実行するコストセンターに9年在籍したことがあります。この間に蓄積したアナログの暗黙知が自分の得意分野であり、差別化であり強みであると確信し、その後この分野の業務を中心として数社を渡り歩いてきました。会社が替わっても、実際の業務は変わらないので、給料を払ってくれる会社はクライアントみたいなものでした。販売する製品や業界が変わっても、販売促進の手法はそれほど変化ありません。そのときどきの流行にのり、新しいマーケティング手法がでてくればそれをとりいれ、営業力強化に貢献する成果を積み上げていきます。
経営再建のミッションでは、既存のネットワークをつかい、販売管理費をなるべく使わないで効果がでるような工夫をすればいいと考えました。制作物には、品質を落とさずコストを削減できるような仕組みとかパートナーを選び、費用のわりに効果が期待できない広告費は使わないというのはむずかしい仕事ではありません。
誤算があったのは、事業計画を達成できなかったときのことです。限られた予算でしかもなるべく使わないようにして効果をねらうのですから、目に見えるパフォーマンスはあまりありません。そうすると、本社は、売上目標未達成の一因としてマーケティング活動の弱さを指摘します。しかるべき活動をしていないと、本社サイドに攻められます。本社は営業力強化のための施策としてマーケティング責任者の更迭を考えます。
大手企業の宣伝部に在籍していた頃、話題になったのは「即席ラーメンの売上は、テレビコマーシャルの露出度に比例する」ということでした。テレビコマーシャルを減らすと売上が減る、減り始めてからコマーシャルを増やしても挽回するには維持するよりコストがかかるという、CM制作側にとってはおいしい方程式でした。企業内でこの分野の業務で収入を確保しているサラリーマンは、減益ではなく売上減を心配し、何もやっていないと評価されないよう、宣伝費を使うことに専念しないとリストラ対象リストの上位にランクされてしまいます。コスト削減はまず宣伝費から、宣伝費削減には担当者も含まれていることを、忘れがちです。
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