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クリティカルシンキングについて考える

今回は安宅和人著『イシューからはじめよ』の要約と考察をしたいと思います。
世の中にクリティカルシンキングにカテゴライズされている本は数あれど、この本には一切そのワードが入っていないのが非常に面白い。それもそのはずで著者はクリティカルシンキングとはなんぞやという事を論じることを目的としておらず、知的生産性を上げるためにはどうすれば良いかという事を論じています。そして結果的にクリティカルシンキングを学ぶための名著になっていた一冊だと思います。
それでは本書で述べられていることを見ていきましょう。

イシューとはなんぞや

まず本書のタイトルでも出てきている『イシュー』。
これが分からないことには本書を読み進めることすらできません。ここでは『いま本当に答えを出すべき問題』としています。そして良いイシューの3条件といった感じでどうやって良いイシューを見極めるのかを論じています。ただ、私が思うにこれは会社組織でいうところのDirector(部長)以上にこそ刺さる考えなのではないかと思いました。ManagerやReader以下であればDirectorが示した方針に則って業務を遂行することが求められるため、本書でいう良いイシューを見極めることは少ないのではないかと。私もいわゆるManager/Readerクラスなので実際の経験と照らし合わせることが難しかったです。それでも有意義だと思った点が2つありました。1つ目はそのイシュー見極めのプロセスを仮想的に経験できる点です。Directorが行った見極めのプロセスを追体験することで、実例をもって自身の糧にできるというのはDirectorになったときに有益な経験となっています。2つ目は『いま取り組むべきではない仕事』を選別できる点です。これにより優先順位がより明確になるので、シングルタスク化して一気に仕事を進めることが可能になります。
ちなみに本書は240ページ程なのですが、イシューの見極めまでで100ページ程を使っています。この工程がどれほど大事なのかがよくわかります。

仮説を立てる

答えを出すべきイシューが明確になったら次は答えを出すためのアプローチ、すなわちストーリーライン作りになります。本書ではこの取り組みを『イシュー分析』と呼んでいます。この章ではMECEや3Cといったフレームワークを使いながら仮説を立ててイシューをサブイシューに分解していって、それを事業コンセプトなどのストーリーラインに仕上げていっています。ここは例も手法もかなり実践的。また、ストーリーライン作りのための二つの『型』も紹介しています。一つ目は『WHYの並べ立て』で二つ目は『空・雨・傘』と紹介しています。この辺はロジカルシンキングでいうところのピラミッド思考の派生といったところだと思う。
ここでは最後にチャートの使い方も紹介しています。プライベートジェットで飛び回っているような超多忙なエグゼクティブじゃなかったとしても、シンプルで分かりやすい資料というのはプレゼンするうえで必須。なので軸の取り方や多様な表現方法を知っていると便利だよという感じ。

アウトプットする

ここからようやく分析つまり実データを扱うフェーズに入る。長かった、正直ここまで来るのは個人的にかなり難解だった。そして私が今までビジネスの場で経験してきたことが下流のそれも一部だったことがよく分かった。
さて、ここまででイシューが決まり、仮説を立てながらストーリーラインが出来ている。ここからはデータを集めて分析し仮説を検証する手法を解説している。ただ、内容はあまり厚くない。この領域はネットや他のビジネス書で詳しく解説されているので薄くても良いのかもしれない。いくつか示唆に富むフレーズがある程度。

伝える

最後にどの様に伝えるかが述べられています。
『本質的』『シンプル』を実現するための手法が述べられています。ここでもいくつかのテクニックが紹介されていますが、プレゼンに特化したビジネス書の方が得るものは多いと思いました。

感想

後半が駆け足になっているのは事実ですが、それだけ『イシューの見極め』が重要であるという意味だと思いました。そして実践できているビジネスマンをあまり見たことがないと。
私も残業というインセンティブを貰いながら与えられたタスクをダラダラこなしていれば良いという立場ではないので、バリューを出すことを本気で意識したいと思う。

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