自分は大丈夫だと思っている人ほど危ない正常性バイアスという心理
「知ってたらなんで言わないの?いつもそうじゃん」
家族でご飯を食べるために目当ての店Aに行った時,夫に言われた。
この現場状況を詳しく説明しよう。
この日,わたしたちはとあるお店Bを目指していた。
ここはいつもわたしたちロイヤーファミリー御用達の回転寿司屋。
回転寿司だが板前さんがいて,お寿司が回転しないで運ばれてくる。
回転レーンを回るお寿司はお飾りなのか,気まぐれに取る客を想定しているのか,いつも謎。
Bの第一駐車場が満杯だったので10m先の第二駐車場に駐車し,店に入ったらすでに待ちが30組以上。
無理だ。これはどう考えても1時間は待つパターン。
なので,夫の発案で別の回転寿司屋Aに初めて行くことにした。
夫が目指していたAには駐車場がないものだと思い込んでいた夫は,別の店Cの駐車場に車を止めて,少し歩いて,店Aに行った。
そして,Aの入り口には,デカデカと立派な駐車場が光っていて,店に駐車場があったことに,夫はようやく気づいた。
遅っ!100万年遅いわ!
あんたは、始め人間ギャートルズか?
このように夫とわたしの情報収集スピードは,原始人と未来人のように全く噛み合わない。
今は光速時代で,脳みそ使うんじゃよ!
と,心理学者として思うが,お互いの思考スタイルが違うので,個人差をとやかく言っても仕方ない。
だけど,わたしも黙っていればいいのに,原始人がマンモスを捕らえるかのように,グサリといらない一言を言う。
「そうだよ!ここ駐車場あるんだよ」
と,教えて差し上げたら,冒頭のセリフが返ってきたというワケ。
火に油を注いで,いらない家族間闘争ゲームが始まる。
だが,夫の方が上手なので,そこで終わってしまう。
いや,待て。
そこ,改善策に繋げたいポイントだ。
わたしは,なんでわざわざお店に駐車場があるのに,別の店に料金を払ってまで,止めるのか謎だった。
でも,イソイソとなんか思い込んで張り切っているので,この人の思考の流れをぶった切っても悪いしなぁ,と放置することにしたのだ。
夫にしてみれば,なんで駐車場があることを教えてくれないのか!と,毎度ご立腹だ。
いやいや,いつもそうなのは,あなただよ。
「あのお店,駐車場あったけ?」
イエスかノーか,答えは2択の閉じられた質問形式を投げてくれたら,すぐに,答えられるのに,なんで,わざわざ,わたしがあなたの頭の中の文脈を読んで,質問をして差し上げねばならいのだ。
思い込んでアクセル全開で,その思考列車を走らせている人には,周囲の意見なんて,耳に入らないからブレーキにもならない。
「あの店に駐車場があるか,わたしに聞いてくれたらいいんだよ。わたしが文脈を読んで,聞いてくれるなんて,考えない方がいいよ。わたし,わかんないもん」
相手の思考スタイルを考慮した上で,お膳立てしたコミュニケーション。
空気を読め,忖度。
都度,話題になる日本語は,いつも発された言葉の裏を「読む」,発されない「言葉」の使い方。
めんどくさい非言語コミュニケーションは,非常に高度だ。
だから読み違えも多発する。
それをなじられてもわかんないものはわかんない。
コミュニケーションは言葉の情報だけでなく,五感をフル稼働させてする。
そして,なんとかそれを共通の言葉にしてゆく過程が楽しくもあり,めんどくさくもあり,脳にはとてもコストのかかる作業だ。
だから,脳はサインを読み間違える。
これって,お互いの脳がバグっている証拠だ。
脳のバグとは,心理学の専門用語では,認知のゆがみ,思い込みで,バイアスとも言う。
社会心理学や認知心理学の分野の用語で,1つだけではなくたくさんのバイアスが報告されている。
例えばこの状況だったら
夫にしてみれば
思い込み1:店には駐車場がないだろう(どこかの店と間違えているだろうし,古い情報のまま)
思い込み2:相手が間違いを修正してくれるだろう(認知的不協和)
思い込み3:俺が間違えるワケがない
(能力が低い人ほど自分の能力を過大評価する:クルーガー効果)
わたしにしてみれば
思い込み1:よその店に車を止めたいほど行きたい店なのだろう(子どもの通う保育園の通園路なのに,どうして駐車場を見ていないのだろう)
思い込み2:歩いてまで行きたいのだろうからそっとしておこう(決めつけ)
思い込み3:駐車場があることを知ってるけどね(後付けバイアス)
人は相当にゆがんだ思い込みで,自分の人生を正当化しようとするし,自分の判断を過大評価して,見誤るのだ!
おいおい,ソレ,思い込みでんがな!
そんな双方の思い込みで,結果として,1時間2400円という無駄なお金を使う羽目になった(お店だったら無料なのに)。
ああ,脳のバグって,時間とお金を浪費するなぁ。
そうそう,恐ろしいことに,能力の低い人ほど,自分を過大評価し,能力の高い人ほど,メタ認知(自分を俯瞰すること)ができているので,過小評価しやすい傾向がある。
ああ,自己肥大って恐ろしい。
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