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ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第51わ「真打覚醒」

(承前)

見渡す限りの人間狩りの群れ。死の覚悟など、とっくに出来ている……はずであった。だが、怪物から逃れて他の怪物に血を吸われて死ぬとなれば。どうあっても人類の敵を利することになるのなら。いつ死んだって同じことだ。ならば、いつ死んだって馬鹿馬鹿しいということになる。

「え?ダンナ……?」

相棒の体に必死でしがみつく。ここから逃げよう。生きて明日を迎えよう。今後のことを時間をかけて話し合おう。

「すみません、蚊でも鳴いてるんですかね?よく聞こえませんでした

俺と!お前で!一緒に逃げるぞ!

「もー!仕方ないダンナですなー!私がいないとダメなんですなー!」

臍を嚙む思いに耐え忍ぶ。元々は俺がくだらない意地を張ったせいで相棒にペナルティとやらを背負わせてしまった負い目もある。なので今夜だけは自由に言いたいことを言わせてやる。こんな嬉しそうな顔の相棒は見たことが無い。胸と右肩から生えた杭の痛みも忘れているのだろうか。

(続く)

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