ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第33わ「この門をくぐる者は」
(承前)
何のことは無い。「聖域」というのは、家から徒歩圏内にある近所の教会のことであった。相棒は泣きそうになりながら俺の後ろを歩いている。そんなに怖いなら家で待っていればいいものを。
「パートナーのニンゲンを一人で出歩かせた挙句に死なせるようでは同胞の笑い者です」
吸血鬼の貴族にとって、名誉は命よりも重いものらしい。それならば好きにするがいい。不思議なものだと思う。───死地に向かって歩く家畜に付き合う捕食者というのは。いよいよ教会の前に辿り着いてしまった。見慣れた門扉は威圧感を放っている。勇気を出して手を掛ける。少しも動かない。施錠されている感じではない。単純にビクともしないのだ。相棒が軽く押すだけで何の抵抗も感じさせないまま、教会への道が開かれた。
「ニンゲンとハントマンが同時に触らなければ開かないように作られています」
そうなのか。それならば尚更、相棒が俺に付き合って死地に赴いた理由が分からないが。
(続く)
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