プロト版ハントマン・ヴァーサス・マンハント【血戰!帝都の吸血鬼伝説】(#4)
マスターの様子がおかしい。頑なに口を閉ざしたまま、出入口の前に立ち塞がって動こうとしない。「まぁまぁ。君の為にコーヒーとサンドイッチを注文したんだ。口を付けないで店を出るというのも悪いだろう」吸血女の暢気な声。頷いて同意するマスター。腹立たしい気持ちもあるが実際その通りかもしれない。少なくとも昨日から何も食べていないのだ。温かい屋内に入ったことで緊張の糸が緩んだのだろう、日頃の疲れが一気に噴出したようにも思える。そうか、腹が減るから腹が立つのだ。「注文の品が届いたら落ち着いて、ゆっくり話し合おうじゃないか。君の血の価格交渉に入りたい」「僕の答えは変わりませんよ」「まぁまぁ」……ほどなくするとコーヒーが届いた。ミルクと砂糖をふんだんに入れてかき回す。元より、豆の良し悪しなど知らない高遠少年であったが、久方ぶりのカフェインと糖分は脳が痺れるほど美味しく感じられた。その次にやって来たのは空腹感。
(続く)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?