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ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第19わ「別離」

承前

言葉では止められない。止まるような吸血鬼ではない。
ではどうする?正真正銘、本当の怪物を前に俺に何が出来る?
そうだ、俺には銀の弾丸がある。
そうと決まれば善は急げ。俺の銀玉鉄砲が───、これ見よがしに相棒のベルトに差し込まれている。いつの間に?考えるまでもない。
……片腕で全身を同時にまさぐられた時だろう。

「ぷはっ。どうかしましたか?何か探し物ですか?」

そういうことになる。
俺の銃が見当たらなくて。
血を吸うのは一旦やめにして、探すのを手伝ってくれないか。

「嫌です」

……分かったよ。自分で探す。
多分その辺りに落ちていると思う。
お前さんの楽しみを邪魔する気は無いから、この手を離してくれないか。

「……はぁ」

相棒は溜息と共に佐々木の体を地面に叩きつけると、アンダースローで銀玉鉄砲を俺に投げてよこしてくれた。頼む、まだ生きていてくれよ。

「まぁ、いいでしょう。私は色々な意味で、お腹一杯になりましたから」

相棒が言い終わるや否や、凄まじい冷気が背筋を伝う。周囲の暗闇に、赤い光が点々と灯る。何だ?まだ何か敵が潜んでいるのか?

「彼らは敵ではありません。❝ゲーム❞の後始末を担う清掃員の皆さんです。私はお腹一杯になりましたので、後は彼らに任せることにして今日のゲームは終了です」

気が付けばマンハントどもに包囲されている。相棒に手を牽かれて立ち上がると、マンハントどもは軽く頭を下げて、相棒に道を開けるように動き出した。そして倒れる佐々木に群がり始めていた。何だ、こいつら。敵じゃないのか。早く相棒に襲い掛かってサクッと返り討ちに遭ってくれよ。

「我々ハントマンはニンゲンの肉は食べません。美味しくないからです。それでもマンハントにとっては貴重な食糧です。そして人肉を食べるのは彼らがハントマンに返り咲く為には必要な行為なのです。ニンゲンを食べて、自分の見た目を少しでもニンゲンに近付ける為にね。涙ぐましい努力でしょう?」

続く

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