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夜明け前、天空に昇るオリオン。

この不穏で、森の夜の闇みたいにぽっかりと足を滑らせたら戻ってこられない様なこれらを読んで、誰か他の人まで落ちたら困るなと、投稿した後しばらくしてそっと下書きに戻しました。いささか、メルヘンすぎるし、と。

一人に届けた時点で、多分読まれた時点で、なんだかその言葉たちは羽を休めて健やかに眠れたみたいで、今朝は私も健やかに朝を迎えています。それが本当にありがたく、このまま下書きに置いておくのが良いと思っていました。 

今朝、ある方がコメントでこの文章を読んでいてくれたと書いてくださって、とても嬉しく、同じ様な気持ちの人を引き上げることはできないけれど、穴の底で隣でそっといることはできるかもしれない、それがこの言葉たちの役割かもしれない、と思いました。

私は、日記を書く時、二人の人に向けて書いています。一人は、自分。そしてもう一人。

その人に私の心の動きを、観たものを、窓から眺めてもらえる様に、私を忘れないでいて欲しいと、その時感じた揺らぎの様なものを、そのまま優しく包んでおけるように、いつか思い出せる様に、写真を撮り、言葉を紡いでいます。

というわけで、夜明け前のように一番深い青を持つ言葉たち。同じ気持ちで夜に膝を抱えて星を見る誰かに、いつかどこかで届きます様に。大丈夫だよ、そばにいるよ。

・・・・


冷房をつけて寝たからか、身体がこわばってじっとりとした怖い夢を見て起きた。少女が売られる夢だった。 水を飲もうと起きて、窓を開ける。冷房がなくても十分涼しい。街灯が明るすぎて星があまり見えないけれど、東の空は木が灯りを遮るので星がピカピカと光って見えることに今日気づいた。

オリオン座。冬の星座だと思ってた。

私にだって容易にわかるくらい。街でも見失わない。

寝る直前まで、珍しく夫と話していた。子どもたちのこと。なんでこんなに言葉を尽くしても伝わらないんだろう。伝わったような伝わらなかったような、理解されたような理解できなかったような間で生きてる。

わかりやすい明確なマニュアルフローチャートをつくって合意しておしまい。

夜空に目を凝らすと、規則正しく動く人工衛星。彼らは星の中で星でなく、寂しくないんだろうか。

感情の機微、感覚、虫たちの声が細やかに織り重ねられている。

伝えたい、がポッキリ折られると、言の葉はざぁっと風が吹いて全て散ってどこかへ飛んでいってしまう。その前に集めようとしても散り散りで、もう遅い。

何度も折られ歪められ、もう雑に針金をかけられ、してはいけない時期に剪定され、針金を取ってももどらなくなった下手な、半分枯れかけた盆栽みたいな自分を外側から見てる。だれも悪くない。善良で、懸命に生きている。

わかりやすさ、の外で言葉を紡いで生きているのに、一番身近な他人である人にはもっとも杜撰で単純な言葉でしか伝わらない。
私のもっとも大切にしている部分が、元々存在しない人たち。彼らから見た私はきっと宇宙人。

子どもたちを育てる時、その性質は私にないので助かっている。単純には感謝しかない。

それでも、会話をしていると育てた草木をぐしゃぐしゃに踏まれていくなんとも言えない居心地の悪さがある。なんでそこ踏むの?咲いてるじゃん、種植えてるし、球根もあるんだよ、と。向こうもきっとなんでそんなところに、そもそも花を植えるの?気づかないよ、いらないよ、道作ろうよ、と思っている。
不毛な大地。
キリキリと神経を逆立ててしまう。よくない。

蠍の天敵星のゆりかご。
蠍が沈んだら現れるもの。

オリオン座をもう一度見て眠る。

山法師の葉は、夜に眠っているのか、どの葉もぴくりとも動かずに固められたまま。


私の紡ぐ言葉、せめて、この小さな窓の向こうには伝わって、たとえその葉を揺らさないとしても、読み解かれてもらえていたらいいな。一言一言、愛でてもらえていたらいいなぁ。

バラバラと足元に転がって、ぐしゃぐしゃになった必要とされなかった言葉たちをかき集めて縫い繋いで、ここにいちゃだめだよと空に飛ばした夜明け前のこと。迷子にならず、そちらに辿り着けたでしょうか。

オリオン座、ずっと高く昇る。
私は布団に沈む。寝ないと。朝が来る。


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