花組「元禄バロックロック」感想
こんにちは carolです。
今更…とは思いますが、改めて花組東京劇場公演千秋楽おめでとうございました。幸いにも年明けすぐに1度東京公演を観に行くことができ、ムラ、東宝の千秋楽は配信にて見届けることが出来ました。この作品は絶対に語りたいと思っていたので、今更ながらネタバレも交えつつ、感想を書きたいと思います。
この作品への熱い思い
最初の印象(ちょっとネガティブ)
私の母が柚香光さんのファンで、もう今彼女に夢中なわけです。なので母が私より先に宝塚の方に観に行ってました。前評判は上々だったので母も興奮して帰ってくると思いきや、母の反応はなんとも微妙で、あれ?と思ったのを覚えています。その時母が言っていたのが「時計の仕掛けや秘密があまり効果的に演出されていない」「話とキャラクターとみんなの演技のトーンがイマイチしっくり来ない」と言ったもので、随分と辛口だなぁと思っていました。
ただそのあと宝塚大劇場千秋楽を楽天TVの配信で観た時母が言いたいことがわかった気がしました。話自体は面白いし、よく出来てるし、ハッピーエンドなんだけど、なんかしっくり来ない。個人的にその1番の理由はキラ@まどかちゃんだったかな?彼女って本当に可愛らしい見た目しているのだけれど、声が強いというか、若干少年漫画のヒロインチックであと少しセリフが一本調子になる嫌いがあるなぁとはずっと思っていたんです。(まどかちゃん好きですよ!)柚香さんの前任の相手役さんである華優希ちゃんが少女漫画のヒロインチックだったからその落差に驚いたのと、あと多分私柚香光、華優希コンビが結構好きだったんですよね。あの2人は本当に芝居の相性が良かったというか、パーツがピタッとはまるような感覚があってそれが心地よかった。まぁそんなこと言ったって華ちゃんは辞めてしまったし、やっぱりまどかちゃんはポテンシャルの高い娘役さんだからこれからまた変わってくるかもな、とこれからに期待するような初見でした。
実際生で観たら
もんのすっっごい良かった‼︎‼︎
もうビックリでしたよ。なまじ初見で気分が下がっていた分盛り上がったというか、やっぱり生は違うというか。ちなみに母も同じ回を観ていて「すごく良くなってた」と評価を変えていました。評価が変わった理由はおそらくコメディパートのテンポが良くなったとか、クロノスケ@柚香の役作りがちょっと変わったとか、まどかちゃんの芝居に緩急がついたとか色々あるのだけれど、1番はやっぱり「花火キラキラ」のデュエットでしょう。
正直初見でも曲調にやられて結構グッときていたデュエットだったのですが、生で、というより私が客席に座っていたあの日のあの場面はすごかった。そもそもまず舞台全体が美しい。花火の照明が本当に煌びやかで、その下にいるエドの人たちが本当に思い思いに過ごしている。そんな中やっとの思いで願いを叶えたキラと、そんな彼女を不思議に思いながら決して放っておけないクロノスケが歌いながら銀橋を渡る。その絵の美しさ。煌びやかで、少し切なくて、大事に仕舞っておきたくなる瞬間。もう自分でも驚くくらい泣いた。
特筆すべきは2人の歌唱。私は柚香光さん好きだけど、彼女はお世辞にも歌が得意なタイプではない。まどかちゃんは歌えるけれど、声が強くてデュエットよりソロの方が映えるタイプ。だからデュエットには期待していなかったのに、信じられないほど素晴らしかった。2人の声質も呼吸も表現したいものもぴったり合って、宝塚で聞いたデュエットの中でも上位に来るのではという素晴らしいデュエット。あれを聞いた時このコンビはとんでもないことになると確信した。先程述べた通り私は柚香光、華優希の寸分の狂いもなくピッタリとハマるコンビが好きだった。柚香光、星風まどかコンビはピッタリはハマらない。2人ともキャリアがあるし、そもそもの持ち味が多分違う。でもそのタイプの違う2人が手を取り合ったとき、とんでもない輝きが生まれる。これが俗に言う“化学反応”というやつかと思いつつ、あの時2人が放っていた光があまりにも美しくて、胸がいっぱいになった。そしてそこでガッツリ引き込まれた私はキラの時空を超えた恋に胸を突かれ、クロノスケとキラが幸せになるために、その為だけに進んでいくこの作品が大好きになった。
感想
まぁ1番言いたいことはもう書いてしまったような気もするのですが、もう少し内容についても触れたいので、もう少しお付き合いください。
物語について
そもそも私「忠臣蔵」ちゃんとは知らないのですよ。あとSFに苦手意識もあります。タイムリープものもあんまり…と言った感じです。それでもこの作品は面白かった。それは物語の肝がタイムリープになかったことが良かったのかなと思います。
初見で母が気になった通り、クロノスケの持っている「時を巻き戻す時計」の秘密(実はクロノスケが持っているものは不完全で、本当に時を巻き戻していたのはキラだった)は銀橋での会話であっさりとバレる。なのでSF的な面白みは少ないと思います。そもそもこの時計が結構なんでもありで、かなりのご都合アイテムなのでこの時計は谷先生の中で実はそんなに重要じゃないのかな?と思ったり。要は「時を巻き戻す」という現実世界では不可能で、だからこそ誰もが願ったことのあるであろうことが可能になった世界での出来事が描きたかったのだろうな。「時を巻き戻す」ということを誰もが望むけれど、実際その力を手に入れた時、果たして人は幸せになれるのだろうか。キラがクロノスケに話す「私の好きばかりが積み上がる」というセリフが結構印象的で「時を巻き戻す」というのは単に時間を巻き戻すということではなくて、そこであった出来事であったり、交わした想いだったりというものが相手の中ではリセットされてしまうのだと考えるとやっぱり辛いよなぁ…。
とにかく谷先生はその時を巻き戻すとこで生じる虚しさや切なさに焦点を当ててだからこそ「限りある、2度と戻らぬ今を大切にしようよ」というメッセージが活きるなぁと思った。そしてだからこれが「花組100周年記念公演」なのね、とも。
…いや、やっぱり周年記念公演といったら「名作」がくると思ったら、大分違うものが来て驚いたけれど、正直その驚き含めて嗜められたような気がする。
あと上手いなと思ったのは「忠義」の扱い方。いくら「江戸によく似たエドという地で起きた忠臣蔵によく似た事件」だと説明しても、ここまで有名な事件を下敷きにしているからにはそれなりにエッセンスであったり、リスペクトだったりはあってほしいから討ち入りは外せない。そこからどう大団円に持っていくかはやっぱり腕の見せ所だったのでは。「武士道」って上手く使わないと結構反感を抱きそうなジャンルだと思っているのだけれど、上手く折り合いつけたな、と。力技ではあったけれどまとまってたなぁ。
キャスト感想(敬称略)
トップコンビについてはさっき書きましたが改めて個人について少しずつ。
クロノスケ(柚香光)
まぁ格好いいよね。本当に何をさせても何を着せても「絵になる人」でこういうちょっとだらしのない、でも憎めない人物を演じさせたら天下一品だなぁ。彼女の持っている愛嬌と優しさと、何とも言えない切なさが本当に活きた、当たり役でしたね。あと女の子の尻に引かれてるのが似合う笑
個人的にはキラと初対面のシーンでの真面目くんな感じも好きだった。
華ちゃんとのときとはまた違う、全速力でキラキラと駆け抜けていくようなまどかちゃんとのコンビが大好き。次はどんな顔を見せてくれるのか楽しみにしています。
キラ(星風まどか)
上で色々書きましたがまどかちゃん好きなんですよ、本当に。だって可愛いもん。彼女も今回の役結構当て書きだったんじゃないかな、と思う部分が多いです。まどかちゃんって可愛いベビーフェイスだけど意外と芸風は強めで、そこが結構キャストバランス的にネックなのかな?と思うことが多いんですが、今回の役はそれが逆に活きたなぁ。愛らしくて、いじらしい、素晴らしいヒロインでした。
まどかちゃん本人的には大変なことがたくさんあった組替え&お披露目だったと思うのですが、良くも悪くも彼女はそれを表に出さないので、もうこちらとしては応援することしかできません。前述の通り、れいちゃんとのデュエット本当に素晴らしかった。あれが聴けただけで、この組替えには意味があったと私は感じました。「花組トップ娘役 星風まどか」のこれからが素敵なものになりますように。
コウズケノスケ(水美舞斗)
イケおじだったなぁ…。言わずと知れた吉良上野介ポジションな訳ですが、日本物の敵役!を楽しそうにやっていたのが印象的でした。あの高笑いがあるとやっぱり日本物感が増すよね。あとソロが難しそうな曲だった。あんなの歌えるのね。
個人的なツボは最後のクロノスケとの銀橋での立ち回りが終わった後、設計図を持って逃げるキラを追いかけて放つ、「渡しなさい!」(細か…)あの言い方が完全に親で「ああパパなのね」となる。あとはやっぱり登場シーンよね。可愛い娘役に膝枕されながらせり上がるというザ・悪役みたいな登場シーンがバッチリはまってしまうのが彼女の魅力だなぁ。
クラノスケ(永久輝せあ)
言わずと知れた大石内蔵助ポジ。とりあえず谷先生はどうしてもひとこちゃんを恐妻家にしたいらしい。配信を含めて3回観たことになるのですが、どんどん印象が変わっていった役です。宝塚のときは若々しくて「復讐心に狂っている」というよりは若さゆえの生き急ぎ感がある印象だったんですよ。それが東京に来てからクラノスケの中の狂気の部分がはっきり見えるようになってきたかな。そして東京千秋楽はその狂気も静かというか、老成されている感じがして、1番「ご家老」感があったな。
タクミノカミ(聖乃あすか)
美しい…!幽霊でありストーリーテラーであるという点では槇村@シティハンター(綾凰華)と一緒なわけですが、どこかすっとぼけた印象のあった槇村と違ってタクミノカミはひたすら温かく、美しかった。「時を戻せる時計」の考案者であり、全ての発端となる人物であるからこその悔いが胸を打ちました。キラとクロノスケの過去を語る場面がすごく良かった。
ツナヨシ(音くり寿)
正しくMVP。もう上手い!すごい!しか言うことがないのですが、やっぱり1番好きなのは「ヨシヤァァス!!…争いごと?(ニコッ)」かな。この人なくしてこの作品はなかった。
まとめ
もう公演期間から時間がかなり経ってしまったためものすごくざっくりとした感想になってしまいましたが、とにかくこの作品楽しかった!生観劇の大切さ…劇場で同じ空間を共有しながら、その世界観にのめり込むことの素晴らしさを再認識させてくれる作品でした。
きっとこれから花火を見たらクロノスケとキラのことを思い出すのだろうな…
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