[読書の記録] 水野敬也『スパルタ婚活塾』(2014-08-06読了)
水野敬也氏の著作群は現代の恋愛理論を語るうえで欠かせないだけでなく、対人コミュニケーション全般に敷衍可能な射程と強度を持つ。
中でも、ウケる技術、美女と野獣の野獣になる方法 は、単なる(男向け)モテテク指南に留まらず、人とうまく会話し、円滑な人間関係を築くために使える心がけが詰まった素晴らしい教科書だ。
何より読み物としておもろいので未読の方は是非読んでいただきたい。
そんな水野敬也氏がついに女性向けモテテク教科書を執筆された。
『スパルタ婚活塾』(2014)
うーむ・・・やはり笑える。おもろいなぁ水野さん
見出しや文章がおもろいのは当然として、ページの切れ目でオチをうまく引っ張ったりといったレイアウトの工夫も相変わらず素晴らしいクオリティ。
全編水野節炸裂で、ネタ的な部分もありつつ(いや、かなり比率としては高いか)、珍しく男目線から書かれた女性向け恋愛本ということで、婚活女子にとってはかなり実用的と言えるのではないか。
女性が意中の男に好かれるためのありとあらゆる小手先テクニックを構造化し、まとめあげた著者のインテリジェンスに乾杯だ。
「コミュニケーションはサービスである!」と徹底してとらえ、
↓
意中の人のニーズを踏まえたうえで、
↓
予定調和を崩していくことにより、
↓
相手に楽しんでもらう
以上のことを基本哲学としているのは男向けの水野流恋愛術と同じ。
ツッコミマスターとなれ!
という部分も、ウケる技術と共通している。
自分の役割を理解し、コールアンドレスポンスを意識していくことは会話術全般においてすごく大切だと思う。
また、
「執着分散理論」→「仮氏理論」
「逆に理論」→「ライフ・イズ・ビューティフル理論」
といった、美女と~ で語られていた男向けモテテクの変奏も散見される。
つまり出会いから交際、結婚に至るまでのプロセスに必要とされるコミュニケーションの基本は、男女でそんなに変わらんということだろう。
ただし、男女の決定的な違いとして、女は「待ち」が基本で、男性から声をかけられるのもデートに誘われるのも交際を申し込まれるのも、すべて受身で実施していかなければならないことの難しさは繰り返されている。
自分から行くと、価値を下げることになってしまうからだ。
この本でも一部で自分から能動的に行くストロングスタイルも紹介されているものの、全体的には声をかけられる確率、デートに誘われる確率、交際を申し込まれる確率、プロポーズされる確率をあげるテクニックの紹介が大半だ。
タイトルにも含まれている「婚活」というワードは、社会学者の山田昌弘氏がAERAで使ったのが最初らしいが(参考:「「婚活」の時代」(山田昌弘・白河桃子、2008))、その後各種マスコミのあおりを受けて、最近ではこのワードが用いられる際、男性を経済的指標に還元して商品化し、「肉食系」「狩猟系」の結婚活動を行う女性たちが常にクローズアップされるようになっているように思う。
マスコミにより変形させられた婚活イメージが人口に膾炙した結果、女性全般に対する恐怖を抱いて、女性に積極的にアプローチできなくなっている男性もいるのではないか。
本書でも、婚活ブームから派生した専業主婦礼賛イデオロギーや、男性総人口の数パーセントに過ぎない玉の輿に乗ることの理想化を否定していないし、むしろそちらを目指せ!貪欲に!妥協せずに!と書かれている。(笑)
しかし、基本的には女性側からハンティングすることに対しては否定的なトーンで、前のめらず、男が追いかけてくるのを待て、というのが大原則である。
これを踏まえると、やはり女性はアプローチを待っている!ということで、男性にも勇気を与えてくれる本なのではないか。
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