ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第53わ「夜に我が名を呼ぶならば」
青天の霹靂であった。❝ゲーム❞が終われば❝次のゲーム❞が始まる。相棒の言を信じるならば、ハントマンどもは大昔から、この世界を陰から支配して人類を家畜として飼い慣らしていたという。そして途方もなく長い寿命を持て余した彼らは食事と娯楽を両立させた❝ゲーム❞に明け暮れるようになった……というのは既に聞き及んではいた。こんな戦いが、いつから続いているのだろう?そして、いつまで続くのだろう?
「ええと、すみません。まだ❝ゲーム❞は本選が始まってすらいませんからね。こんなことを聞くのは、少し気が早かったかな……なんて……」
俺の望みは、全ての吸血鬼の死だ。人類が本当の意味で自由になることだ。
「ダンナ、気持ちは分かりますけど。願いを聞いてくれるのもハントマン同盟の幹部なんですからね。その……我々の利害が衝突しない範囲での願い事にしてくださらないと」
……。
「あの、本当に何か他に無いですか?私たちの手にかかれば、欲しいものは何でも手に入りますし誰とでも友達になれるのですよ?」
……。
「えー、上へ参ります!もうすぐ屋上です!ハイ!到着しましたよ!よく頑張りましたね!」
相棒の腰にぶら下がったまま県庁の屋上へとたどり着く。ここまで登れば人間狩りも追っては来れないだろう。そう高をくくっていた我々を待ち構えていた先客が居た。待ち構えていた、というのは語弊があるかもしれない。先方も我々の訪問は予想外だったらしく、目を白黒させている。
「何者だ、お前ら……?」
白い肌。長い耳、そして犬歯。長身瘦躯の中性的な……恐らくは男性。そして一際、目を引くのが中世の騎士めいた甲冑だ。堅気の人間ではあるまい。
「私はハントマン!こちらのダンナはニンゲン!そういう貴方こそ何者なんですか!?」「俺もハントマンだ。お前、既に予選を突破しているようじゃないか。こんな時間に出歩いて、どういうつもりだ?念入りに潰したいルーキーでも居るのか?」
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