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人形狩り人形の長い夜

平成は遠くになりにけり。そして怪奇と暴力の時代が訪れた。

人々の断絶は深まり、隣人さえ信じられなくなった人々は、人形に愛を注ぐようになっていた。

生涯未婚率は右肩上がり、少子化はとどまるところを知らず、輪廻転生の理(ことわり)は遂に破綻した。魂の数(需要)に対して新生児の数(供給)が圧倒的に足りなくなったのだから無理もない。魂は現世を彷徨い、ポルターガイスト現象を起こしたり、電子機器を故障させたり、世間に溢れる人形に乗り移るようになったのだ。

「ここまでは理解できたかね?」
「ARRRGH!」
「理解できたのかね!?」
「ARRRRRRRRGH!」

夜な夜な暴れる近所迷惑な「呪いの市松人形」を締め上げながら私は質問を繰り返す。あくまで紳士的にね。

メキッ。

ターゲットを紳士的に破壊せしめた。呪われた魂が雲散霧消するのを感知する。次こそは人間に生まれ変わりたまえよ。

私の名前は「トルコ人」。
19世紀から人形狩りを続けるチェス・オートマトンだ。

(続く)

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