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人形狩り人形と魔窟の主(#14)

承前

「そろそろ本当に燃料が尽きるぞ、ヴォルフガング!」

日付と謎のアルファベットが記されただけのファイルは無視して───可能ならば全て持ち帰りたいところだが───異彩を放つ背表紙のファイルを二つだけ選んで撤退することにした。ラベルには「修羅界への経路」「甲冑生育日記」と記されている。

「そこから離れろ!ヴォルフガング!」

相棒の声に従い、受け身も何も気にせず全力で横っ飛びする。❝死の影❞の両腕が僕の背中を一瞬、掠めたように思った。焼けるような冷気。瞼の裏の❝青い炎❞が激しく燃え上がる。まるで怯える小型犬が吠えたてるように。それに反応するように死神の表情が敵意に歪む。それも一瞬のこと。無表情に戻ると、こちらに向き直って距離を詰めようとする。こっちは尻餅をついたままで、足止めに使っていた聖なる火炎放射器も燃料切れだ。次の手は?次の手は?次の……!?逡巡する僕と死神の間を一陣の風と共に何かが通り抜けた。

続く

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