ハントマン・ヴァーサス・マンハント(邦題:吸血貴族どものゲーム)第137わ「回帰」

(承前)

しょんぼりしながら吸血女は粛々と俺の外套を剥がし始めた。この時点で既に体の節々がシクシクと痛みが走っている。問題はここからだ。

「本当にいいんですか?急いで移動するので相当に揺れると思いますけど。死ぬほど痛いのに死にたくなっても死ねないんですよ?きっと後悔すると思いますよ。途中で止まったり出来ませんからね?」

会話には応じない。待ち受ける苦痛も恐ろしいが、未来の後悔よりも今の決意が鈍ってしまうことの方が怖かった。

「では、こうしましょう。耐えられなくなったら棺をノックしてくださいな。ダンナがノックしたら、その瞬間に取り引きは成立ということに。問答無用でダンナの血液を四百ミリリットルほどいただきます。代わりに❝魔王の翼❞でダンナを包んで差し上げますし、念入りに麻酔も流し込ませていただきます」

吸血女の言葉を聞き流す。俺が案ずるのは、愛しき我が妹のことだった。会いたい。会って確かめたいことがあるのだ。

(続く)

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