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生物模倣型ロボットが配管内から減肉検査する「Ultra Sooha」、ソラリスと共同開発!その経緯とは

薄型・耐熱・フレキシブルなセンサーをコア技術に、配管減肉モニタリングシステムを展開しているCAST

この度、株式会社ソラリス様と共同で、配管の中を移動しながら減肉検査する「Ultra Sooha」を開発しました。7月26日(水)~28日(金)に開催される、メンテナンス・レジリエンスTOKYO2023への出展及びUltra Soohaの展示も決定しています。

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出展に先駆け、共同開発のきっかけとなった株式会社ソラリスの代表取締役CEO 梅田清さんと、株式会社CASTの創業者・代表取締役CEO 中妻啓さんにインタビュー。共同開発の経緯や製品の強み、二人が目指す未来等を聞きました。


株式会社ソラリス

2017年9月創業。中央大学から生まれた、初めてのスタートアップ企業。中村太郎教授が20年以上研究してきた生き物の機能や動きを模倣した「生体模倣型ロボット」を社会実装するために設立。独自の「空気圧人工筋肉」をコア技術に持つ。空気圧で駆動し生物の筋肉のように柔軟に動く技術で、「ミミズ型管内走行ロボット『SoohaⓇ』」等の製品を展開している。


株式会社CAST

2019年9月創業。熊本大学発のベンチャー企業。共同創業者である小林牧子教授が20年以上前から研究している薄型・耐熱・フレキシブルなセンサー技術を社会実装するために設立。独自のコア技術をもとに、製油所や化学工場などの配管の厚みをモニタリングする「配管減肉モニタリングシステム」を展開している。


配管内から・水を使わず・移動しながら減肉検査

―今回共同開発した「Ultra Sooha」がどのような製品か教えてください。

中妻(敬称略):
工場の配管内を移動しながら、配管の減肉を検査できる製品です。ソラリスさんの「ミミズ型管内走行ロボット『SoohaⓇ』」の技術に、弊社の配管減肉モニタリングシステムを融合してできた製品といえます。

工場を安全に動かすためには点検が必要です。点検項目は様々ですが、特に需要なのは配管の減肉検査目視検査と言われています。その両方を担う製品がUltra Soohaです。

梅田(敬称略):
強みは、配管の中から水を使わずに配管の減肉を検査できること。そして、移動しながら検査できることです。まさに両社の強みを生かした、理想的なオープンイノベーションだと思っています。


互いに感じていた課題を補い合う

開発風景

―自社にとって、共同開発したからこそ実現できたことはありますか?

梅田:
Ultra Soohaの強みの一つである、水を使わずに配管の厚みを検査できるようになったことです。

弊社のロボットに対して、お客様から「配管の減肉も検査できると嬉しい」という声を多くいただいていました。ただ配管の中から厚みを測定するためには、基本的に管内を水で満たして超音波センサーを使う必要があります。どうしても水中での走行が難しかったり、そもそも水が使えない配管では検査できなかったりと課題が多く……。悩んでいた時に、中妻さんと出会いました。

CASTさんの技術があれば、配管の中から水なしで厚みを検査できるのではないかと。かなりのイノベーションになる予感がして、身震いしたのを覚えています。

中妻:
CASTとしては、配管の中から検査することと、移動しながら検査することを実現できました。

CASTのセンサーは、配管の外に取り付ける製品です。一度付けたら“つけっぱなし”に出来る一方で、なかなか足を踏み入れられない建物の内部や、土の中にある配管はそもそも取り付けられず、検査できませんでした。ソラリスさんとの共同開発により、配管の中から検査できるようになり、いつか乗り越えなければと思っていた壁を越えられたと思っています。

また、CASTのセンサーは取り付けた箇所の配管の厚みは測れるものの、それ以外の箇所は測れませんでした。定点観測しかできなかったのですが、ソラリスさんの技術と融合したことで配管内の移動が可能となり、様々な箇所の厚みが測れるように。CASTとしても、お客様に提供できるサービスの幅が広がったと思います。


出会った時に直感で「面白いコラボができそう」

―共同開発に至った経緯を教えてください。

梅田:
中妻さんと初めてお会いしたのは、2022年5月でした。リアルテックファンドが主催する社長が集まる合宿がありまして。出席者同士で情報交換等をしたのですが、偶然お話する機会を持てたんです。

1日目の夜、お酒の席でたまたま中妻さんの隣に座り、CASTの技術や事業を知りました。ほとんど同じ領域にアプローチしていることが分かり、初めてお話したときから直感で「面白いコラボレーションができそう」と思いましたね。

中妻:
参加者の中に、CASTと事業領域の近い、工場の課題を解決しようとしている企業があまりなかったんですよね。最初は「どのように営業しているのか」「他社とはどう連携しているのか」等に興味を持って話を聞いていました。

そこから「両社の特徴を組み合わせると、お客様の課題解決に繋がる製品ができるのではないか」という話に。意気投合したのを覚えています。

―共同開発するなかで、お互いの企業にどのような印象を持ちましたか?

中妻:
ソラリスさんは、チームで仕事をしているのが凄いなと思いました。

会社に行かせていただいたのですが、CASTよりも社員数やエンジニアの数が多かった。製品ごとにエンジニアがチームに分かれて仕事する体制があると知り、組織が整備されていてすごいな、と。CASTもソラリスさんのような体制を目指したいなと思いました。

梅田:
CASTさんは、やるべきことが定まっている印象を持ちました。

ソラリスの技術は世界初だったため、ロボットを開発できたのはいいものの「どのように使っていこう……」と結構長い間模索していて。配管といっても、色々な種類があるじゃないですか。

中妻:
ロボット開発あるある、大学発ベンチャーあるあるですよね。

梅田:
世界初の技術の製品化に挑戦する、面白さと苦しさがありますよね。

ただ、CASTさんは「配管の減肉をモニタリングする」とやるべきことを固めていた。事業が向かっている先が分かりやすいなと思っていました。


最高の練習は本番だ

―企業として共通点が多い一方、一人の社長としての共通点や違いはありますか?

梅田:
私は「この会社を軌道に乗せたい」という思いでソラリスにジョインし、社長を務めるようになりました。立ち上げメンバーではないのが、中妻さんとの違いかもしれません。

私にとってソラリスが魅力的に感じたのは、「アナログの極み」ともいえる技術を持っていることです。空気圧だけで動くって、動きとしてはかなりアナログなんですよ。アナログを極めているものは、真似しようと思ってもなかなかできないんです。

他社にはないソラリスの技術や魅力を広めていくお手伝いがしたい。社長になった今も、そんな思いがあります。

中妻:
“真似できない技術”というのは、CASTも同じような理念を持っているなと思いました。私たちがモニタリングしている配管の中は、物理現象が起こっているわけですが、世界中どこにいても現象はほぼ変わらないんです。

例えば、工場で特に重要なアンモニアの作り方は100年近くほぼ変わっていない。だからセンサーの技術は、これから先もずっと武器になると信じて事業をしています。

一人の社長としての違いでいうと、経営体制を整える役割を最初から担っているか?でしょうか。ソラリスさんは、梅田さんがジョインされてから経営体制を強化し、さらに事業を拡大されてきたイメージなんです。

私自身は経営をしようと思って事業を始めたわけではなくて。集まってくれた仲間が経営体制を整え始めている状態です。梅田さんが前任者から経営を引き継がれた様子を見ていると、CASTも経営の知識を蓄積しておかないといけないなと思います。


―プライベートでは、お二人とも音楽をしているそうですが。

梅田:
中妻さんも音楽がお好きなんですか?私はずっとジャズピアノをやっていまして。

中妻:
私はサックスを吹いていました。中学から、大人になって熊本に来るまでは。今は機会がなくて、吹かなくなってしまいましたが……。

そういえば、経営者に占める音楽経験者の割合は高いと聞いたことがあります。根拠は分かりません(笑)

梅田:
たしかに、音楽をしていたことが今の私の特性を作っている気がします。

今、製品が完成していなくてもお客様のところへどんどん持って行って、どんどん走らせているんです。何度も失敗し、お客様をがっかりさせてしまうこともありますが、本番を繰り返すたびに性能が上がっています。

これって、私のジャズの師匠から言われた「最高の練習は本番だ」という言葉からできた価値観なんですよね。練習をいくら繰り返しても、成長できない。成長には本番を繰り返すしかない、と。今でも大事にしている教えです。

中妻:
大事ですよね、とにかくトライすること。CASTとしても大事にしている考え方です。チャレンジさせてくださる方も案外多いですしね。

そう思うと、我々はスピード感が似ているのかもしれません。パートナーを組めるのは嬉しいことだなと改めて思いました。

梅田:
出会って約1年で、コンセプトモデルができて、展示会に出す予定ですからね。スピード感が合っている表れだと思います。


製造現場の課題解決を目指す第一歩を

―その“展示会”が、7月26日(水)~28日(金)に開催される、メンテナンス・レジリエンスTOKYO2023ですね。意気込みを教えてください。

梅田:
今回強調したいのは、CASTさんとソラリスの共同特許を出願済であること。両社の出展ブースを隣にして壁を取り払い2社の間にUltra Soohaを置くことで、両社ブースのご来場社からもご覧いただけるようにします。

そして現状のUltra Soohaは、あくまでも「コンセプトモデル」です。自社の困りごとを解決できるかも、と思っていただける方がいたら、一緒に開発していきたい。共同開発のパートナーを見つけたいと思っています。

中妻:
私も同じ考えで、実際にどのようなフィールドで使えるか模索したいです。

CASTのお客様やパートナー会社の皆様はロボットに関心が高いと思います。様々な技術を組み合わせて、配管だけでなく、工場全体の管理を効率化したい、変えていきたいと思われている方に紹介していきたいです。

梅田:
“工場デジタルツイン”がホットワードですが、我々の取り組みは「配管デジタルツイン」ですね。このキーワードにピンと来ていただく方へ、アピールしたいと思います。

―最後に、今後の展望を教えてください。

梅田:
ソラリスのミミズ型管内走行ロボットをプラットフォームにして、様々な技術を盛り込んでいきたいと考えています。CASTさんとの共同開発は、その第一弾です。次に繋がるように、まずはメンテナンス・レジリエンスTOKYO2023の出展をがんばります。

また今後は技術の融合によって、様々なパイプラインにUltra Soohaの家があって、フルオートで家から出動して、自分で戻ってくるような仕組みを作りたい。最終的には、ストリートビューのようにロボットが進みながら映像が見えたり、減肉のデータの取得も清掃も全ての機能を持つようにしたい。あらゆる配管の中で生物型ロボットが働いている未来を、目指したいと思います。

中妻:
Ultra Soohaが測定できる配管の種類や状況をもっと広げて、配管減肉データベースのようなものを作り上げたいです。現状、配管に穴が開く等のリスクが発生する原因は、まだ分からないことが多い。データベース化できれば、リスク回避できる画期的な製品になっていくと思います。

また、ソラリスさんとの共同開発によって、CASTとしても事業領域を拡大していくチャンスをいただきました。Ultra Soohaの発展を期待しながら、CASTとしても成長していけるよう取り組んでいきます。


お知らせ

メンテナンス・レジリエンスTOKYO2023
日程:2023年7月26日(水)~28日(金)
場所:東京ビックサイト東展示棟

Ultra Sooha、初お披露目です!
またソラリス様・CAST両社のサービスに興味を持った方は、ぜひ足をお運びください。


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取材・執筆:小溝朱里



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