ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第78わ「名前とは命」
語るべきことは語り終えた。秘密の作戦会議は終わりだ。四肢の力を振り絞って棺の蓋を開けようとするが、それは相棒の腕によって妨げられた。
「まだ用は済んでいません。ここからが本題です。私、名前を貰っていません。ダンナの名前も」
言われてみれば、その通りだ。俺も相棒も、これから二人三脚で長い戦いに身を投じることになるというのに自己紹介を済ませていなかったのを失念していた。俺の名前は……。
「いえ、ご両親からいただいた名前ならとっくに存じておりますとも。それともアレですか?ダンナは家庭用ゲームを本名プレイする方でしたかな?仮にそうだとしても❝ゲーム❞で相手に名前を聞かれるのは色々と都合が悪うございますよ。ご家族やご友人に累が及ぶやもしれません」
家族に累が及ぶ?俺の両親を排除しておいて何を今更、と反射的に言いかけるが思いとどまった。家を離れて全寮制の学校へ通う、我が愛しき妹の顔が脳裏を横切ったからである。
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