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プロト版ハントマン・ヴァーサス・マンハント【血戰!帝都の吸血鬼伝説】(#3)

(承前)

コップの水を一息に飲み干し、高遠少年は勇気を振り絞る。「❝再来者❞のことをケンゾクと言っていましたよね?一体どういうことなんです?」「部外者には教えられないな」吸血女は紅茶を一口すすると、少年の視線に気分を害したのか、慌てて言葉を付け足した。「ふざけているつもりは無いよ。いいか?聞いてしまえば君は通りすがりの少年Aではいられなくなる」「それなら結構です」帽子を被って立ち上がる。「さよなら。僕はもう行きます。『危ないところを助けていただいてありがとうございました』なんて言いませんからね」それだけ告げて出口に向かって歩き出す。……シャッターが閉められている。喫茶店のマスターが滑り込むようにして高遠少年の目の前に立ちはだかった。「あの、帰ります」「……」マスターは身振り手振りで『席に戻れ』と伝えようとしている。まるで口が利けなくなったみたいだと思った。或いは、口の中に何かを隠しているかのような。

(続く)

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