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母業務には休みなんてないからうつになるんだよ

4連休である。

なんて知ったかぶってみたけれど,日中に出かけた携帯ショップのお姉さんに言われるまで,気づかなかった。

子どもが「4連休だよ。くもんお休みだよ。塾もお休みだよ。ママはいるの?」

そうか,そうか。わたしの所在を確認してきたのは,彼も知っていたというわけか。知らぬは母だけだ。

連休は,母になって,一番,嫌いなものの筆頭番付である。

だって,いくら祝日でも,主婦業務は休みではない。主夫もそうだろうけど,圧倒的に家庭を統括するマネージャーは女性だ。そこに,母業務も入ってくるのだから,ぶっ倒れそうになる。

先程から,業務,業務と連呼しているが,主婦業も母親業も立派な「職業」だと思う。いや,「主婦」は,職業選択欄にあるから,わたしの思い込みではない。

だけど,「母親業」という職業選択欄は,見たことがない。母親業だって,立派な職業だ。「保育士」は職業なのに,家庭保育を行う人が職業ではないなんて,理不尽だ。

そんなことをつらつら考えていたのは,ステイホームの3か月だった。

だって,保育園にあずけられるのは,医療職や不要不急以外の職業に限られる「特別保育」の対象の職業を持つ人だけだったから。リモートワークは,これに入らないという理不尽を痛感させられた人も多いだろう。

はぁ?未就学児を家で見ながら,仕事しろだと?

できるわけねーだろっ!おめー,自分でやってみやがれ!

言葉が荒くなるが,大事な電話を受けたり,大事な書面を書いているのに,パソコンに覆いかぶさってきたり,テレビ会議している画面に割り込んできたり,あの手この手で,ぐいぐいと彼らは侵入してくる。

いや,侵入しているなんて,思っていない。だって,彼らの生活圏に仕事を持ち込んでいるのは親の都合だからだ。

そりゃ,家に,普段いない親がいたら,遊んでくれるものだと思うよ。

さらに,子どもが1人だけでなく,きょうだいがいたら,それぞれの相手をしなくちゃいけないし,食事も作らないといけないし,勉強もみなくてはいけない。

たくさんの役割を親は担うし,そこに主婦業務が入ってきて,さらに通常の仕事をしなくてはいけないのだから,母親はパンクする。

事実,仕事にならなくて,わたしは母親業をとり,仕事はしなかった。無理だ。

「子どもとじっくり向き合えた3か月」と言う人もいるから,それは素晴らしい経験だと思うけど,少なくとも,そんな人わたしのまわりにはいなかった。

母親業務だけに専念できるのは,子どもを産んで床上げまでの1か月か,赤ちゃんの首が座るまでの3か月くらいで,精神分析の用語では「生理的没頭」と呼ぶ。

子どもの世話以外に注力しなくなるから,それはもう,生まれつきだよ!っていう訳だ。

生理的没頭の3か月は,赤ちゃんとの蜜月なのだけど,夜中の頻回授乳(1時半おきに起きて授乳),言葉の通じないイキモノを育てる責任の重圧で,蜜月どころじゃないのも事実。

甘いの反対は辛い,甘くも辛い3か月なのだ。

だから,つい先日の某女性の(女性の夫が書いているという説もある)「産後うつは甘えですから怒鳴りつけて躾けてやりましょう」Twitter炎上の件には,非常に憤りを覚える。

産後うつは,甘えではなく疾患なのだから。

(参照:日本産婦人科医会ホームページ)

このサイトを読むと出てくるように,EPDS(エジンバラ産後うつ病質問票)をこの分野スタッフ間では,「エジンバラ」と言って,必ずチェックする。

わたしも産後の助産師さんの家庭訪問(「新生児訪問」と言います)では,このエジンバラを書いて提出したもの。

この産前産後の時期(「周産期」と言います)は,母子保健にとって大事な時期。

だから,でたらめな発言にとても憤りを通り越して,呆れてしまう。

国を挙げての母子保健事業なのにね……。だから,落選したんだろうな……。お母さんを敵に回したね。

お母さんは,うつになるくらい命かけて子どもを産んで育ててているんだよ!お母さんは,連休でも休みなく,母親業務をしているんだよ!このバカチンが!

金八先生に変わって,説教してやりたいわ。






論文や所見書き、心理面接にまみれているカシ丸の言葉の力で、読んだ人をほっとエンパワメントできたら嬉しく思います。