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ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第148わ「雪花石膏のゲーム」

(承前)

吸血女の六本腕は、俺が思うよりも早く静かで、そして正確だった。盤上に駒が正しく並べられるまでの所要時間は一秒にも満たなかったからだ。

「何です、じっと見つめて。今更、私の腕が増えたぐらいで驚くことは無いでしょう?」

率直に言って驚いた。敵対者を縊る、抉る、引き千切るだけの腕だとばかり思っていたが、それに関しては俺の早計だったと認めるしかない。その高みに至るまで、何れ程の研鑽を積み重ね、何れ程の死線を掻い潜り、あるいは、何れ程の量の血を啜ったのか。

「ささ、言い出しっぺのダンナに白番か黒番か、選ばせてあげますよ」

先んずれば人を制す。少しも迷わず、俺は白番(つまり先攻。囲碁とは反対)を選ぶと告げる。盤面を見るため棺桶から上半身を起こそうとしたが、しかしそれは果たせなかった。冷たい腕に押し戻されたのだ。

「駄目です、棺から出ると回復効果が得られませんよ!即ち、上半身がはみ出れば下半身しか回復しません!」

(続く)

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