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【クウェート#41】走れば師も疲れよう

イベントが多く大変な1週間だった。師走どころの話ではない。
頑張っていればアンハッピーなこともあるが、得るものがあるはずだ。


12月4日(月)

この頃、授業の欠席者が多い。季節の変わり目で風邪をひいてしまうのだろうか。
「インシャーアッラー」を否定の副詞と思ってる人がいた。
私は思わず笑ってしまった。


今日は授業後に、各国の文化を紹介する「エキスポ」が開催された。
クウェート大学の「地理クラブ」が主催しているとのことだ。日本人学生もエキスポの開催を打診されていた。

授業後、イベントの告知をしたらクラスがほとんど全員来てくれた。うれしいことだ。

アフリカや中央アジア諸国の出展が多い。正直なところ、見たこともないような国旗が数多くあった。

なかなかの盛況。

私は4、50人に着付けサービスをした。




忙しかったので、昼食はカップ麺だった。

buldog チーズ味。韓国人からマイルドだと言われて買ったが、ありえない辛さだ。

クウェートでは韓国製カップ麺のシェアが急速に拡大している一方、インドネシアの「インドミー(Indomie)」が依然として定番である。

インドミーは小袋に入った即席麺で、麺が細くて短めなのが特徴だ。

私がラーミョン(韓国製麺はこのように言う)を食べているのを"シャイフ"が見ていた。

「カップ麺、食べます?」
「ありがとう、でもインドミーは好きではないのだ。」

シャイフは答えた。

「これ、インドミーじゃなくて韓国の麺です。美味しいですよ。」
「韓国のインドミーかい。」

即席麺を指してインドミーと呼んでいるようだ。

即席麺を指してラーメン(ないしはラーミョン)と呼ぶ日は、クウェートに来るのであろうか。


12月5日(火)

今日は学生の6割くらいしか出席していない。そのためか、恐ろしくゆっくりと授業を進めている。
例文をいちいち板書し、一人一人が音読する授業形式だ。

「神と君達の関係はどんなものか。」

今日の授業で最も面白い問いかけだった。


8日の忘年会で使う道具をお借りするため、大使館まで行くことになった。

大使館はクウェート中部のミシュレフ(Mishref)にある。寮のあるシュウェイフからはタクシーだと往復5000円かかる。その出費はあまりにも馬鹿馬鹿しいので、バスで行くことにした。

女子寮のあるケイファーンまでは学校の送迎バスで移動した。
ケイファーンはクウェート市(首都)やファルワーニーヤにもアクセスが良い。

学校のシャトルバス。私以外に誰もいない。バングラデシュ人の運転手にベンガル語で簡単な挨拶をすると喜んでくれた。

ケイファーンから少し外れた、バス停近くで下ろしてもらった。

小汚いバス停

ケイファーンからはKPTC(クウェート民間交通社)の105A系統を利用して移動する予定だった。
ところが、Kuwait city busの77と59系統しか来ない。その二つは馬鹿みたいにくるが、肝心の105Aはまったく来る気配がない。

時刻表によるとすでに4本来ているはずだ。

kptcのバス自体、ほとんど見かけない。このバス会社は信用ならない

12月の初旬とは思えないぎらぎらとした日差しが容赦なく体力を奪う。

このままでは約束の時間に遅刻してしまう。額を流れる汗は、恐らくは厚さだけが原因ではあるまい。
結局1時間近く待ち、最後にはタクシーを呼んだ。



ミシュレフは殆ど荒野のような場所にある。

ミシュレフの一角


荒野の中に、大使館がぽつぽつと点在する。(北朝鮮の大使館は日本大使館のご近所さんである。)

日本大使館は大使館群の中にあって、まさに要塞のような威容を誇る。
大使館周辺はフェンスに囲まれているので、唯一の入構ゲートの前にタクシーを止めてもらった。

無機質な白黒の直方体の建築の上に、日の丸がひらめいている。
1974年の「在クウェート日本大使館占拠事件」を機に、より厳重な防護を施されるようになったという。

10cm近くある鉄の扉を押し開けると、細い通路がある。
通路の左手にある受付に身分証と携帯を預けた後、セキュリティーチェックを受けることになる(当然大使館の写真は撮影禁止である)。

私が何よりも驚いたのは、外務省は無料配布パンフレットの残数まで記録をとっている、ということである。


荒野を40分ほどさまよい、バス停を発見した。
帰りは106系統バスで帰った。行きと違い、105も106もたくさんある。

バスは「労働者」の乗り物である。豊かなクウェート人は決してバスなど利用することは無い。

プラスチック製の硬い椅子に労働者たちがもたれかかる。バスは人々を自宅に、あるいは夜勤の職場に運ぶ。
人々は力なくスマホを見るばかりだ。

「バスの治安はよくないので、可能な限りタクシーを利用して下さい。」

留学当初、そのようにアナウンスされた。しかし、悪事を為せるほど体力がある搭乗者がいるようには思えなかった。

バス停わきの飲料水(無料)。おそらくワクフで運営されている。
バスには南アジア、東南アジア、北アフリカ系の人しかいない。

アフガニスタンのムハンマドは、「city busは学生証があれば無料で乗れるんだぜ」と言っていた。

最初のバスでその旨を聞いてみたが、代金を請求されてしまった。
2回目は何も言わずに学生証を見せたところ、タダで乗れた。

運転手により異なるのか、距離によるのか。要研究である。

150フィルスのセブンアップを飲みながら。
ムバラキーヤから11系統で帰宅。




帰宅してから、忘年会で使う小物を作った。

12月6日(水)  サ

出席者が大幅減少したため、2時間しか授業をしていない。

放課後は、「日本人会」の忘年会の準備をした。同会は、在クウェート日本人の互助会で、100人以上が所属している。
私たちは、忘年会で出し物をすることを打診されていた。

出し物として、「ミュージックステーション」の形式に則って歌真似や踊りを披露することにしていた。

今日は幕間で使う映像(私扮するタモリのフリや、cmなど)を作成した。
昨日作成した「クリアアサヒ」はcmで使う小物である。

学校裏の海岸でcmを撮った。

12月7日(木)

少しだけ授業に出た後、シャダディーヤに移動した。

10日にはシャダディーヤにて「エキスポ」が行われる。今日は会場設営日である。
エキスポ会場は、ちょっとした体育館程度の広さがある。

それにしても、1週間の中で2回も行う意味があるのだろうか。狙い撃ちのようにイベントが配置されているではないか。

シャダディーヤでは他の祭りのやっているようだが、あまりの疲れから参加できなかった。ブロガーとしてあるまじき失態だ。

夜は、寮の友人たちとプレミアリーグの試合を観ながら「鍋パ」した。

忘年会の準備で忙しいのだが、折角のお誘いを無碍にはできない。

韓国、ベトナム、オーストラリア、トルコ、スリランカ他多数の参加者
トッテナム対ウェストハム。学生寮ではサッカーが大人気だが、特にプレミアリーグの人気が頭抜けている。

12月8日(金)

忙しすぎる。寝坊して教会には行けなかった。朝8時半に起きるのは酷である。

冬休みの旅行計画を打ち合わせした後、明日の忘年会会場(ファルワーニーヤのクラウンプラザホテル)を下見した。

とても立派な会場だ。

クリスマスの飾りつけ
演台

打ち合わせに来ていた日本人会の方が、学生の出し物のクオリティーに感動して下さっていた。

ここ数日、碌に睡眠もとれずにいる。こういうリアクションを頂けるとやりがいを感じる。


帰宅してから、駐車場で出し物のリハーサルをした。

通りかかったトルコのフルカーンは面白がって動画を撮ってくれた。

「インシャーアッラー、exactly、お前にビデオ送るよ。」

フルカーンは言った。インシャーアッラーの確実性がないから、こういう言い方になるのだろうか。

「否定の副詞」だと思っていた学生のことを思い返す。付言すると、結局フルカーンが動画を送ることはなかった。


12月9日(土)

午後から忘年会。
とんでもないごちそうの数々だ。協賛のアラビカや無印良品の品物もいただいた。

学生の出し物は大変な好評を博した。ルームメイト”桜井”の「ミスチル桜井芸」は特に評判だった。

「来年も出し物してくださいね。」

こう言って頂けたのは本当にうれしい。今年(というよりこの一週間)の苦労を忘れられるような、楽しい会だった。

景品の「慶レストラン」特別お食事券。森野大使から頂いた。ありがとうございます。

12月10日(日)

朝早くからバスで移動。

シャダディーヤのエキスポの日。クラスの過半数はこのイベントに参加し、授業は欠席している。それにもかかわらず、授業は開講された。

日本ブースは大好評で、まったく休憩をとる暇がなかった。

書道やお茶に殺到する人々
台湾
ウクライナ
折り紙の展示。大谷翔平選手のドジャース移籍は、昨晩の大ニュース。韓国と台湾の学生も知っていた。

学生や教授、学外の人々など沢山の訪問者がいた。

「私はインドネシア大使なのよ」

などとのたまう女性がいた。ひょうきんな人だと思った。

「ハハハ、そうですとも。僕たちだってこんなに頑張ってエキスポしているんですから、観光大使みたいなものですよ。」

私は軽口で答えてしまったが、どうやら本当に大使だったらしい。

残念ながら日本大使館からのゲストはなかったが、各国大使館職員も参加しているようだった。

日本人学生の協力に対する感謝状


本来エキスポは二日連続で行われる予定だったが、急遽明日のエキスポは中止になった。
日本ではありえない話だ。
しかし疲れ切った私たちには、この上ない朗報だった。

ウエノのカツカレー
「ウエノ」という日本カレーレストランのオーナーが全面的に協力してくれた。クウェート観光の際は、是非お立ち寄りくださいね。

12月11日(月)

ここ数日、授業が2時間だけだ。

「なぜ遅刻するのか?」と問われた学生が「私はスペイン人だから。」と答えた一幕が今日のハイライトだ。

午後は、日本人学生でちょっとした打ち合わせをした。

長大な棒を窓から出しつつ走行する車


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