近所のバクの話。
近所に、バクが住んでいる。
というのも、家から車で10分ほどの動物園があるのだ。子供の頃、家の近くに動物園があればいいのに。と思っていたから、年パスを買って、子供達を連れてふらりといったりする。
先週も行ったのに、今日の、またあまりにいい天気に行きたくなって、一人で車に乗っていった。
バクは、悪夢を食べてくれるのだという。その白と黒の体は、お釈迦様が乗ったあとが白くなったのだとも言い伝えられている。やさしくゆっくりとした動き、水に潜る様、ちょいとのびた鼻。どれもちょっと不思議。いろんな伝説が生まれたのも、なんだかわかる。
きょうは、陸地で午睡しているところを初めて観た。虫がたかっても気にせずに、あたたかな日差しの中、むにゃむにゃと眠っている。
わたしも眠くなって、室内の展示場へと階段を降りた。
ベンチに座って眺めているとプールの底に、光の網がゆらゆらと絶え間なく揺れている。綺麗だと思って、水の動画をとりはじめた。すると、奥の方から昼寝をしていたバクがのっそりと立ち上がり、こちらにやってきた。一枚の絵のような時間だった。
そのバクは室内にいたもう一頭の子供のバクに寄り添うと、大きなあくびを何度か繰り返し、また眠そうにしていた。
バクは、夜行性なのだろうか。だから夜にそっと動物園を抜け出して、私たちの夢をもぐもぐと食べてくれるのかもしれない。
今日はたっぷり日差しを浴びたからか、もうとっても眠い。もし悪夢を見ても、きっと近所のバクが食べてくれるから大丈夫、そんなことを思って眠ることにしよう。
あたたかくして、ゆっくりおやすみ。
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